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転生魔女のがんばり日誌  作者: 諫山杏心
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1話 呼ばれたい




薄暗い地下に1人の男がいた。

その地下室の床には複雑な魔法陣が書いてあり、男はその魔法陣の中央に立っている。

男は頭から足のつま先まで白く、薄暗いはずの部屋でほんのりと光って見えるほどだ。


「…世界の理を司る者よ」


ぽつり、男が呟く。


「月の歌、太陽の剣。世界の均衡を守りし陰陽」


魔法陣がじわりと光り出す。光が漏れ出す。男の足元から風が噴き出す。

男の持つ長い杖からは様々な色の妖精が溢れていた。

それはまるで御伽話ファンタジーの様な光景。


「…愚かなる民の願いを聞きたもうれ」


まるで泣き出しそうな顔で男が呟いた瞬間、部屋の中が光に満ちた。

すぐ前ですら見えないほどの光の中、男はゆっくりと目を閉じて願った。


ーーー愛し子をどうか、僕の元へ。







「…………終わんないよぉ」


とあるビルの中のとあるオフィスにて。

日付が変わって数時間が経つというのに、私、崎山葵サキヤマアオイは未だに仕事をしていた。

そう、この職場ははっきり言ってブラック企業というやつである。


ーーーダメだ、頭回らない。


昼食を抜き、朝から酷使している頭は限界に達していた。

今日はもう帰ろう、と諦めた私はため息を吐いてノートパソコンを閉じた。

背もたれに背を預け目を閉じると、今日の出来事が頭をよぎる。


「今日も、散々だったな」


ぽつり、呟くとじわりと涙が出てきた。

いつも機嫌の悪い部長が今日は自分に当たってきたのだ。

…しかも自分のミスの癖に、私のせいにしてきて。

周りの仲間達のフォローがなければ、私は会社を飛び出していただろう。

思い出したら涙も出てきたが、悲しみより怒りが出てきた。


「なんなのあの若ハゲ野郎、かっこよくもないし仕事もできないくせして若い子に色目使ってるし自分のミスは人のせいにするし。本当に最悪なんだけど。本社に言いつけてやろうか?マジで痛い目見させないとスッキリしないわぁ〜。大体さぁ…」


ブツクサと、不満が止まらない口を無視しながら帰る準備を進める。

不満を口にすると余計に腹が立ってきた。…明日休んだろか?

そんな社会人としてはアレな考えを持ってしまいながらも会社を出て徒歩で帰路に着く。

悲しいかな、会社から自宅まで徒歩10分で着いてしまう。


不審者と思われないよう心の中で不満を呟き続けると、すぐに家に着いた。


「ただいまー」


靴を脱ぎ、玄関にあがりながら言う。

一人暮らしなので返事をする者はいない。

寂しくもあるが、オタク趣味を持つ私にとってはこちらの方が都合が良い。


「さてさて、今日の更新はっと…。おっ、されてる!」


スーツを脱ぎ、部屋着である大きめのTシャツに着替えた私は、

携帯でネット小説のサイトを開いていた。

そこには私のお気に入りである小説の横に「New」の文字が付いている。

…つまり!新しい話が更新されているのである!


「あ〜1週間が長かったよぉ〜!」


思わず携帯をぎゅっと握りしめ、笑みを浮かべた。

ブラック企業に勤める最近の私の癒しがこの小説なのである。

“転生少女、チート魔女になる“

…とあるサイトにて連日ランキング1位のネット小説だ。


タイトルで分かる通り、魔法の世界に転生した少女が最強の魔女になり、

色々な問題を解決していき、仲間に出会い、恋に落ちる。…最近流行りの転生物だ。


ありきたりと言われればありきたりだが、ブラックな職場に疲れ切った私にとっては衝撃だった。

この主人公はとても真っ直ぐで正直で純粋で、とてもキラキラして見えたのである。

そしてそんな主人公に惹かれていく仲間達。…ひどく羨ましく見えた。


「私も…転生したいなぁ」


馬鹿げていると知りながらも、ポツリと呟く。

この小説に出会ってから抱き始めた感情だった。


無理に決まってるよね、と自嘲するように微笑んでベッドに横になる。

転生は無理でも、せめてかわいらしい女友達や優しい男友達、素敵な恋人は欲しい。

…なんだか悲しい気持ちになってきた。早く寝てしまおう。



ーーーもういいや、明日は当日欠勤しちゃおう。



明日は休むことを決意して目を閉じた。

せめて夢の中では楽しい出来事がありますように、と願いながら。




遂に始めました、転生者!

執筆初心者ですが頑張ります。


のんびりお付き合いください〜。

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