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25.先代王女

 木材の伐採が始まって一月が過ぎた。

 森林の剪定など木に登って行う作業はゴブリン達の仕事になった。この剪定した木も村の大切な資源となる。

 森の手前にある木のいくつかは村のために伐採していいことになった。しかし、村にある斧とかではとても切れない大きさだ。

 そこでノエルの出番になる。あまりに大きな木は抜けないが、ノエルの巨大な手を使い木を揺らしなが力を加えて根元から抜くという荒技を行うことにした。

 ノエルが成長しているのもあるが、これで何本か木の確保ができた。これをオーク達が村に運んで橋造りを行う。余った木材は家屋や道具の修理に使う。


 貴重な木材なのだが、俺のわがままを条件付きで聞いてもらった。

 村に公衆浴場を作ることにした。元の世界の大帝国にも公衆浴場はあったし、変なこともないだろう。

 しかし、浴場を理解できるのがノエルとジョルジュしかいなかったので村人に説明するのに苦労した。

 今まで通り水浴びだけでも足りるし、石鹸を支給してもらってるからそれで十分との声もあった。

 どうしても欲情が諦め切れずに俺は村人たちに条件を出して説得をした。

 今まで以上に魔法が必要な時は頼って欲しい、冬場の火やお湯の確保も協力する、浴場はノエルが使用している時以外は村の誰でも使えるようにすると言うことを伝えて村人の了承を取り付けた。

 ノエルは男女別の浴場を作るなら私専用の時間は要りません、と言った。

 屋敷の者たちだけが使う個人の浴室程度なら火炎石一つで足りたのだが、どうせなら村のみんなで使いたいと俺は思い火炎石も必要な分だけ購入するつもりだったが、俺の貯まっている給金と女神が持たせてくれた貨幣だけでは足りなかった。

 すると、ノエルが私も使うものですし浴場を建設するのは村のためです、と言い不足する資金を補ってくれることとなった。

 こうして、夏が終わる頃には橋や公衆浴場の工事も終わり、火炎石も王都から届くだろう。新しい楽しみができた。


 それから一月が過ぎた。橋は完成していて、王都からの使者も安全になったと喜んでいた。

 しかし、物事が順調な時は必ず反動がある。

 それは分かっていた。

 今回の使者にはクリスが同行していた。何かジョルジュに伝えることがあったらしい。


 ジョルジュとクリスが二人で食堂の方で何やら話している。


「それは本当か!」

 ジョルジュの怒りが混ざった大きな声が聞こえた。何か起きたのは間違いない。


「タロウ殿、来てくれないか」

 ジョルジュに呼ばれた。


「タロウ殿、先日少し話をした行方知れずだったエミル様が発見された」

 この地の先代王女エミル。行方不明だったのが見つかったなら良かったとは思うが、先ほどのジョルジュの声を聞く限りあまり良い形で見つかって無さそうだな。最悪、死んでいた報告も想定して話を聞く。


「北東の騎士団の者から王都が管理していない鉱山の採掘現場から奇妙な報告があった。そこは鉄鉱石の採択が盛んな場所で鉄鉱石の採掘とその加工で成り立っている村なのだが、そこで金が採掘されるようになったそうだ。偽物ではいけないと思い北東の騎士団が調査に行った。そこで新しくその村に住みつき鉱山を掘り始めた連中の中にエミル様らしき人物を見かけたそうだ」


「その連中は表向きは鉱夫だが裏で何かやっていそうな雰囲気もあったが今回は金の調査ということで深く調べはしなかったようだ。この国では奴隷は禁止されているのだが、実際に採掘をしているのは奴隷のような扱いをされている者たちで、その中にエミル様を見かけたという話だ。騎士団本隊に報告を上げてが、本人なら騎士団を見て救助要請をするだろうから見間違いだ一蹴されてしまったと聞いた。だが、私にはどうもそうは思いのだ」

 クリスが付け加えた。

 この国は奴隷は禁止されている。しかし、どの世界にも悪事を働かないと生きていけない者はいるようで闇で奴隷を売買している盗賊団のような連中もいるらしい。

 この鉱山で採掘を行っている連中は鉱夫なら職業の証は必要ないのでそれは表向きの顔として裏では奴隷商人や盗賊などをやっているのではないかというのがジョルジュとクリスの一致した見解だった。


「もし本当に行方不明のエミル様なら救出せねばならないのだが」

 騎士団本隊も動かないので、クリスの部隊が独断で動くこととなる。相手の戦力の強さについてはジョルジュもクリスはあまり気にしていなかったのだが、エミル本人ではなかった場合や鉱夫たちが悪事を働いていなかった場合、先日視察する騎士が訪れたにも関わらず改めてわざわざ騎士団隊長が来た説明をするのも難しそうだということだった。騎士団全体に迷惑かけるのは本意ではないらしい。


 すると食堂の外からノエルが声をかけてきた。


「盗み聞きをしてしまった形で申し訳ありません。しかし先代のエミル様のことは私も心配なのです」


「ノエル様……」

 ジョルジュとエミルが同時に声を発する。


「なので、私の視察ということにしたらどうでしょう? 鉱山を管理する地の王女が別の鉱山を視察に行くのはおかしくはありません。そこにその地の執政官や騎士団隊長が同行するのも不自然ではないでしょう」

 ノエルが思わぬ形で提案した。


「しかし、相手はどんな危険があるか分かりませんよ」


「大丈夫です、私も自分の魔法がだんだん使えるようになってきて身を護ることくらいできますし、ジョルジュもクリスも、それにタロウ様にもいますから」


 俺も当たり前のように同行のメンバーに入っていた。


「エミル様かもしれないのです。急ぎましょう」

目的地はこの北の村と北東の街の間にある。王都から見たら北北東に当たる寂れた場所らしい。

 すぐに準備を整えて向かうことになった。

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