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バタラカッラ 最後の血統  作者: カンボロ


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35/66

より深く見る

ジョンは市場の警備小屋に腰を下ろしていた。

黒いスーツは暑い昼下がりの空気にそぐわないほど整っており、彼は通りすがる人々に声をかけたり、軽く冗談を言ったり、時にはただ黙って頷いたりしながら、手にした携帯電話でひっきりなしに通話を続けていた。


机の上には数枚のチラシが積まれている。ジョン自身が作ったものだ。そこにははっきりとした絵が印刷されていた――右手の甲に刻まれた刺青。アビマニュと同じものだ。下にはこう記されている。



行方不明者を探しています

21歳の女性

右手の甲に上記の刺青あり

下記の番号までご連絡ください

正しい情報を提供した方には報酬あり



ジョンはそのチラシを市場の隅々にばらまいた。掲示板に貼り付け、商人に託し、さらには人々が集まるコーヒー屋の壁にも忍ばせた。彼は知っている。市場の噂は、何よりも速く広がるのだ。


一方、妹のジェニーも別の方法で動いていた。彼女は同じ情報をSNSで拡散し、繰り返し投稿を続けた。誰かがその特徴を思い出してくれることを祈って。


彼らはありとあらゆる手段を尽くした。だが一週間が過ぎても成果はなかった。何の便りも、何の痕跡もない。ジョンの仲間――暴力団 に属する者たちでさえ、情報を掴むことはできなかった。エンジェルは、まるで地上から完全に消え去ったかのようだった。


その夜。アビマニュは一人、物見塔に座っていた。

風の唸り声が静寂を切り裂き、孤独を強調する。


突然、古びた携帯が震えた。画面に浮かんだのはジョンからのメッセージだった。


「明日の夜、俺はマックスとウィンを連れてジャカルタへ行く。

ある闘士を連れて『生死の闘技場』に出場させるんだ。

あそこは闇の舞台だ。マフィア、腐敗した高官、皆が集まって享楽に耽る。

そして必ず――黒虎の頭領の息子も姿を見せる。

来るか? そこでなら、お前はもっと深いものを見るだろう…。」


アビマニュは無表情のまま、その短い文章を見つめ続けた。数秒、いや数十秒。まるで運命そのものを量るかのように。


やがて彼は静かに指を動かし、返信を打った。


「行く。」


携帯は再び沈黙した。風が流れ、夜の闇が揺れる。


その瞬間、アビマニュの目には新たな道が映った――彼をさらなる深淵へと引きずり込む、暗黒の道が。



闇の「生死の闘技場」内部、隠されたVVIPルームには、張り詰めた沈黙と圧倒的な権威の気配が漂っていた。


椅子にゆったりと腰掛けているのは、一人の青年。ジョナサン・ワン。

漆黒のスーツを纏い、髪は一筋たりとも乱れないほど完璧に撫で付けられている。

その顔立ちは若く、端正で、無垢にさえ見える。しかし、その静けさはあまりに計算され過ぎており、冷徹で危険な思考の裏返しであった。


部屋そのものが彼の姿を映している。壁一面は外から決して覗けない漆黒のガラスで覆われ、

デスク上には白く鋭い光が降り注ぎ、積み重なる書類を照らし出す。

しかし、部屋の隅々は濃い影に沈み、暴かれてはならぬ秘密を抱えているかのようだった。


ジョナサンの両脇には二人の護衛が控える。

その正面には、四十歳前後の男が腰を下ろしていた。薄い口髭、鋭い眼差し。

その隣に立つのは、短いミリタリーボブの髪をした女性護衛。規律正しい立ち姿に、右手の甲には「AAA」の刺青が刻まれていた。


ジョナサンは薄く笑みを浮かべ、言葉を放った。

「光栄です……ダササカの首領、ジュン・アブデネゴロ殿が、我々の場に足を運んでくださるとは。」


男は軽く笑みを返し、手を上げる。

「大げさに言うな。私はただのビジネスマンだ。利益さえあれば、相手が誰であろうと構わん。

だが、お前の大胆さには感服するよ、ジョナサン。父親に知られるのが怖くはないのか?」


ジョナサンは書類を閉じ、まっすぐ相手を見据えた。声は冷静だが、その奥に計算の鋭さが潜んでいた。

「いいえ、ジュン殿。

私の一歩一歩はすでに緻密に計算されております。今回の取引は……すべての者に利益をもたらすでしょう。

私に、あなたに、そして──あなたの宿敵である父にさえ。」


重い沈黙が部屋を支配した。

やがて男のポケットで携帯電話が震えた。

彼は画面を一瞥し、素早く読み取る。


『会長……誰かがあなたの護衛“エンジェル”を探しています。

 添付には、彼女の手の甲に刻まれた「AAA」と同じ入れ墨の写真が。』


ジュンの目がわずかに動き、隣に立つ女性へと視線を投げる。

エンジェルは無表情を保ち、直立不動で立っていた。

だが、その姿の奥に微かな動揺を見抜くことができた。


ジュンの口元に、冷たい笑みが浮かぶ。


ジョナサンはその変化を見逃さず、問いかけた。

「何か問題でも、ジュン殿?」


ジュンはゆっくりと顔を向け、薄い笑みを崩さずに答えた。

「いや……問題など、まったくない。」


しかし、その笑みの奥底では、すでに新たな陰謀の歯車が回り始めていた。


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