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第28話 共和国軍の来襲④

 魔術四輪は運転手の魔力を燃料とする。

 また魔力量に比例してスピードも変化するため、稀代の天才魔術師たるサリエラが運転すれば、電車をも凌駕する速度が出てしまうのだ。

 そのような兵器で転生者2名を轢き、そしてトシキが反射的に出した亜空間に飲み込まれ、車体がボロボロとなってゆき最後は風化してしまった。


「おいジーク! ブレーキが効かんぞ、これ壊れているではないか!!」

「いやそれ多分アクセル! てか何で乗ってんの!!」

「魔術四輪を運転するのは初めてだったからな。だから雑魚はミライに丸投げしてきた!!」

「ああぁ、もうウォルターに借りられないよ……」


 残ったシートに座りながら、キラキラとした笑顔でサリエラが答える。

 その側でジークがうなだれ、装備が強制解除されて血塗れになったヒロが身体を起こしながら怒りを向ける。


「……テメェなにか俺に言うことあるよな?」

「ワタシは悪くない! ブレーキが効かないのが悪いのだ!!」

「そもそも無免許運転だろうがクソガキ!!」

「免許取るときに乗れるし覚えるでしょクソガキ!!」


 顔全体に青筋を立てた2人が、仮にも王国トップクラスの頭脳を持つ少女へ怒涛のツッコミを浴びせた。


「……って、こんなことしている場合じゃなかった!」


 ジークの回復魔術で応急処置を施されたヒロは、同じく轢かれた敵の方へと視線を向けようとした。

 しかし、その姿は何処にもなく。

 代わりに、成人男性の膝あたりまでしかない小人が、戦場でスタコラと走り回っていた。


「なんだこれ、ドワーフ!?」

「いや違う、アリの獣人ニュートだ!」

「皆、あっち、見て!」


 息を切らせながら追ってきたミライが指さす方向を見ると、小人がトシキとサラ、そしてアウレオラの遺体を乗せた台車を担ぎ、颯爽と逃げ去っていた。


「ぜんぶ奪われた、魔術も当たらない!」

「ならばワタシが! 第三位陽魔術アーク・ソレーラ!!」


 宮廷魔術師による光弾の雨に盗人を追わせるが、小人に当たる直前で軌道がグネリと変わり、そのまま水平線へと消えていった。


「くっ、魔術避けの類が施されているな……サンプルに1つ欲しい!」

「ふざけないでよクソガキ」


 真剣な面持ちでふざけた物言いをした上司に、ミライが酷い罵倒を浴びせる。

 その様子を知ってか知らずか、ガラガラという台車の音と共に、ギリギリ勝ち逃げを決めたトシキが王国軍へ叫ぶ。


ゲーム脳(ヒロ)コミュ障(ミライ)クソガキ(サリエラ)正義マン(ジーク)!! この借りは数万倍にしてゲボォ!!」

「トシキ様、もう喋るなリ! このままだと死んじゃうリ!!」


 特徴的な語尾のアリ獣人が、体力の限界で吐血した転生者を心配する。


「今日はこれくらいにしたるわーー!!」

「覚えてやがれーー!!」


 そして捨て台詞を置き土産に、共和国軍の転生者と獣人は去っていった。


「……奪われちゃった」

「むぅ。あんなデカい遺体は貴重な研究材料なのに」

「まあそうだね。共和国には、命の尽きた生物をマナ化させない方法が確立されているし」

「そう、マナ化しない方法を……へ?」


 自分の研究テーマを敵国に先取りされていたことを知り、サリエラが珍しく素っ頓狂な声を上げる。


「僕がどうやって遺体から臓器を抜き出して閃光爆弾作ったと思ってるの。遠征のとき、獣人の捕虜から技術を吐き出させて覚えたんだ」

「覚えた方法が野蛮!?」

「だからほら。アウレオラの遺体から重要な遺物ドロップアイテムだけ抜き出して、道具袋に詰めてあるから大丈夫」

「さ、流石ジーク。抜け目のない奴だ」


 遺物は高純度のマナの塊で、魔術の触媒や便利なアイテムの原料となる貴重な代物だ。

 例えばジークの持つ何でも入れられる道具袋も、空間に関する能力を持った転生者やモンスターの遺物から作られている。

 そのため、これだけでも確保できたのは非常に大きかった。


「そういやヒロの脚は大丈夫?」

「轢かれたせいで、まだ折れてるよ。でも老化は無くなってたな、どうやら距離が離れれば治るみたい」


 まだ息のあった王国の老兵たちも、すっかり若々しい姿を取り戻していたようだ。


「とはいえ、こりゃ本格的に戦争になりそうだね……」

「ああ。それに、バサナには最凶の転生者、キョ」

「わ、わー! 私は魔力が切れて疲れたなー!!」

「む、どうしたミライ。そんな大声を出すなんて珍しい」


 ヒロの因縁の相手の名を出す前に、ミライがわざとらしく大声を上げて駄々をこね始めた。


「疲れたなー! 今日はヒロの料理もぐもぐして、ベッドにごろんしたいなー!!」

「気でも触れたか!?」

「……たしかに色々と折れてるし、俺もさっさと教会に行きたいかな」

「あのスピードで轢かれたしね。僕も、色々と戻ってやりたいことあるし」

「むぅ。乗り物も壊してしまったし、ワタシが運ぶしかないか」


 戦後処理を無事だった王国兵に任せ、ヒロ達一行は巨大化した杖に乗って城下町へと飛翔した。

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