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湖へ

俺はノエルと一緒に湖へ向かうことになった。

ジョルジュは小さい村ながら執政官として今までの仕事のあるとのことで同行はしなかった。それともしノエルが水路の工事をするための下準備もしたいらしい。

ジョルジュの下準備ということでブライとサラはオークとゴブリンの集落へ説明へ向かった。オークもゴブリンも俺の魔力で進化したので、魔法の契約とは違うがよほどのことではない限り指示に従うだろうとジョルジュは言っていた。


村人たちが毎日の水汲みに向かう。個々で向かうよりは集団で向かった方が安全だろうということで、この形で水汲みに向かっている。

ノエルが同行したいと申し出ると村人は一様に驚いた顔をした。それは当然である。水汲みの手伝いではないが王女が村人の仕事に同行すると言っているのだから驚かない方がおかしい。


村から湖へ向かう道は当然舗装などされていない。それでも毎日村から湖へ人が往復するために自然と獣道のようになっている。毎日踏まれているのもあって森から村は来た時よりも道らしくなっているように思った。

この世界の時間や距離の単位は分からないが、歩いた時間は一時間ちょっとくらいだっただろうか。歩いた時間から考えると距離は三キロから四キロくらいか。これを毎日往復して村へ届けるのは確かに大変だろう。村へ戻る時は汲んだ水を持つのだから更に時間もかかるし、体力も消耗する。子供たちはこれだけで一日が終わってしまうのも無理はない。


俺とノエルは集団の一番後ろを歩いている。

村人たちには後ろからついて行くことと、もし歩き慣れていなくて付いていけなくても俺たちのことは気にせずいつも通りに進んで欲しいと伝えてある。

俺は現実世界だと体力が切れていたかもしれないが、女神が付けてくれた身体能力+のおかげか何の苦もなく歩くことができている。

ノエルは少し大変そうだ。王女として暮らしてきたのだからこんな山歩きはしてこなかっただろう。


「少し休みますか?」

俺はノエルに声をかけた。

「いえ、大丈夫です。村の方たちがいつもやっていることを覚えたくて付いてきたのです。私だけ休むわけにはいきません」

「そう言って無理をして倒れでもしたら俺がジョルジュに怒られてしまいますよ」

「もし私が倒れたらタロウ様が担いで村まで送ってくださいね」

もちろん倒れたらそうするしかないだろうし、特技のおかげで問題なくできるだろう。だが、そうならずに無事に視察を終えたい。


前から村の子供がこちらへ寄ってきた。

「お姉ちゃん、大丈夫? 初めてで疲れちゃった?」

ノエルを心配して戻ってきたようだ。

「こら、そんな風に声をかけてはいけません。ノエル様、申し訳ございませんでした」

母親も慌てて駆け寄ってくる。

「だって、おねえちゃん大変そうだったんだもん」

子供ながらに心配になったようだ。もしかしたら自分が初めて水汲みに行った時のことを思い出していたのかもしれない。

「いえいえ、何も問題ありません。こちらこそご迷惑をおかけしました。もう大丈夫ですよ。一緒に参りましょう」

ノエルは子供と手を繋いで歩き始めた。顔に気力が漲ってきている。これなら湖まで何も心配ないだろう。

気難しい王族だと今ので何かしらの罰とかありそうだがノエルに限ってはそのような理不尽なこともしないので村人たちは安心して暮らせるはずだ。

今までの話からするとこの国の場合は王族や騎士団よりも貴族たちの方が問題が多そうだから、そこは俺も注意しておこう。


村の子供に声をかけられてからノエルは元気に歩いていた。

他の子供たちも寄ってきた。王女が珍しいのだろう。色んな話を聞かれているようで楽しそうに話している。

子供たちが寄ってきたといってもノエル自身もまだ15歳なのだ。そんなに歳が大きく変わるわけではない。生まれが違うだけで背負うものが変わってしまう。今の状況が少し気分転換になっているなら良いのだが。


湖には無事に着いた。

キッタカール山から無限と感じられるほど水が流れてくるとのことで一度この湖にできた水は南の川に繋がり海へ流れていく。

この湖では魚も獲れるとのことでゴブリンたちが不細工な自作の釣竿を持ってやってくることもあるとのことだ。

それと湖の付近の山の麓からは岩塩も獲れるとのことだ。

岩塩の採取も水汲みの際に行うこともある。ということは水を村に引いても岩塩を取るために村からここまで来ることが無くなることはないということだ。

ただ、王女から水汲みを負担を減らすために水を村に引きたいと言ったら皆歓迎していた。当然のことなのだが水汲みと岩塩の採集を同時にするよりは片方だけの方が断然楽という声ばかりだ。

それを聞いてノエルは嬉しそうだった。


「頑張らないといけませんね」

俺はノエルを激励するつもりで言った。

「そうですね、村のみんなのためにも頑張らないといけませんね」

魔法の使い道がはっきりしたからか、更にノエルのやる気が満ちたようだ。

俺も村までの水路のイメージを作るためにも今日は同行してよかった。


村までの帰り道も子供たちはノエルにくっついていた。

ノエルは両手に花というか、両手に子供だった。子供たちが順番に手を繋ぎたがるから手の繋いでいる子はバケツを俺に預けてくる。

俺は両手にバケツで村へ帰ることになった。

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