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バタラカッラ 最後の血統  作者: カンボロ


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安らぎをもたらす緑の光

数時間が過ぎた。


今、四人のパンダワはそれぞれ一本の古木に縛り付けられていた。

黒い鎖が身体に絡みつき、関節を締め上げ、プラーナの流れを抑え込んでいる。

それは単なる鉄ではない――意志そのものが、彼らを幽閉しているかのようだった。


彼らの額には、一枚ずつ呪符が貼られている。


そこに浮かび上がる文字は、淡く光っていた。


「肉のにくのかたまり


残酷だが、真実でもある言葉。

哲学的に言えば、それは――意思を奪われ、力を封じられ、意味を失った人間。

呪符は彼らのプラーナを強制的に抑え込み、肉体を完全に従わせていた。


やがて、一人、また一人と目を覚ます。


最初に湧き上がったのは、怒りだった。


鎖が軋む。

筋肉が張り詰め、荒い呼吸が森に響く。


「呪われろ、ジュダ!」

ビーマの怒声が轟き、森を震わせた。

彼は力任せに鎖を引き千切ろうとする。

「最初の任務から、貴様はスウケツを裏切ったんだ!」


ほどなくして、アルジュナも目を覚ました。

その視線は鋭く、冷え切った怒りを宿している。


「何を企んでいる、野良犬め。」

声は静かだが、刃のように鋭い。

「自分が何をしているのか、本当に分かっているのか?」


ナクラとサデワは、ただ叫ぶことしかできなかった。


「解放しろ!」

「今すぐ放せ!」


その声には、怒りと焦り、そして信じられないという感情が入り混じっていた。


そして――俺は。


彼らの前に立ち、黙っていた。


自分の感情を完全には理解できなかった。

目の前にいるのは、かつて心から敬愛していた伝説の戦士たち。

今、その彼らが縛られている――俺自身の手によって。


だが、これが俺の選んだ道だ。


俺は顔を上げ、はっきりと声を放った。


「……お前たちの言う通りだ。」


声は、揺れなかった。


「俺は相応しくない。価値もない。無力だ。」

「獣だ。」


鎖が、さらに激しく鳴る。


「だが、これだけは聞け。」


俺は一人ずつ、彼らを見据えた。


「俺は、自分の選択を心から信じている。」

「そして誇りに思っている……たとえ、こうして敵として向き合うことになっても、お前たちと同じ場所に立てたことを。」


風が静かに吹き、川の音を運んでくる。


「間もなく、パンドラは起動する。」

「お前たちが必死に止めようとしてきた“破壊”と共に。」


俺は、深く息を吸った。


「だが……それは終わりじゃないのかもしれない。」

「それこそが、本当の試練なのかもしれない。」


その試練は――

世界のためではない。


俺自身のためのものだ。



ラザレスの塔の頂から、一筋の緑色の光が天空へと放たれた。

その光は驚くべき速度で広がり、森や川、広大な大地を越えて――まるで一息で全域を抱きしめるかのように、果てしなく伸びていく。


空気が変わった。


より澄み、

より軽く。


まるで世界が、これまで目に見えぬ何かから解き放たれ、浄化されたかのようだった。


――パンドラは起動された。


私はその光を見つめ、わずかに微笑んだ。


これで……終わりなのか?


しかし、その答えに辿り着く前に、周囲の現実がゆっくりと崩れ始めた。


最初に消えたのは木々。

次に、足元の大地が音もなく失われた。

川も、風も、光さえも溶けるように消え去り、代わりに濃密な闇が広がっていく。


私は動けなかった。


上も下もなく、

時間さえ存在しない。


そのとき――

目の前に、一つの存在が現れた。


バタラ・グル。


穏やかな表情。

揺るぎない威厳を放つその姿は、私のすべてを見透かしているかのようだった。

私が選び、迷い、背負ってきたすべてを、すでに知っているかのように。


「よくやった、我が子よ」


静かで優しい声が響く。


「お前は、この試練を立派に成し遂げた」


その光が薄れていき――


私は目を覚ました。


そこは、カプセルの中だった。


ランプが一つ、また一つと点灯し、機械音とともに蓋がゆっくりと開く。

私は静かに起き上がった。身体は軽い。しかし、意識の奥には、先ほどの体験の余韻がまだ残っている。


周囲を見ると、四つのカプセルも同時に開いていた。


一人、また一人と――

パーンダヴァたちが目を覚ます。


私は彼らを見つめた。


私が正式にユディシュティラとなり、彼らを率いるようになってから、すでに長い時が経っている。

それでも、最初の試練の記憶が、これほど鮮明に蘇るとは思ってもいなかった。


沈黙を破ったのはサデーヴァだった。


「なあ、みんな」

興奮気味に声を上げる。

「今回の修行で、どんな体験をした?」


彼は誇らしげに笑った。


「俺はな、大国の姫を救う英雄になったんだ。君たちはどうだった?」


ナクラは小さく笑い、首を横に振る。


「やめておけ、サデーヴァ」

穏やかな声で言う。

「修行の中で見たものは、それぞれの魂への教えだ。比べる必要はない。意味を受け取れば、それでいい」


その視線は前方へ向き、表情が引き締まる。


「それに、これから重要な任務が待っている。もうその話は終わりだ」


サデーヴァは唇を尖らせた。


「どうしていつも、そんなに冷たいんだよ、ナクラ?」

「俺、何か悪いことしたか?」


ナクラは答えず、ただ微笑んだ。


「ふざけるのはそこまでだ」


ビーマの低く重い声が響く。

半ば叱責するような口調だった。


「今回は本気で集中しろ」


一方、アルジュナは最初から落ち着いていた。

目を閉じ、己の内側で何かを噛みしめるように、静かに立っている。


私は彼ら全員を見渡し、静かに微笑んだ。


――これが、パーンダヴァ五兄弟。


違いも、軽口も、小さな衝突も抱えながら、それでも共に歩む存在。


そして私は、ここに立っている。


ユディシュティラとして――

彼らを導き、使命と犠牲の道を進み、

人の世にダルマを打ち立てるために。


あの試練の記憶は、すでに終わった。


だが今、私の前には

決して尽きることのない、現実の試練が広がっている。


私は一歩、前へ踏み出した。


この任務は――

再び、ここから始まる。


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