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バタラカッラ 最後の血統  作者: カンボロ


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33/66

国の闇の根源

ジョンは古びたノートと一本のペンを持ってきた。

アビマニュがそれを開くと、中のページは色とりどりのクレヨンの落書きで埋め尽くされていた。小さな家、ぎこちない笑顔の太陽、バランスの悪い人の絵。ジョンの子どもたちの手によるものだった。


「気にするな」ジョンは肩をすくめて言った。

「使えよ。知りたいことを全部書け。俺が答えてやる。」


アビマニュはうなずき、視線を落とした。ペンが薄い紙の上を走り、長い間胸に秘めていた問いを綴っていく。ジョンは待っていたが、やがて瞼が重くなり、椅子にもたれかかって眠りに落ちた。静かな寝息が、古い集合住宅の窓から忍び込む夜風の音と混ざり合った。


しばらくして、アビマニュは書き終え、ジョンの肩を軽く叩いた。

ジョンは飛び起き、半分眠った目をこすり、慌てて床に置かれた冷めたコーヒーを飲み干すと、アビマニュの手からノートを受け取った。


彼はゆっくりと読み、数秒の沈黙の後、深く息を吐いた。

「……よし、一つずつ答えてやる。」


――――


最初の問いに目を落としたとき、ジョンの表情は固まった。


「……13年前、俺は両親を失った。お前のような奴に。金を力ずくで取り立てる者たちに。」


ジョンの手は止まり、顔が険しくなる。

「……その不幸を許してくれ。」彼は低く言った。

「この国の暮らしは、それほどまでに腐りきってるんだ。言い訳はしない……ただ、俺には他に道がなかった。家族を養うため、それしかなかった。俺のやってることは間違いだ。完全に、間違ってる。」


彼はしばし黙り込み、そして次の問いへと目を移した。


――――


「この15年間、この国で何が起きたのか? 当時、俺はまだ子供で何も知らなかった。」


ジョンは背筋を伸ばし、深く息を吸った。声には歴史の重みが滲んでいた。

「……すべての始まりは1998年に遡る。」


彼の語り口は重く、しかし止まることなく続いた。


「ハルトノ大統領は30年以上も権力に居座っていた。腐敗は蔓延し、経済は崩壊し、国民は苦しみにあえいでいた。1998年5月、ついに大規模な暴動が全国の大都市で勃発した。怒りの矛先は――華僑に向けられた。


店は焼かれ、家は荒らされ、女は凌辱され、道端に死体が転がった。

理由は一つ。国が華僑ばかりを優遇していると信じられていたからだ。だが、実際に最も打撃を受けていたのは貧しい土着の民だった。」


「学生たちは立ち上がり、大規模なデモが各地で起きた。やがてハルトノが退陣し、国は政治的空白に陥った。そこから――**暴力団 **の種が芽生えたんだ。


当初、それは自衛のための集団だった。学生は市民団体を作り、華僑は互いを守る組織を作った。だが権力を貪る連中が、それらを取り込んだ。守るための組織は、やがて地下の犯罪組織へと変貌した。」


「時が経つにつれ、小さな組織は飲み込まれ、二つの巨大な名前だけが残った。

・ダササカ ― 土着の民による組織。

・黒い虎 ― 華僑の組織。


奴らは裏社会を支配した。闇商売、賭博、麻薬、密輸。警察に食い込み、政治にも入り込み、法まで作り替えた。今のお前が見る苦しい暮らしの多くは、奴らの影だ。」


――――


次の問いを読んだジョンは、煙を吐き出しながら目を細めた。


「アリンビ・コープ……街の大画面で見た。あれは何者だ?」


「……アリンビ・コープ。今、誰もがその名を口にする。」


「世界的な企業だ。技術、エネルギー、金融、様々な分野で力を持つ。

オーナーはナニア・タン。若く、聡明で、富を持ち……そして最も勇敢な女だ。この国で堂々と、『私は暴力団を潰す』と宣言している。」


ジョンは椅子に体を預け、吐き出した煙が夜に漂った。

「想像してみろ。この国は長らくハリマウ・ヒタムとダササカに縛られてきた。そこに一人の女が現れ、全世界に向けて『私は奴らを滅ぼす』と宣言するんだ。彼女の言葉は人々の心に響いた。圧政に疲れ果てた者たちに、希望を与えた。」


ジョンはアビマニュを見た。その瞳に珍しく誠実さが宿っていた。

「……俺だってな。暴力団の一員でありながら、彼女の成功を祈ってる。どうにかして……彼女に勝ってほしいんだ。多くの人間が全てを失った。だからこそ、彼らは希望を必要としている。そして今、ナニア・タンこそが、その希望の象徴なんだ。」


――――


アビマニュは再びノートを取り戻し、新たな問いを書いた。

「暴力団 ……ダササカ、ハリマウ・ヒタム。仕組みはどうなっている?」


ジョンはそれを読み、再びタバコに火をつけて答えた。


「……いいか、よく聞け。


暴力団ってのは地下組織の総称だ。奴らは強大な力を持ち、社会を牛耳ってるが、名前は決して表に出ない。軽々しく口にするだけでも危険だ。だが、確かに存在し、この国を縛っている。」


ジョンは自分の胸を指差した。

「俺はただの**外部 **だ。外から雇われる人間。取り立てや雑用をやるが、正式な構成員とは見なされない。」


彼の声は硬さを増す。

「元々、ハリマウ・ヒタムは華僑しか受け入れなかった。だが、ボスの息子――ジョナサン・ワンが組織に入ってからは違う。今は土着の人間も使われる。ただし正式な構成員にはなれない。利用されるだけだ。」


ジョンはノートに指で段を刻みながら説明した。

「正式な構成員は内部と呼ばれる。忠誠を誓い、外部を管理する。

その上に幹部、広い地域を支配するリーダー。

さらに支部長、都市全体を握る者。

そして十龍神――十人の最高幹部。黒い虎の頭脳だ。

その頂点に立つのは創設者。組織を生み出し、今なお支配する者だ。」


「……ダササカもほぼ同じ仕組みだ。ただ、中身は土着の人間ばかり。出自は元活動家や元ヤクザ、学生運動の残党。華僑を基盤とするハリマウ・ヒタムに対し、奴らは土着の怒りから生まれた。」


「奴らも外部を使う。道具としてな。

だが、最高幹部は十柱――“ダササカの十柱”と呼ばれる。

そしてその上に、一人の男が立つ。1998年、学生を率いて暴政に抗った人物。人々は彼を**学生の父**と呼んだ。だが今や、その手からダササカが生まれ、この国で最も恐れられる暴力団の一つとなった。」


ジョンはノートを閉じ、表紙を指で軽く叩いた。

「……つまりだ。ハリマウ・ヒタムは華僑の恐怖と傷から生まれ、ダササカは土着の怒りから生まれた。二つの闇の歴史。今、この国を二分する二つの巨人だ。」


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