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バタラカッラ 最後の血統  作者: カンボロ


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姿なき敵

山岳地帯の曲がりくねった道。

ジョナサンのスポーツカーが夜を裂くように疾走していた。

エンジンが咆哮し、ヘッドライトが鋭く霧を切り裂く。松林の間に漂う薄い靄を白々と照らし出す。


突如――バリィィンッ!

前方に二台の車が横たわり、道を塞いだ。

ジョナサンは反射的にブレーキを踏み込む。タイヤが悲鳴を上げ、わずか数メートル手前で車体が止まる。


遮断車両から二人の男が飛び出す。

手にした銃口が光り、無差別に弾丸を浴びせてきた。

弾丸はアスファルトを抉り、ボディを叩き、火花が夜を照らす。


だがジョナサンは冷静だった。

瞬時にギアを切り替え、車を後退させる。

しかし背後にもすでに二台が待ち伏せていた。

ドアの隙間から伸びる腕、閃光とともに銃火が吐き出される。


タタタタタッ――!

銃声が夜を震わせ、弾丸が車体を蜂の巣にしようと襲い掛かる。


一瞬で追い詰められたジョナサン。

だが躊躇はなかった。反射的にハンドルを切り、車体を鋭く旋回させる。

細く下り勾配の道へ飛び込み、そのまま鬱蒼とした森の闇へと突入した。


直後、四台の追跡車が一斉に方向を変えた。

ヘッドライトが鋭い槍のように森を貫き、獲物を狩る狼の群れのごとく迫り来る。


山林は轟音に満ちた。

エンジンの咆哮と銃声の嵐――

血なまぐさい狩りが、今始まった。


____


闇に沈む山の樹々の間から、一つの影が現れた。

その者は獣のように枝から枝へと飛び移り、目にも留まらぬ速さで迫ってくる。

やがて、標的との距離が縮まると、全身をしならせて――ジョナサンのスポーツカーめがけて飛びかかった。


だが、その刹那。

ジョナサンは鋭くハンドルを切り、車体を大きく傾ける。

影は標的を外し、地面に叩きつけられた。だが、すぐに身を翻し、再び樹上へと舞い戻る。

その速さ、まるで夜の獣。


数秒の後――


ドガァン!!

轟音が響き渡り、スポーツカーの屋根が揺さぶられる。

次の瞬間、ズブリッ!

巨大な刃が天井を貫き、ジョナサンの頭上へと突き刺さった。

間一髪、彼は身を伏せてかわす。額に冷や汗が流れる。


それでも車は走り続ける。背後では四台の黒塗りの車が執拗に追いすがり、銃火が絶え間なく降り注ぐ。

銃口の閃光、火薬の閃き、道路を削る弾丸の嵐――

死の舞踏が闇夜に響きわたる。


車体は蛇のように曲がりくねる山道を滑り、何度も崖際へと吸い寄せられる。

一瞬の判断を誤れば、その先は奈落。


その時――


ダンッ!

乾いた銃声が鳴り響き、後輪が撃ち抜かれた。

スポーツカーは激しく揺れ、ハンドルが奪われる。


「クッ……!」


瞬く間に、スポーツカーは谷へと滑り落ちた。


先ほどボンネットの上に立っていた追跡者は軽やかに跳び降り、路肩に着地すると落ち着いた足取りで立っていた。彼は背筋を伸ばし、下方を無表情に見つめる──表情は一切変わらず、ただ起きたばかりの運命を見守る黒いシルエットがそこにあるだけだった。


ジョナサンの車は空中でくるくると回り、ガラスは粉々に、車体は紙のように折れ曲がり、やがて谷底に激突して轟音をあげた。炎が噴き上がり、残りの燃料を喰らうように燃え盛った。赤い火球が立ちのぼり、煙とともに渦を描き、その光が追跡者たちの冷たい顔に反射した。


追跡していた四台は路肩で停車した。運転手たちは次々に車を降り、下方を見下ろす。残っているのは燃え盛る炎と縮んだ金属の塊だけだった。


彼らの顔には、不気味なほどの高揚が満ちていた——

一人が携帯を取り出し、その黙示録のような光景を映像に収めた。


一瞬で、そのクリップは架空のSNSアカウントへと投げ込まれ、コメントと通知が鳴り響き始めた。


別の者が当局へ電話をかける。

「山道、KM43で事故。車が谷底で燃えています」と短く報告し、あたかも心配したような掠れ声を装って電話を切った。そしてまた笑った。


「ターゲットが本当に死んだか、確認しないとな。とりあえず当局に確かめさせよう。」


その後、関係者の反応を待つことなく、追跡者たちはそれぞれ車に戻った。エンジンが唸り、テールランプが次々と闇の中へと消えていく。彼らは去った──まだ燃え盛る炎と、死の舞を踊る煙を残して。


_____


その朝、山岳道路で起きた自動車事故の報せは、テレビの画面に現れることはなかった。

速報もなく、新聞の見出しにも載らない。まるで見えざる手が、事実そのものを覆い隠しているかのように。


だが、裏社会ではその噂が炎のように広がっていった。

ジョナサン・ワンがスポーツカーの爆発炎上で死亡した——そう囁かれていた。

もっとも、警察は「遺体は発見されていない」と確認していたが。


外の世界にとって、それは単なる悲劇的な事故にすぎなかったかもしれない。

しかし「黒い虎」にとって、その報せは次なる大地震であった。

二人の神麟評議員の死に続き、さらに衝撃をもたらしたのだ。


高い天井の執務室にて、マイケル・ワンは沈黙のまま座していた。

その眼差しは鋭く、だが怒りに満ちていた。

燃え盛る炎に包まれた息子の車の映像が、なおも脳裏に焼き付いて離れない。


炎はまた、父であり首領でもある彼の心に、憤怒を燃え上がらせた。


わずか一週間足らずの間に、二人の最高評議員と、血を分けた息子一人が消えた。


それは偶然などではない。

隠された虐殺であった。


その一方で、地方の領土は少しずつ侵食されていた。

「民の声」を名乗る謎の群衆が、郊外の戦略拠点を次々に襲撃した。

かつては揺るがぬ支配を誇った領域が、今は一つまた一つと崩れていく。


マイケルは悟った。もはや傍観は許されぬと。

彼らは決断しなければならない。

——姿なき敵に、いかに立ち向かうかを。



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