5 祝祭。(2)
「メイ・キラルク様、ライ・キラルク様、いのり様。どうぞ中へお入りください」
時はあれから6日後。
闇のように暗いゲートから現れたハーフツインテールの少女――ノラに案内され、私たちは彼女とともにその混沌とした穴に入り込んだ。
だが、私たちは知らなかった。
その混沌は、ゲートだけではなかったということを――――。
「ここが祝祭の開かれるお部屋でございます。0時から3時までを予定としておりますので、しばらくこちらでお待ちください」
きっと午前の方だろう。
ノラはそれだけ言うとこの部屋から去っていった。
祝祭とやらが開かれるらしいこの部屋は紫一色で統一されている。
一つの大きなテーブルと、八つの椅子がそこにはある。
テーブルも椅子もすぐには見分けられないほど擬態していて、座ろうとしたら失敗してしまいそうだ。
(なんか、不気味だな……)
そう思ってしまうほどに室内は一色で構成されていた。
ところで、八脚の椅子の二つがすでに埋まっていた。
一人は、教師に丸い目と綺麗な赤い髪をつけたかのようなあどけない顔立ちの女の子。
もう一人は、俗に言う高身長イケメンと言われる勇者のような青年だ。
「お久しぶりで~す‼」
朗らかに挨拶をするメイと、いつもと変わらず一礼をするライの姿が見えた。
「一年ぶりだね。メイちゃん、ライくん――」
青年は軽く手を振って余裕そうな態度を見せる。
「――と、そこにいる往来魔の女の子。君は初めましてかな?」
「えぇ。あ、はい」
私は急に指されたことで、ふんだんに間投詞を使って答えてしまった。
〈なんか気になってんの~?〉
(……は? 全然そんなことないんだけど。言いがかりはやめてくれる?)
完投詞を使ったのに変な感情は一切なかった。
「彼女はいのりさんです。ぼくたちの友達……といえばよろしいのでしょうか?」
「そうなんだ。よろしくね、いのりちゃん」
「はい。短い間ですが、よろしくお願いします」
私も、よく行うライの行動のように頭を下げた。
「僕も自己紹介しなきゃだよね。僕は『オルタ・ドアルゴ』。世界三大魔の『炎之戦士』を名乗らせていただいているよ」
「ほら、アイファも名乗らないと」とオルタが言うと、ふてくされた様子で精霊の女の子は答えた。
「アイファは『アイファ』。オルタと一緒に生活してる」
私は「よろしくね」とだけ言うと、オルタはまた手を振り、アイファはペコッと一礼をした。
自己紹介が終わったところで、私たちは話すことにためらいを感じなくなるぐらいに雑談をした。