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転生魔女のがんばり日誌  作者: 諫山杏心
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7話 来訪者





ある日のお昼前。私と母は昼食の準備をしていた。

今日の昼食のメニューは野菜たっぷりのスープと簡単なサンドイッチだ。


母の料理は美味しいが、この世界は元の世界と違ってシンプルな料理しかない。

煮るか焼くか具材をパンに挟むくらいだ。

母には言えないが、正直ちょっと飽きている。…母には決して言えないが。


母とお話をしながらサンドイッチ用のレタラ(レタスの様な野菜)を洗っていると、

コンコンと家のドアがノックされた。誰か来たらしい。


「はーい!今出ます!…あ、リリス。トマテも洗っておいて」


「うん、わかった」


トマテというのは皆さんお気付きだろうが、元の世界でいうトマトだ。

家ではこういった野菜が取れるので野菜が高頻度で食卓にのぼる。


私に指示を出した母は濡れたてをエプロンで拭き、ドアに向かう。

よし、レタラは洗い終えた。次はトマテだな、とトマテを一つ手に取った瞬間だった。


「誰から聞いたのですか!」


母の怒った様な声が聞こえた。

びっくりした私は思わずトマテを落としてしまった。

慌ててトマテを拾い母の方を見ると、

開いた扉の向こうには白いフードを被った全身真っ白な人物が立っていた。

母はその人物を警戒している様だが、その人物はそれを気にしていないようで、

口元にうっすらと笑みを浮かべている。


「おやおや、そんな大声を出してはいけませんよ。

近隣の皆さんと、…それから、大切なお子さんが吃驚してしまいます」


そう白い人物が言うと、母はハッとした様に私の方に視線を向けた。

私は戸惑いながらも「お母さん?」と呟いた。


「…リリス、なんでもないのよ。

魔術師様、一緒にお昼はいかがかしら?

丁度今、私の子供と作っておりますの」


母はうっすらと笑みを浮かべながら人物にそう言った。

笑みは浮かべているが、敵意を感じる。

魔術師と呼ばれた白い人物はニコリと微笑んで答えた。


「いやぁ、それは嬉しいご招待だ!我が愛し子の手料理をご馳走になれるなんて!

是非ともご一緒させていただこう!」


まるで演劇のようなオーバーリアクションでそう言うと、

魔術師様は家の中に入ってきて、私の前まで歩み寄ってくる。

歩み寄ってくるのは良い。良いのだが。


…ちょっと待て。初対面のはずなのに妙に距離が近いが?

10cmほどしか距離がないが?なんだコイツは?


そう戸惑う私を無視して口元に微笑みを浮かべたまま、

その魔術師は私に目線を合わせ明るい声で話し始める。


「初めまして、リリス・マックワイヤー!我が愛し子よ!

僕はフェイン、フェイン・デリス。ミザリス王国宮廷の筆頭魔術師さ!

いきなりでびっくりしただろう?君のことはこの村の神父様から聞いていてね。

なんでも魔力もスキルも持っていて、魔法学を学ばずに魔法が使えるとか!

いやぁ〜素晴らしい!さすがは我が愛し子!惚れ惚れする才能だ!

君の才能の素晴らしさを聞いてね、

思わず仕事をほったらかしてきちゃった訳だよ!

でも仕方ないだろう?我が愛し子がこんなに素晴らしいと聞いたらさぁ!」


そう早口で捲し立てて私と握手をしながら言う彼はとても嬉しそうだ。

一方、私はこのフェイン様が言ったことの半分くらいしか話を理解していなかった。


…嬉しそうなのは構わないが、握手した腕をブンブン振るのはやめてくれ。


そう思って苦笑いを浮かべると、私の様子に気付いたのだろう。

ブンブンと振っていた腕と喋り続けていた口の動きを止めた。

そして、優しく言いながら被っていたフードに手をかける。


「………本当に、この日をどれだけ待ち望んでいたか」


フードを取った彼の顔は、とても美しかった。全身が真っ白だった。

彼の肌も、瞳も、髪も、まつ毛ですら真っ白に輝いていて。

薄い唇だけが桃色に色付いていた。


これは、絶世の美男だ。


そのあまりに美しい顔が間近にあることに、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

う、美しい…!マックワイヤー家も美形揃いだと思っていたが、

彼の美しさの足元にも及ばないだろう。それくらいの美貌だ。


思わず固まったままの私を見かねたのだろう、母がゴホンと咳払いをした。


「…リリス。こっちでお昼の準備を続けましょうね」


そう言った母は穏やかに笑っているが、目が笑っていない。

多分これは私ではなくこのフェイン様に対する怒りなのだろうが、それでも怖い。

「はいっ!!」と声を裏返しながらフェイン様の腕を振り解き母の元へと向かう。


そうして母と昼食作りを再開した。

昼食を作っている間の母はニコニコとしていてとても優しかった。


しかしリビングの椅子に座ったフェイン様が

「何を作っているんだい?」と聞いた瞬間の母の顔付きはまるで般若のようで。

その顔も一瞬で、次の瞬間にはいつもの様な微笑みを浮かべてこう言った。


「できてからのお楽しみですよ〜」


…つまり、黙っとけ、ということである。

母はキレると怖い。それを再認識した。






フェイン様は掴みどころがなくて、書いてて楽しいキャラの1人です。

皆さんが気に入ったキャラクターはいますか??

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