3話 どんな力を力を持っても
前にも言った通り、この世界には魔法がある。
しかし誰にでも使えるわけではない。
大体は女性が使える物である。大体の男性は使えない。
それには起源がある。
それはこの世界では誰でも知ってる伝説だ。
ーーー昔々、月の女神ルーナと、太陽の男神アポロがいらっしゃいました。
2柱はそれぞれの国を持ち、月の国は常に夜、太陽の国は常に朝でした。
その2柱はそれぞれ不思議な力を持っていました。
女神ルーナはあらゆる奇跡を起こす力を、
男神アポロは生きとし生ける者を助ける力を持っていたのです。
しかしその2柱は仲が悪く、いつも喧嘩ばかりです。
助けうこともせず、ずっとお互いの悪口ばかり!
それぞれが怒り出す度に、朝になったり夜になったり、もう大変!
そこで困った2つの国の民達は、1人の人間に頼みます。
“あの2柱を仲良くさせれませんか?“
人間は答えました。
“あなたの願いを叶えましょう“
その人間は民達の願いを聞くと、
2柱の神達を呼び出してこう言います。
“お二人さん、お二人さん。あなた方の民が、朝と夜が平等に来ないせいで、いつも困り果てています。
畑の作物は育たず、母親は体調を崩し赤子が乳を吸えない。
お二人のためではなく、まずは国の民のために協力しあってみてはどうでしょうか“
人間の言葉に、2柱はハッと気付きました。
神達は民達の声を全く聞いていなかったのです。
反省したその2柱は、お互いに歩み寄ろうと努力してみました。
するとどうでしょう、お互いに“素敵な神ではないか!“と気付いたのです。
そしていとも簡単に恋に落ちた神々は、その人間にお礼を言いました。
“貴方のおかげで私達は幸せに、民達は豊かに生きていけるようになりました。
何かお礼をせねばいけません。願いはありませんか“
人間は答えました。
“それではお2人の力を持つ人間を生み出し、
1日のうちに朝と夜がどちらも来るようにしてください。
そうすれば、お2人も民達も私も、皆が幸せに暮らせる国となるでしょう“
神々はその願いを聞き入れました。
月の国と太陽の国は1つの国になり、1日に朝も夜も来るようになりました。
そして、2柱は魔力を持つ女性と、技術を持つ男性を生み出しました。
「……こうして神々の作った国・ミザルス王国ができあがり、
女性は魔力、男性はスキルを持って産まれるようになったのです」
おしまいおしまい、と母が絵本を閉じた。
読み聞かせを聞いていたリッツはいつの間にかベッドに沈んで寝ている。
ベッドの横の椅子に座って読み聞かせを聞いていた私は、母に聞いてみた。
「これって本当のお話なのかな?」
すると母は「うーん」と腕を組み答えた。
「どうなんでしょうねぇ。
…本当かは分からないけど、本当だったら素敵だと思わない?」
そう言ってニコリと笑った母はまるで夢見る少女のようで、
思わず私も「そうだね」と笑った。
「そういえば、リリスはもうすぐ天星の儀ねぇ」
笑顔の私の頭を撫でながら、母が言った。
…天星の儀?
「なぁに?それ」
頭を撫でられながらも目線を母に向けると、母が答えた。
「天星の儀っていうのはね。その年で10歳になる子供が魔力かスキルを授かる儀式なの。
女の子は魔力、男の子はスキルを授かることが多いんだけど…たまにその逆もあるわね」
後半、少し複雑そうに話す母にクエスチョンマークを浮かべながら、ふーん。と答えた。
ーーー逆になると何かあるのだろうか?
そんな思考になっていると、母は真面目な顔をして私と目線を合わせる。
「リリス。もしリリスがスキル持ちになっても、お母さんはリリスの味方だからね。
だからリリスもどんな力を持とうと、自分も周りも責めずに、自分の事を誇りに思ってね」
「お母さん…?どういうこと…?」
「何があっても、私はリリスを愛してる、ってこと」
そう言ってふんわりと微笑む母に困惑した。
違うの、そういうことじゃなくて。それはどういう意味なの。
私がスキルを持ってしまうと、何か不都合があるということなの?
「…………………」
微笑み私の頭を撫で続ける母に、私は何も言えずに。
俯いて、床に染みついたシミを見つめ続けることしかできなかった。
なんだか不穏な空気ですね…。
一応コメディ有りの作品です笑