13話 やってみたい
フェイン様の屋敷に初めてきてから約1ヶ月が経った。
最初は真っ白で何もなかった私の部屋は、
フェイン様に買っていただいた家具や小物で色鮮やかになった。
特にお気に入りはフェイン様に買ってもらった日誌帳だ。
この日誌帳は鮮やかなターコイズブルーの表紙がとても美しく、
街で私が一目惚れしたのを見かねてフェイン様が買ってくれたのだ。
「この本を日誌にでもしてみたらどうだろう?
今後、色々と君の役に立つと思うよ」
私にこの本を渡しながらフェイン様が言った。
ということで、この白紙の本は晴れて
私の日誌として活躍することになったのだ。
この本には何でも書いた。
魔法薬や生活用品でこんなのがあったらいいなとかのアイデアや、
フェイン様から聞いた薬草で他のことにも使えないか等の聞きたいこと。
…日誌にしろという言葉を無視しているのは無視してくれ。
いつの間にかこの本は、日誌というよりかは
「リリスの発明ノート」になっていた。
ある日の午後。
今日の昼食はスタミナ丼だった。
フェイン様が珍しくガッツリした物が食べたいと言ってきたので、
しっかりニンニクを効かせたボリュームたっぷりの丼を作った。
食欲をそそる匂いとその見た目に、
フェイン様は目をキラキラとさせてこう言った。
「こ、これは…素晴らしい!!」
フェイン様に丼の食べ方をレクチャーすると、
彼はその通りに食べ始め…最終的にはかき込んでいた。スプーンで。
その様子に「牛丼食べてるサラリーマンみたい」と思ったのは内緒だ。
昼食を食べ終え、フェイン様とのんびりお茶をしていた時のことだった。
「そういえば。リリスはあの本は活用しているのかな?」
カップをテーブルに置きながらフェイン様が言った。
「あの本?」というと「私が買った、あの青い奴」とフェイン様が答えた。
「ああ、あの本ですか!もちろん活用してますよー。
日誌としてというか、
ほぼほぼ私のアイデア帳みたいになってますけど」
「アイデア帳?」
「はい。最初は客観的なことを書いてたんですけど、
そこからこうしたらいいんじゃないか、
ああしたらいいんじゃないかって考えが止まらなくなっちゃって」
アハハ、と私は苦笑いをした。
そんな私の言葉を聞いたフェイン様は少し真面目な顔をして、
手を顎に持っていき、何か考えている素振りを見せた。
「…リリス。もし君が嫌でなければ、
その日誌を見せてはくれないかい?」
「え?」
思いがけないフェイン様の言葉に私はキョトンとしてしまった。
私は「別に構わないですよ」と彼に言い、
自分の部屋から日誌を取ってきてそれを彼に渡した。
フェイン様は私から日誌を受け取ると、表紙をめくって読み始めた。
…黙々と読み始めて、数分が経っただろうか。
彼は私が最後に記入したページを読み終えると、
パタンと本を閉じてこちらを見た。
「リリス」
「は、はい!」
フェイン様の真剣な声にピンと背筋が伸びた。
何だろう、私何か怒られる様なこと書いたっけ?
ハラハラとしながら次の言葉を待つ私を、
フェイン様はジッと見て言った。
「…この日誌に書いてある発明達、君の手で作ってみないかい?」
「…………………へ?」
フェイン様から発せられたのは意外な言葉だった。
確か私が日誌に書いたのは、
シャンプーやリンス、石鹸などの生活用品、
この世界の食材を使った料理のレシピなどだ。
それを私が作る?
そう戸惑っている私に、フェイン様はより一層真剣な声で言う。
「リリス、いいかい。君がこの日誌に記している発想は、
人を助け、人の生活を豊かにする物ばかりなんだよ。
…つまり、君が求める“誇れる自分“に近づく近道を、
君は自分で考え出せているんだ。
そして君には魔力とスキル、そして隣に僕がいる。
スキルに関して僕は役に立たないけど、それ以外は違う。
君にはこの素晴らしいアイデア達を実現させるだけの環境がある。
違うかい?」
そこまで言うとフェイン様はニコリと微笑んだ。
…やってみたい。
私の胸は興奮で高鳴っていた。
確かに彼の言う通り、魔術師であるフェイン様は
実はスキルに関しての知識はあまりなく、
スキルに関しての修行は全くやってこなかった。
でも、それ以外に関して、彼は完璧だ。
彼と一緒なら、元の世界の…便利なアイテム達を作れる!
ドキドキと高鳴る胸を抑えきれず、私は叫ぶように言った。
「やってみたいです!!」
そう言うと、彼はにっこりと笑った。
ブクマ・星評価ありがとうございます!
リリスちゃんの快進撃が始まる…!




