10話 出発
フェイン様の家の前に立った私は呟いた。
「…………………デカすぎんだろ」
思わずそう言ってしまった私は、何も悪くないはずだ。
フェイン様が来訪した次の日になり、
私は早速フェイン様と共に馬車に乗り家を発った。
村の門には家族だけではなく、村の人達も見送りに来てくれていた。
「リリスちゃん、元気でね」「フェイン様の言う事をよく聞くんだよ」
「リリスお姉ちゃん行っちゃやだぁ〜!」「こらっわがまま言わないの!」
いやあの皆さん、なんか勘違いしていないか?
私週に2日は帰ってくるんですが?
そう思って家族の方を見た私はこの状況に納得してしまった。
…父が大号泣していたのである。
「えっお父さん!?」
思わず駆け寄り父の腕を掴んだ。
きっとみんな、父のこの姿を見て勘違いしているのだ。
「リリス…!お父さんの事、忘れないでくれよっ…!」
「いや忘れるわけなくない!?」
そんな私達のやりとりを見て、村の人達は更に涙ぐんだ。
えっちょっと待ってくれ!?
私は慌てて、7日の内2日は帰ってくることをみんなに説明した。
するとみんな「なぁーんだ」と笑った。よかった、みんなはまともだ。
父を見ると相変わらず号泣しており、見かねた母が頭をしばいていた。
パシッと気持ちのいい音が辺りに響いた。
馬車に乗り込んで1時間ほど揺られ、フェイン様の自宅に着いた。
そして冒頭に戻る。
「…………………デカすぎんだろ」
そう呟いた私の前には、それはそれは大きな屋敷がそびえ立っている。
ただただ真っ白で、門だけが黒い。
大きいがシンプルな見た目だからだろうか。
嫌味を感じさせない屋敷だ。
あんぐりとしている私にクスリと微笑み、
フェリス様が屋敷の門の前に立ち、腕を広げて言う。
「ようこそ、我が屋敷へ。愛し子のお気に召すといいんだけど」
そう言ったフェイン様は、屋敷の門に手をかざす。
すると錠がガチャリと鳴り、黒い門がひとりでに動き出した。
これが魔法!?私は興奮してフェイン様に問いかけた。
「わっ、勝手に開くんですか?」
「うん。僕の魔力を流し込むと勝手に開くように造られているんだ。
つまり、僕の魔力が鍵、ってことだね」
ウィンクをして言うフェイン様はどこか得意げだ。
美形だからだろうか、こちらも全く嫌味がない。
そのまま屋敷の扉も同じ様に開け、私達は屋敷の中へ入った。
屋敷は外だけではなく中も真っ白で、無駄な物は一切置いていなかった。
「さぁ、我が屋敷を案内するよ。ついておいで」
そう言いながらフェイン様が歩き出したので、私は素直に着いて行く。
そして彼は広い敷地内の様々な部屋、施設を紹介してくれた。
彼の屋敷を一言で言えば…素晴らしかった。
色々な植物が植えられている植物園、様々な生き物が住んでいる庭園、
澄んだ水が流れている小川、そして湖…。
これは、入場料がいるタイプの公園では?
そう錯覚してしまうほどに楽しい場所なのである。
フェイン様が言うには、新鮮な魔法薬の材料を集めようと思って建てたら、
自然とこうなってしまったらしい。なるほど。
一通りの案内が終わり、最後にと、
フェイン様は屋敷の中の一部屋の前で止まった。
「ここが君の部屋だ、開けてご覧」
そう言って私が扉を開けやすいよう、フェイン様は扉の前から退いた。
私はそっとドアのぶに手をかけ、扉と開けた。
「わぁ…!」
その部屋も真っ白で、そして広かった。
広さは20畳くらいあるんじゃないか?と思うくらい広く、
大きなベッド、机と椅子、本棚。壁には全身鏡もかかっている。
…よく見れば部屋の中にもう一つ扉があるぞ。
そう思い恐る恐る中を見ると、なんとお風呂場だ。なんて豪華な。
「広いお部屋!こんなに素敵なお部屋、いいんですか?」
「もちろん。家具とかはまだ全然ないけど、これから増やしていけばいいだろう。
愛し子の好きなものならなんでも買ってあげるよ」
そう言って、フェイン様はパチリとウィンクをした。
くぅ〜絶対モテるよこの人。
そう思っていたら、フェイン様はゴホンと咳払いをした。
「…さて、リリス。屋敷内も紹介し終えたし、早速修行の説明に移ろうか」
「!」
きた、修行!
フェイン様の言葉に、私の背筋がピンと伸びた。
その様子を見たフェイン様は、ふっと微笑む。
「なに、そんなに身構えるほどのことではないよ。
君には魔力のコントロールができる様になるまで…料理を作ってもらおうと思ってね」
「りょう、り?」
私を安心させるかのように優しく説明し出したフェイン様からでた修行内容は、料理。
料理?料理がどう魔力のコントロールにつながるのだろう?
頭の上に‘“?“が浮かび上がる私に、フェイン様は説明を続けた。
「リリス。君はもうすでに、魔力を流しながら料理はできているんだ。
君の家で食事をした時、料理から君の魔力の味がしたからね。けど、目指すのはそれじゃない。
意識的に魔力をたっぷり流し込んだ料理と、意識的に全く魔力が込もっていない料理。
この2品を完璧に作ることが当面の目標だ。
その後は魔力がちょっとだけ入った料理、魔力がたくさん入った料理。
そんな感じに調整ができるようにしてもらう。
この修行は魔法だけではなく、魔法薬制作の際にも役立つはずだよ。
魔力の量が重要な薬とかも結構あるからね。
…さて、ここまでの説明で何か分からなかったことはあるかい?」
うん、実にわかりやすい説明だ。
そして料理という日常の行動が修行になるのは実に効率がいい。
特に聞くこともない私は「特にないです」と彼に答える。
「うん、理解が早くて助かるよ。さすが愛し子だ」
そう言ってフェイン様は私の頭を撫でる。
…なんだか相当甘やかされている気がするんですが。
「さぁ、今日はもう疲れたろう。修行は明日の朝からだ。
明日の朝起こしにくるから、それまでゆっくりとお休み」
そう言って彼は私の頭にキスを落とし、部屋から出て行った。
キ、キスされた!と私は1人赤くなる。
まぁ彼にとっては挨拶の様な物だろう、うん。冷静になれ。
そう思って荷物を机に置き、ベットに横になる。
ベッドは家とは違ってふかふかで、まるで雲の上にいるかのようだ。
…あ、これダメだ、寝ちゃう。
朝からドタバタしていたので疲れていたのだろう。
目を閉じた私はすぐに眠りの底へと落ちていった。
星評価・ブックマークありがとうございます!
ついに師匠の家に着きましたね。
これから段々と魔術師らしくなる…はず…!




