17.熊型
俺は新たな熊型の魔獣との戦闘を少し楽観視し過ぎていたのかもしれない。
戦闘はブライとサラに任せて俺はノエルを守らながら追加の魔獣が来ないか後方で警戒する。
二対一、ブライとサラだけでも先ほどの戦闘では実力を発揮できていたし数でも勝っている。楽勝だと思った。
そんなプランだった。
「うおおおおおお」
ブライが気合いの掛け声を上げながら大剣を熊型に振り下ろす。攻撃は当たるのだが魔獣が硬いのかあまり手応えがないようだ。
サラもブライの動きに合わせて魔獣を翻弄しつつ隙ができたところに攻撃する。しかし、サラの攻撃はブライよりも当然軽くほとんど効果が無さそうだ。
熊型も今はサラの攻撃は無視してブライを倒す動きになっている。それでもサラも何か決定打を見つけようとしていた。
俺も何か助太刀をするべきなのだが、どうしても二人の連携した動きに入っていける気がしない。これはゲームではないのだ。連携が取れていない動きで攻撃をすれば俺の攻撃が二人を傷付けることもあるし、その反対もある。それでは足手纏いなだけだ。
同じ理由で後方からの魔法攻撃の支援もできそうにない。ブライとサラの動きに合わせられないのだ。
かと言ってこのままでは埒が明かない。
熊型の攻撃も二人は避けているからやられる心配も今は無さそうだが、体力だって無尽蔵にあるわけではない。熊型の体力がどれくらいあるか分からないが恐らくこちらの方が早く尽きるだろう。
そうすると二人が危うい。その前に倒したいところだ。
しかし、連携が必要になるような相手に遭遇するなんて考えてもいなかった。まだ俺は転生して数えるほどだぞ。対策ができたか……
打開策が思い浮かばないうちに徐々にこちらが押され始めてきた。
熊型の大きく振り上げた手が避けきれなかったブライに直撃する。
「一旦、下がれ」
俺は叫んだ。ブライとサラが退却してくる。ブライは攻撃を腹に喰らったようだ。傷の具合が分からない。
「大丈夫か?」
「なんてことはないかすり傷っスよ……それより、あの熊みたいなの攻撃が効かないのは異常っス……いくら何でも傷くらい付けられるはずなのに」
「魔力で護られてるみたい」
サラが言った。
「お前の攻撃が軽過ぎんだよ」
ブライが軽口を叩く。サラは無視した。こんな余裕があるなら傷は大丈夫そうか。
魔力で護られていてどんな攻撃も効かないっていうのはチート過ぎる。さすがにそれは無いはずだ。
何か打開策が欲しい。今ならブライもサラも離れているし魔法を放ってみることにした。
「ファイヤ」
両手を広げ全力で魔力を放出するイメージで唱えた。イメージした通りの炎の球を熊型に飛ばす。熊に直撃して大きな音を立てた。炎が直撃したから煙が立っていて魔獣の姿は確認できない。
少しは効いてくれるといいのだが。
煙が収まり熊型の魔獣が姿を現す。
「おぉ」
ブライが感嘆の声をあげた。熊型は防御のために腕で身体を守ったのだろうが、その腕は焼け焦げていた。
先ほどまでと違いダメージが入ったのが確認できる。
だが、打開策は見つかったが決定打にはなっていない。
「タロウさん、魔法剣士なのですから剣に魔力を乗せて斬れませんか?」
サラが言った。
確かにそうだ。剣士のように斬撃だけでなく、魔法使いのように魔法攻撃だけでなく、それらを合わせて斬り掛かれば有効打になりそうだ。
ただ、そんな技は俺には無い。
(イメージすればできますよ)
推しと同じ女神の声が頭に入ってくる。いや、入ってきた気がした。本当にできるのか?
炎の魔力を刀に乗せて斬り掛かる。
イメージはできた。
やるしかない。
俺は熊型に向かって飛び出し、刀を振る。
しかし、あっさり避けられてしまう。
それはそうだ。ブライの攻撃を受けながら、サラの動きに見ていた相手だ。身体能力が増しているとはいえ俺の動きを避けることなど簡単なのだろう。しかし、ブライやサラの攻撃と違って受けずに避けるというこは効く可能性が高そうだ。
だが、当たらない。どうしたものか。
その時、熊の両横に巨大な手が現れた。王女の魔法だ。
そのまま熊を捕まえる。
振り向くと王女が自身の前で何か掴むような形をしている。
「これで動きを止めます。長く持たないと思うので、できれば早めにトドメをお願いします」
ノエルが叫ぶ。
熊型は巨大な手を認識できていない。それなのに動けないのだから何が起きたのか理解できていない。
「うおおおおお」
ブライにあやかって声を上げて力を振り絞る。炎を纏った刀が熊の首を切り落とした。
「やった」
俺は安心からか力が抜けその場に座り込んだ。これ以上の魔獣の出現は勘弁して欲しい。
少しするとゲンサンとグリーンが部下たちを引き連れて来てくれた。
不吉な感じがして準備して援護に来てくれたらしい。戦闘が終わった後だったが、熊型が相手だとできることも無く被害が大きくなる可能性もあったからこのタイミングで良かった。
狼型と熊型の魔獣の死骸は運んでもらいゲンサンたちオークに前回と同じように解体してもらうことにした。
ブライは軽口を叩いていたわりに怪我の具合が酷く彼も台車で村まで運んでもらう。
これからこのような脅威があることは覚えておかないといけなくなった。同時に対策を考えないといけないが今回みたいな魔法しか効かない相手ばかりだとジリ貧になってしまう。
それと今まで魔障気が発生していなかった所に発生するようになった理由だ。
俺かノエルに理由があるとは思っていたが、狼型の動きを見ているとノエルを狙っているように感じた。この話はまだ確信がないので、俺の中だけの注意にしておく。
村への帰り道、他の人に見つからないようにそっとステータスの確認をしてみた。
特技に火炎斬りが追加されていた。ファイヤもウォーターもそうなのだが、これは女神が付けている名前なのだろうか。そのままのネーミングだが、誰が付けてもこんなものになるだろうから気にしないでおく。
「タロウ様、どうかされました?」
後ろで立ち止まっていたからかノエルに声を掛けられた。
「何でもありません」
戦闘が長引いたせいで陽が傾き始めていた。




