5 祝祭。(3)
祝祭が始まるまであと10分ほどになると、二人の少女が闇の中から現れた。二人ともお団子部屋に大きなリボンがついていて、瓜二つの――たぶん双子だ。
「遅いよー、アイネちゃん。残り十分で始まっちゃう」
オルタは肩をすくめる。
「ごめ~ん。グダグダしてたら遅くなった~」
『アイネ』と呼ばれた女の子は、小学生ほどに見え、後ろには黄色のリボンを身に着けていた。
(だけど、私よりは年上なんだろうな……)
そのことは、メイのときにすべてを知っている。
7歳ほどでいかにも元気に見える彼女だが、きっと実年齢は80歳ほどの(現世でいう)おばあちゃんだろう。
「言い訳? そんなのここでは通用しないよ」
「うちのアイネがすみません……」
もう一人の女の子は、さっきの子とはまた違って声の抑揚が乏しく、落ち着いた雰囲気を纏っていた。だが、見た目は小学生であることには変わりない。リボンの色はオレンジだった。
「アイナちゃんが謝ることじゃないよ」
「でも、わたしはサポーターだし、姉だから……」
どうやら双子の姉の方である『アイナ』は複雑そうな顔をしていた。
「……ところでメイさん。その子、だれ?」
アイナは私の方を指さす。
「いのりちゃん。わたしの友達だよ‼」
「ふぅん」と。
彼女は不思議そうに見ていた。
(この子のこと、よくわからないわ……)
嫌いじゃないけど、変わった子だな、と思った。
「一分切ったよ」
オルタが時間を報告すると、席に着いていたメイとアイネがカウントダウンを始める。
「あと少しですね」
隣の席にいるライが小声で話しかけてきたので、私は「そうだね」と返した。
そして、残りが5になったところで、二人の声はますます大きくなる。
「よ~ん! さ~ん! に~! い~ち~‼」
そして祝祭――異世界の忘年会が始まる。
――――――はずだった。
「みなさん、大変なことが起こってしまいました」
血相を変えたノアとノラは額に汗を浮かばせている。
「何があった。報告を頼む」
優しそうな好青年から少しぶっきらぼうなイケメンへの変貌を考えてしまうほど、オルタの声色が変化する。
「一通の予告が入りました」
(嘘だろ……⁉)〈嘘でしょ……⁉〉
それは、恐ろしいことを告げるものだった。
「――祝祭開催中の1時に、ゲートを作る者をこの手で消し去る。と」