5 祝祭。(7)
ずっと、姉が妬ましかった。
わたくし――ノラ・アシュリーの能力は『空間移動』――空間を司るアシュリー家にとっては最弱といえるようなものだった。
そんな能力だったわたくしだって、頑張って成り上がったのだ。
近接スキルを身に着けた。魔法だけでなく、自ら剣を使って成り上がった。
こんなゴミみたいな能力だけど、その能力の最大限を活かして戦うことを決意した。
頑張ったのに、わたくしはトップ50ほどだったと思う。
何十年かに一度、不定期に行われる大会の結果でわかった。
普段はトップ15ほどを取るアシュリー家だ。
「あんたは本当に出来損ないねぇ……」
だから、ずっと両親に嫌われ続けてきた。
一方で、姉――ノア・アシュリーの能力はアシュリー家の過去の能力と比べても最強だったらしい。
その能力は『新空間』。自分の意志で別次元に繋がるゲートを作り出し、開閉することができるというものだった。
彼女は戦闘の才能もあり、その大会ではトップ5に入っていた。
これは、アシュリー家の最高記録だった。
初めて殺魔を起こしたのは、その大会の結果が出たときだ。
あまりにもわたくしを出来損ないという親が許せなかった。
だから殺した。
姉はその様子を見ていた。でも、黙ってくれていた。
姉はとても優しかった。そこだけは、大好きだった。
それでも、妬ましいことに変わりはなかった。
だから、今日殺そうと決意したのに。
決意をしぼませないために予告まで出したのに。
――あいつに、特定されてしまった。
(でも、もういいや……)
今日、わたくしは殺されるのだから――。
今までの罪を、消し去ってくれるのだから――。
わたくしは目を瞑った。
「じゃあ、始めようか」
みんなは頷くだけでその場にたたずんでいる。
始めるとは、きっとあのことなのだろう。
彼は剣を取り出し、アイファがその剣の中に入り、熱々しい炎の剣が出来上がる。
(本当にやるんだ……)
私――いのりは目を瞑った。
意外と音は出なかった。