5 祝祭。(4)
「ゲートって、この空間のことだよね? これって誰が作ったの?」
殺人予告。いや、殺魔予告といったらいいのだろうか。
一つ言えるのは、この状況はマズいということだけ。
「……わたくしでございます」
金髪の女性――ノアが手を挙げた。
「わかった……。じゃあ、ゲートの仕組みを教えてほしいかな。犯人を特定しないと、大変なことになる気がする」
「…………了解いたしました」
ノアの顔は青白い。当たり前だ。
――だって、彼女は1時間後に殺されるのかもしれないのだから。
ノアに聞いてわかったことは二つ。
一つ、ノアがゲートを開く。閉じるという意思を持たない限り、そのゲートの様子は変化しないということ。
二つ、ノア本人が消えればゲートの状態は永遠に変化しないということ。
「――となれば、世界三大魔を消すということが目的なのでしょうか?」
その単語が聞こえた瞬間、全員が肩を上げた。
「アイファ、やだよ……? オルタが消えちゃうの」
「アイファ、それはわたしだって同じ……。妹が、いなくなるってことだから」
「ぼくもです。姉様に手を出すなんて許せません……!」
その衝撃は世界三大魔本人たちより、その関係者の方が大きいようだ。
(私だって、メイと別れたくない……!)
だから、私は考えるんだ。
「皆様、」
今度はノラの声が響き、全員が彼女の方に顔を向けた。
「わたくしとノアが残ります。皆様は脱出を」
「どうして? ノラ。それならノア一人でゲートを閉じ込めて籠城する方が確実だと思うけど」
「いいえ、いのり様。一人見張りを入れなければノアが亡くなられたときに発見できません」
「そうだとしても――」
「ちょっとストープっっっ!」
(なんで止めるかなぁ……)
私は仕方なくオルタの方を見る。
「三人とも、事態を飲み込むのが早すぎる」
「オルタと同じ。アイファたち、ついていけてない。ちょっと、時間がほしい……」
「これはこれは……失礼いたしました、オルタ・ドアルゴ様、アイファ様」
「わたくしたちは、少し黙らせていただきます……」
ノアとノラの言葉を合図に、私も黙りこんだ。
きっと、言っちゃいけないやつだよね…………。
その時間は、とても長く感じられた。