1 2つの人生(1)
初めまして。お久しぶりな方もいらっしゃるでしょうか……?
『どこぞの悪鬼』と申します。
本日は、『往来魔さんは神の使い⁉』をご覧いただき、誠にありがとうございます!
この作品は、初めて書いた物語を脱稿・加筆したものです。
この作品を書いてから約2年がたち、実際過去に書いた原稿を見てみると、なんともよくない三拍子がそろっている。
ここではそれをできる限りなくして、自分の今の最大限を出したいと思います!
『プリ小説』では、過去のその原稿に近づけたものを投稿しております。
ちなみにそのサイトでは、この小説は完結しておりますので、おおまかな内容を先に把握しておきたい。今と前の実力を比較したい。
そういう方々がいらしたらぜひ見てもらいです!
過去の原稿よりずっといいものに仕上げます! これは宣言です!
改めて、この作品をよろしくお願いします‼
「じゃあ、また明日!」
いつも言う別れの挨拶と共に、私——赤井美鈴は急いで家に向かった。
なぜなら……。
今日は私の誕生日だから‼
とにかく、私は早くケーキが食べたいのだ!
……ということなので、いつもと違って思いっきり走っている。
家に着いて、玄関前で肩を大きく動かしていた。
しかし、私の母さん——赤井咲がいつも言う『おかえり』の声は聞こえない。
「母さーん……?」
とりあえずリビングに行くと、机の上には一枚の紙と箱が置いてあった。
紙にはなにやら文字がつづられている。
私はその紙を手に取った。
『急に仕事に入らないといけなくなったから、ケーキは夜に食べようね。箱があるから、それは先に開けていいよ。誕生日おめでとう』
はい。
どうやら今、ケーキを食べることは不可能らしいです。
どういうことだよーーー!
ただ、しかたないものは仕方ない。
私はあれを指しているのであろう小さな箱を開けた。——中には指輪が入っていた。
(かわいい……!)
よし、着けよう。
試しに、右手の薬指に指輪を着けてみる。
(あれ……? これ…………?)
その指輪には、どうやら回せるところがついていた。
人型と魂の2つの絵柄がついており、今、矢印は人型のところを指している。
やっぱり気になるので、魂の絵柄の方に回してみた。
(……っ!!!)
一瞬、真っ白な光が私の視界を包み込んだあと、急に脚に力が入らなくなった。
<名前の設定をお願いします>
(‼)
その一言で目覚めた私は周りを見渡す。
なんということだろう。
そこはまさかの家ではなかった。
例えるなら、宇宙のような空間だ。
歩き続けても壁が見つからなさそうなほどだ。
(どういうこと……⁉)
まず、ここはどこなのか。
指輪を回してから、私はどうなってしまったのか。
結構危ない指輪だったのでは……?
とにかく、あれから何があって今に至っているのか、さっぱりわからなかった。
<すごい焦ってるね。ここは『最初の場』。君が異世界に行くときの名前を決めるのに必要なところなんだ。あ、指輪は回さないでね。今やったら、君、死ぬよ>
……はい?
……え、死ぬ?
随分と物騒なことをおっしゃるものです。
ってことで指輪を元に戻そうと——。
<君、異世界に行きたくはないのかい?>
「異世界?」
<そうそう>
異世界。
そう。意味ならわかる。
某、殺されてチートになるアレや、某、謎に異世界に飛ばされて地獄ともいえる大激闘を繰り広げているバトルもののアレだ。
ただ、理解はできない。当たり前だ。
まずは脱出方法を考えなければ……。
「ねえねえ、聞いていい?」
<なに?>
「無傷でここから脱出するにはどうしたらいい?」
<名前を決める。それ以外は安全は保障されないね>
……物騒発言その2‼
ここまで強引なんだから結構危険ななにかだったのか?
<あ、ちなみに現実の君は今、気絶中といったところだね……。この空間につながる世界——『異世界』と、いつも君が生活している世界——『現実世界』を行き来するってわけだ。どうだい? 面白そうだろう?>
『気絶中』。
ましに聞こえる発言ですが、普通にアウトです。
ただ私は知っている!
こういうのはヤバそうなやつには従った方がいいことに!
「わかった。名前を決めればいいんでしょ!」
————と言われてもなににしようか?
どうでもいいように思ってしまうだろう。
ただ!
私はこういうのはしっかり考えて決めたいタイプ!
いつか実際に使いたくなりそうだからね。こういう自分で考えた名前って。
候補1。『美鈴』。
区別が面倒そうなので却下。
候補2。ケーキに関する名前。
頭がおかしな人だと思われそうだから却下。
候補3以降。…………まったく思いつかない。
<だったら、大切なものにしたらいいんじゃない?>
あの電子音声のような声が響いた。
(大切なもの……?)
一番大切にしているものは、もちろん『命』だろう。だって、命が消えたら、人生もろとも終わってしまうのだから。でも、それは『祈る』ことしかできない。病気になったり、事故や事件に巻き込まれたりしてしまうことだってあるのだから。
だから、私の名前は————。
「——決めたよ」
<おお~! じゃあ、教えてください‼>
「————『いのり』……私は、いのりだよ」
<いのり……? わかった。すっごくいい名前だね! 困ったらなんでもぼくに聞いてよ⁉ それでは、異世界にレッツゴー!!!>
「い、今⁉」
そいつは何も答えない。
その代わりというかのように、再び真っ白な世界が私の目の前に現れた。
気が付けば、暗い森の中にひとりぽつんと立っていた。
(えーっと……?)
ここはどこなのだろう?
何をしたらいいのだろう?
どこかに人はいないの?
まあいきなり自覚がないところにいるのだから、そうなっても仕方がない。
(とりあえず歩くか!)
考え続けてずっと突っ立っているのもあれなので、とりあえず先に進むことにした。
ということでたくさん歩いているのだが……。
はい。全然、森から出られません。
(外はどこだよ⁉)
私の腹時計だが、あれから四時間はたっているはずだ。
なのに、景色は最初からなにも変わっていない。
<ほー。外に出られずお困り中ですかー>
なんともあざ笑っている様子の喋るぬいぐるみの声が私の脳内に響く。
「外、どこにあるの?」
ただ実際に見つからないのは事実なので、あきらめて聞くことにした。
<あー、外かー。空でも飛んでいけばー?>
「と、飛ぶ⁉」
意味がわからないです。
私は人間ですよ? 空は飛べません。一般常識中の常識ですね。
なぜそんなことをこのぬいぐるみは言ったんだ。
とにかく大量のこいつへのブーイングを脳内でしていたところ、再びあの声が響いた。
<君、『魔人』だよ>
(…………?)
——今、『魔人』って言った?
<そうそう。君、『魔人』なんだよね、この世界では。だから空も飛べるし、魔法も使えるよ。ね? いいって言ったでしょ?>
(魔法……)
「どんな……⁉ どんな魔法……⁉」
このぬいぐるみ、悪いことは言っていなかった!
とても夢物語みたいだけど、これはまさしく現実なのだ‼
〈自分で試せばいいよ。……ほら、周りに実験台がいるじゃないか〉
実験台。
つまり私の魔法探しの被験者ということだ。
(……うわ!)
『周りにいる』と言われたので周りを見てみると、本当になにかがいた。
とてもデカいクモだ。
体長はぱっと見で3メートル超え。
「嘘でしょ……」
私は大きなひとりごとを呟いていた。
この世界、巨大な動物がいるんだ。