15話 初めての魔法薬
フェイン様がぐつぐつ煮立ち始めた鍋に左手をかざす。
そして…魔力を注ぎ始める。
青白い魔力が鍋の中に入っていく。
まるで青く輝く数十本の糸が、
彼の手から生み出されているような奇妙で美しい光景だ。
「魔法薬というのは材料もそうだが、
魔力の量と魔力の混ぜ方が重要なんだよ。
低級睡眠薬の場合は、この様に少量の魔力をゆっくりと。
君も想像がつくだろうが、上級になるにつれ注ぐ魔力の量も多くなる」
左手で魔力を注ぎ、右手のお玉で鍋を混ぜながらフェイン様は言う。
鍋の中の薬草と魔力がゆっくりと混ざり、
美しいマーブル模様を描いている。
「…よし。鍋の中を見てご覧。
鍋の中にこれくらいの魔力が注がれれば大丈夫だ。
魔力を注ぐのをやめたら、後はじっくり煮込むだけ!簡単だろう?
僕が煮込んでる間、説明した通りにやってご覧」
ニコニコした顔をしてフェイン様は鍋の中をかき混ぜている。
確かに簡単に見えたけど、それはフェイン様がやっていたからでは?
そう思って不安になったが、
難しく考えると余計にこんがらがる。簡単に考えるんだ。
私はフェイン様が説明した魔法薬の作り方を頭の中で整理して薬草を手にする。
まずはリンダン、これをすり鉢に入れる。
そして軽く擦り潰す。
そこにイオンバームを…確かこれくらい入れていた。
そこからドロドロになるまで擦り潰す。
ゴリゴリ。ゴリゴリ。
音を鳴らしながら、すり鉢で薬草を擦り潰していく。
…うん、ドロドロになった。
そしたらこれは一旦置いておく。
次に使うのは、…なんだっけ、なんとかオイル。
これを鍋に入れ、コンロに火を付ける。弱火だ。
そこに先ほど潰した薬草を入れる。
そして…これからが本番だ。
私は右手にお玉を持ち、左手を鍋にかざす。
意識を左手に集中させ、魔力を放つ。
…少しずつ、少しずつ。蜘蛛が糸を出すように。
フェイン様がやってた時を思い出せ。
青い光をした魔力が鍋の中に入っていく。
私はそれを維持しながら右手で鍋の中をかき混ぜる。
次第に鍋の中には私の魔力が溜まっていき、
青い光と薬草が混ざり美しいマーブル模様になる。
…よし、これくらいで良いだろう。
魔力を注ぐのをやめ、眼鏡を外してふぅとため息をついた。
なんだかすごく神経を使った気がする。
「うん、上出来だ。
後は煮詰め続けていけば完成だよ。
…まだ確証はないけど、こんな色をしていたら完成だよ」
そう言ってフェイン様は自分の鍋の中を見せてきた。
そこには、美しく明るいエメラルドグリーンの魔法薬ができていた。
…というか、今ものすごく気になることを言っていたんだけど。
「あの。まだ確証はないけどって、どういう意味ですか?」
思わず私はフェイン様に問いかけた。
すると彼は「うーん」と手を顎にかけて困ったような様子を見せる。
「いやなに。魔法薬というのはね、
作り手によって色を変える時があるんだ。
君は我らは愛し子。多分で僕と同じような色になると思うんだよね」
全く意味がわからない。
説明してもらったはずなのに全くわからない。
頭の上にクエスチョンマークを飛ばす私を見て彼は笑う。
「君と僕は魔力の質が似てる、ってことさ」
「フェイン様と、私の魔力が?」
私はきょとんとしてしまった。
誰もが知る魔術師のフェイン様の魔力と私の魔力が似ている?
こんな偶然があるんだ…まあ転生物の話ではよくあるんだろう。
そうも思いながら私は鍋の中をかき混ぜ続ける。
すると、鍋の中の魔法薬は少しずつ色を変えていく。
鮮やかなエメラルドグリーンになっていく様子に
フェイン様は「もう良いだろう」と私の右手の動きを止めた。
「これで完成だよ。…うん、初めてなのにかなり良くできているね。
これなら商業ギルドも売買の許可を出してくれるだろう」
「商業ギルド?」
フェイン様の言葉に私は彼に視線を移す。
商業ギルド…!ファンタジーで良く出てくるやつだ!
「そうだよ。商業ギルドは名前の通り、商業者が加入するギルドだ。
何か商売をしようとするには、
まず商業ギルドに加入しなければならないんだよ、
違法な商売を未然に防ぐための予防としてね。
君が作った魔法薬は初めて作ったのに、
僕が作った物と同じくらい良くできている。
いや、なんなら僕のより良い品質かも…。
ふふ、売りに行ったら中々の値段がつくと思うよ?」
まるでいたずらっ子のように笑ってフェイン様は言う。
いやいや。フェイン様より良い品質なわけない。
転生物といえど、いきなり師匠よりすごいの作るとかチートすぎる。
そう思い「そんな事ないですよー」と言うと、
彼はこちらを見てニヤリと笑う。
「じゃあ確かめてみる?」
「え?」
「君の作った魔法薬が、どれだけの価値になるか」
そう言ってフェイン様は私の作った魔法薬に目線を移す。
つられて私もそれに目をやった。
そこにはフェイン様の魔法薬より少し明るい色の魔法薬が、
キラキラと輝いて湯気を立てていた。
ブクマ・星評価ありがとうございます!
リリスちゃんは天才なんです。




