5 祝祭。(6)
〈あんな質問答えてたら、さすがにわかるよ〉
私は、教師が俯いているように見えた。
「……なぜ、そんなことを?」
ノラは薄気味悪い笑みを浮かべる。
「どうしてあのとき、あなたとノアさんが残るなんて言ったの?」
「皆様の安全を優先するのがわたくしたちの務めでしょう?」
「でも、みんなを頼ってもよかったんじゃない?」
「いいえ、世界三大魔やそのお連れの皆様に怪我をさせるなど許されたことではありません……!」
「私はここにいるみんなと比べたらたぶん最弱だろうから使えないのはわかる。けど、ここには世界三大魔がいるんだよ? ノアさんもノラさんも強いだろうけど、上には上がいる。頼っていいと思うけどな」
「そうでしょうか?」
「世界三大魔を自分たちの国に帰らすことで二人きりにして、殺害しようとしたんじゃないの?」
「そうしたら、ここからわたくしは永遠に脱出できません…………‼」
「ノラ? あなたの能力も空間を司っているでしょう? 脱出できないというのは嘘じゃないの? だって、あなたはどんな場所でも移動できるワープの持ち主なのだから」
「お姉さま……⁉」
〈……決まりのようだね〉
私は首を縦に振る。
「じゃあ、目的はノアさんを殺害することだったんだね、ノラさん」
「……たぶん、そうだったのではないでしょうか?」
答えたのは、ノラではなく姉のノアだった。
「いのりん。往来魔だから知らないかもだから聞いておくんだけど、殺魔未遂ってどれくらいの罪になるのか知ってる?」
「……いいえ。私の世界だったら5年以上の懲役が課せられていると聞いたことがあります」
「懲役? いのりちゃん、何それ?」
「えっと……」
私は口を閉じた。
彼らは懲役を知らない。
(それを意味するのは――)
「処刑するの、いのりさん。この世界では、どんな罪でも」
――処刑。
これが意味するのは一つしかない。
(そうなんだ……)
私は思った。
(この世界は、私の住む世界よりも恐ろしいところなんだ)
……ということを。