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転生魔女のがんばり日誌  作者: 諫山杏心
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14話 魔法薬の授業





ある日、フェイン様の屋敷の一室。

大きな黒板と小さな机がある部屋に私達はいた。

私は椅子に座り、フェイン様は黒板の前に立ち

分厚い古い本を何冊か持ちながら言う。


「さて。君の発明を実現させることは決まった訳だけども、

君にはまず知識をつけてもらわないといけない。

今日から薬草の摘み方や簡単な薬の作り方を君に教える。いいね?」


なんてワクワクする修行内容だろう。これぞファンタジー!

そんなことを思いながら私はコクコクと頷く。


転生してから早数ヶ月。

今までやってきた中でファンタジーらしいことなんて、

天星の儀の使徒様との会話や村で火柱を発動させたことくらいだ。


「さぁ、まずは薬の作り方からだ。着いておいで」


フェイン様が私に背を向け歩き出す。

私はワクワクしながら彼に着いて行った。









「さぁ、ここだよ」


ある部屋の目の前で立ち止まり、

フェイン様はその部屋の扉を開けた。

そこは…怪しげな雰囲気の部屋だ。


陽の光は一切入らないで薄暗く、

扉の外からの光でしか部屋の中を確認できない。


フェイン様はそんな薄暗い部屋にズンズンと入っていき、

机の上のアンティークの物の前に立ち止まり、手をかざした。

するとその瞬間、ふわりとそのアンティークに優しい光が灯る。


なるほど、あれはランプだったのか。


ランプの光は優しくゆらゆらと、

炎のように揺らめきながら部屋中を照らした。

するとようやく部屋の中の様子をしっかりと見えるようになった。


部屋の壁際には本棚があり、

古そうな本がぎっしりと詰められている。

部屋の中心には、大中小それぞれのサイズの鍋が

コンロの上に設置してある。

そしてそのすぐそばには机が置いてあり、

その上にはすり鉢やビーカー、

三角フラスコ等の実験道具が所狭しと並んでいる。


「すごーい!魔法使いの部屋みたい!」


「ふふ、魔法使いの部屋ですから」


思わず声を上げた私に、フェイン様がおかしそうに笑いながら言う。

それが気にならないくらい私は興奮していて、

思わず色々と物色してしまう。


「君からしたら色々と珍しいだろう。

ああ、見るのは構わないが、勝手に触れたりしてはいけないよ。

今日から慣れるまでは、何もかも私の指示通り動いてもらう。

…自分の意思で動いて体の一部をなくす新米魔術師を、

僕はたくさん見てきたからね」


「え…?」


思わずフェイン様の方を振り向いてしまった。

すると彼は真面目な顔をして私に言う。


「脅したいわけじゃないんだけどね。

魔法薬の製作というのは、とても繊細な作業なんだ。

薬の材料は一つ一つが意思を持ち、

その声を聞きながら僕ら魔術師が魔力を注ぎ、纏める。

…昔、知識もないのに僕の教えを無視して自分で動き、

魔法薬を作ろうとした新米魔術師がいた。

その子は、材料の声を無視して調合をし、

そして“材料達の怒り“を買った。

失敗した魔法薬は全てその子の体に降りかかり、

降りかかった腕は溶けて消えてしまった。

…愛し子リリス。僕はね、君にそんな風にはなって欲しくないんだ。

わかってくれるね?」


私は全力で頷いた。

材料の声を聞くとか怒りを買うとか、

よくわからない事をたくさん言っていたが、

今はそれどころではない。


怖い。その感情でいっぱいだ。

さっきまでのワクワクは消え失せ、一気に身が引き締まる。

そうだ、楽しいだけのはずがない。

だって今から私達が作るのは薬だ。遊びじゃない。

そんな初歩的な事を忘れるくらい興奮していたのか、恥ずかしい。


私はしゅんとしてしまった。

そんな私を見て、フェイン様は明るい雰囲気で言う。


「まっ、あの時は大人数相手にした授業だったからね。

今からやるのは君と2人の授。

僕も色々と遅れを取ることはないよ」


「それに君はあの子と違って素直だし」と言いながら、

フェイン様は私にウィンクをする。


…フェイン様の言うあの子とは、

ちょっとした問題児だったのだろうか。


「さぁ早速始めようか」とフェイン様は動き出した。

机の上にある2種類の薬草を両手に持ち、私に説明する。


「今から作るのは初歩中の初歩である魔法薬。

巷で言う“低級睡眠薬“だね」


「睡眠薬…」


意外だ。王道転生物っぽくポーションとかかと思ったのに。

少し拍子抜けした様子の私にフェイン様が笑って言う。


「なんだい?ポーションとかかと思ったかい?」


「えっ!?なんでそれを!?」


そう驚くと、彼はクスリと笑って「みんなそうなんだ」と言う。


「いやなに、昔の教え子達にも多かったんだよ。

魔法薬といえばポーション!みたいなイメージがあるんだろうね。

確かにポーションは需要が高いから、

魔法薬の代表とも言える代物だ。

だが、睡眠薬というのも近年では需要が高くなってきていてね。

魔法薬の中でも結構取り引きされる類の薬だ、

覚えておいて損はないよ」


「それに材料の声も聞かなくていいし」と言いながら、

一束の薬草をすり鉢の中に入れた。

今からそれを擦り潰すらしい。


「まず、こちらのリンダン。これには鎮静作用がある。

この薬草の香りは体をすっきりとさせ、安眠に導く効果がある。

これをまず擦り潰す。…これくらいだな。

あまり擦り潰す必要はない。


そして次にこちらのイオンバーム。

これには心を軽くさせる作用のある香りで安眠に導く。

香りもすっきり爽やかだからね、お茶として飲むのも良い。

これはリンダン単体の時とは違い、しっかりと擦り潰す。

しっかり擦り潰し香りを引き立たせることで、

より効能を高めることができる」


そこまで説明しながら動いたフェイン様は、

薬草を擦り潰すことに集中し始めた。

すり鉢の中の2つの薬草は段々と潰れ形がなくなり、

遂にはドロドロの液体になり、フェイン様は手を止めた。


「…うん、これくらい擦り潰したら大丈夫だ。

これは一旦置いといて、まずはこれだ。ラーベインオイル。

ラーベインという薬草から抽出したオイルでね、

これを鍋で熱してから、先ほどの擦り潰した薬草を入れる。


ラーベインはオイルにすると香りがなくなるが、

抽出されていることで効能自体は強くなっている。

リラックス作用があってね、

低級から上級まで全ての睡眠薬に使われている“万能な奴“だ。

しかもオイルだから魔法薬の焦げ付き予防にもなる」


そう言ってフェイン様は鍋にラーベインオイルを垂らし、

鍋のコンロに火をつける。火は弱火だ。


「火は弱火にする。

オイルを入れているとはいえ、薬草は焦げ付きやすいからね。

そしてそこに擦り潰した薬草を入れる。

後は鍋でじっくり煮込んでいくんだが、ここがポイントだ。

…リリス。眼鏡は持っているね?かけてくれ」


フェイン様にそう言われ、

私は彼から貰った魔力の視える眼鏡をかけフェイン様を視る。


「よし、準備はいいね。

…ここから、良く視て覚えるんだよ」


フェイン様の空気がガラリと変わった。

ここからが本番、ということなのだろう。


ゴクリ。私は喉を鳴らす。


これが私の魔術師としての第一歩。

高鳴る胸を抑え、私はフェイン様をじっと見つめた。





ブクマ・星評価ありがとうございます!


やっと魔術師らしい展開になりましたね、

私も一安心です。笑

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