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第64話 大国の秘宝④

 それから三日後。

 ヴォルフガング家所有の魔術四輪に荷物を乗せた後、見送りに来た妹へウォルターが留守を頼んでいた。


「ではメリア。ヴォルフガング家を頼むぞ」


「お任せくださいお兄様。完璧に責務をこなして見せますわ」


 そう上品にドレスの裾を持ち上げ、臨時当主として成し遂げるという姿勢を見せながら、ヒノワ皇国へと向かうバスを見送っていた。


「メリアも野心家故、正式な当主になりたいと思っておったからな。経験を積ませる良い機会であろう」


「え、ウォルターはそれでいいのかよ」


「元より父上が急逝し、臨時で任されておった面もあるからな。差別思想さえ無ければメリアのほうが適任故、いずれは任せて我は商いでもしようかな、とな」


「それ、私も手伝いたい。お父さんの仕事いっぱい見てきたし、儲かること好きだし」


「儲けというよりは、人助けの面が強いぞ。バサナとの戦争で出た難民を放っておくわけにもいかぬしな」


「凄く、いいと思う」


 目をキラキラと輝かせていたミライを横目に、エリーゼが恥ずかしそうに顔を赤らめながら口を開いた。


「……あの、本当にありがとうございます。生き残った村のみんなを、助けてくれて」


「困ったときはお互い様。当然のことだ」


「その言葉が当然のように出るから凄いんだよ」


 ヒロの微笑み混じりの言葉に、サリエラとバスの運転手が頷いていた。

 そして幼馴染の膝の上で寝ていたマオも、ワゥと相槌を打つように一鳴きしていた。


「てか鎖国中なんだろ、どうやって入国するんだよ。ウォルターのコネで何とかする感じ?」


「ヒノワ皇国第六皇子、ウラカワ・モリモリが迎えを出してくれる手筈となっている。かつてヴォルフガング家と繋がりがあった故、今回助力してくださるとのことだ」


「第六って、どんだけ後継者いるんだよ!?」


「先代皇帝は、十二もの子供をこさえたらしい」


「多すぎだろぉ!?」


「うち後継者争いに参加するのは五名だ」


「随分と減ったな!? あいや、男女比で言ったら半々くらいなのか?」


「なにを言っておる。女皇帝もあり得るだろう、今回参加しないのは元より興味がないか、病弱かといった理由を持つ者だけだ」


「な、なるほどぉ……」


 それから二日かけ、目的地の海岸へと到着した。

 しかしそこに広がっていたのは、一面の砂浜と青い海だけだった。


「居ないみたいだけど」


「早すぎたか」


 目をよく凝らすと水平線の先に小さな陸地が見えるため、そこがヒノワ皇国なのだろうとヒロは考えていた。

 そのため、件のモリモリという人が船でこちらに来るにしても、船の影は見えないためかなり時間がかかると想定していた。


「どうするよ。このまま車の中で待つのも運転手さんに悪いし」


「ならワタシに良い考えがある!」


「良い考え?」


「せっかくの海だーー!! 遊ぶぞー!!」


 いつの間に着替えたのか、サリエラとエリーゼ、そしてミライは水着に着替えて魔道四輪から飛び出した。

 透き通ったハリのある肌が日光に反射し、無邪気な性格も相まってとても眩しく見えていた。


「いつの間に用意してたんだよ! え、俺らの水着は!?」


「野郎のは無いぞ」


「クッソ辛辣!!」


 サリエラが真顔で答えた後、エリーゼに呼ばれるがまま海岸の方へと走っていってしまった。


「まあ良い。我は泳げぬ」


「俺もカナヅチだしな……あ、そうだ。魚とか釣ろうかな」


「魚なぞ釣ってどうする」


「食べるんだよ。バサナで調理法覚えたし」


「ほう? であらば味見は任せてもらおうか」


「当然。マオも含めて水着ない組の特権だ」


「ワゥ!」


 こうして二人と一匹が即席の釣竿を作って海釣りを始めようとした瞬間。


「キシェエエェエエーーーッッ!!!!」


 水が爆発したような音と超巨大なモンスターの咆哮が空気を震撼させた。


「何あれ嘘でしょ、何あれーー!?」


「たしか緊急クエストにあった! 大海の新たなヌシ、太陽鮭タイヨウジャケ……!!」


「なんてタイミングの悪い時に現れおったのだぁ!?」


 太陽のように白く輝く大魚が姿を現した途端、晴天にも関わらず海水の豪雨が降り注いだ。

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