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第21話 伝説の煌龍②

「ワァグナーって。もしかして、エリーゼとクルトのお兄さん?」

「おっ、その言い分だと君が噂のヒロか。2人が随分と世話になったね」

「いえいえ、こっちはエリーゼに命を助けてもらってるので!」


 徹夜明けで疲れきった頭が一気に目覚め、ヒロは頬を火照らせながら、本物の勇者に羨望の眼差しを向ける。


「タメでいいよ。4つくらいしか、歳違わないだろうし」

「いやいやいや! だって勇者ですよ、俺の夢ですし!!」

「なら尚更お願い。僕、堅苦しいのは苦手だからさ」

「あ、なら……って言ってる場合じゃなかった、エリーゼたちが攫われたんだ、すぐ助けないと!」

「まあ待って。勇者の妹はそんなにヤワじゃない、いまは他に優先すべきことがあるでしょ」

「優先?」

「そうだな。まずは崩れた家屋から国民を助けなければ」

「それもそうだけど、まず僕たちがやるべきことは他にある」


 ジークがメガネ越しに目配せをし、ヒロが答える。


「……敵戦力や拠点の調査、それに合わせた部隊の編成」

「そう。ただ、生贄として国民が連れ去られた以上、悠長にこれら全てをやる時間が無い、ってのが辛いけどね」

「ならさっさと……あれ」


 すぐさまヒロが出発しようとするが、足がもつれて前のめりに倒れ、気絶してしまった。

 ウォルターから事情を説明されたジークは、アゴに手を当て少し考え込む。


「なるほど、徹夜続きで疲労が溜まりすぎたらしいね。ならここは僕に任せてほしい……と言いたいところだけど」


 ふぅ、と息を吐いて手を下ろし、ヒロの目を見て続ける。


「ごめん、僕だけではアウレオラを倒せない。そして軍を引き連れても光線でやられて終わりだ、いたずらに死人を出すことになる」


 そのまま頭を下げる。


「だからお願い。僕に協力してほしい」

「言われなくても。ただ……少し寝不足が」

「それは大丈夫。ということで」


 ヒロに笑顔を返すと、ウォルターの方へ向き直す。


「ウォルター、魔術四輪は出せる?」

「なっ、また壊されたら堪らん。絶対貸さんぞ!?」

「ヒロ達を中で寝かせながら、奴の根城まで移動したい。そうすれば、少しは脳も回復するでしょ」

「ぐ、ぐぬぬ……」


 ウォルターは歯噛みするが、周囲を見渡して仕方ないと腹を括り、手伝いに指示を出した。


「わかった、その代わり壊したら弁償してもらうからな!!」

「ありがと、ジャパンモデルでお願い!」

「車種まで指定するんじゃない!!」


 結局ジャパンモデルの魔術四輪が用意されたため、ジークは後部座席に寝不足の3人を詰め込んで城下町を出立した。


〜〜〜〜〜〜


「最高の乗り心地だね。さすがはジャパンモデル!」


 ガソリンの代わりに魔力で動くバギーのような自動車は、整備されていない道でも力強く走れるよう設計されている。

 ただしコストが非常に高いため、一部貴族や豪商しか保有できない。

 そのため自動車の概念があるアルテンシアでの主な移動手段は、徒歩か馬車が主流となっているのだ。


「あぜ道、沼地でも揺れが殆どない。馬力も魔術炉もトップクラスだ」


 ジークが日本車を参考に作られた魔導四輪に気分を良くし、鼻歌を歌いながら煌龍の痕跡を追ってゆく。


「ウオオォォォォー……」

「狼の遠吠え……ここら辺に居たっけかな」


 プロキアの地理を頭に叩き込んでいる勇者が首を傾げる。


「まあいい。もしこれがモンスターだったら危険だけど、今はそうこう言っている場合じゃ無い」


 そう、妹を連れ去った龍の痕跡を辿りながら呟く。


「アウレオラ。プロキアの守護龍と呼ばれているのだろうけど、関係ない」


 そのまま瞳に憎悪を宿しながら、勇者としての決意を改める。


「モンスターは、僕が全て斬り伏せる」


 そう、瞳の奥に炎を灯し直した。

 ……のだが。


「真央、何処にいるの……」

「灰の村出身の勇者が居るならば観光地化して稼ぐべきだし御土産ビジネスもできるしそれをしないのは」

「スピー、スピー! ギリギリギリギリ……」

「いや、寝言酷すぎでしょ……」


 3バカ、とくにミライの寝言に意識を削がれながら、龍と生贄が残した痕跡を探すことになってしまった。


〜〜〜〜〜〜


 煌龍の根城に着いたのは、出発してから4時間後のことだった。


「着いたよ。ほら、起きて」

「ん、おはよ……」

「むっ……」

「天才を無理やり起こすんじゃない……」


 思い切り爆睡していた3人は、寝起きで頭が回っていないためか少し不機嫌そうな声をあげる。

 目をこすり辺りを見渡すと、そこは赤茶色の岩肌が露出する断崖地帯だった。

 だが草木がチラホラと生えており、完全な不毛地帯ではないことがうかがえる。

 そんな中で、灰色の建材を用いた巨大な神殿がドンと構えていた。


「神殿……?」

「こんな建物は無かったはずだけど。しかも、全ての建材が木で出来ている」

「む、この木は『スタークウォルド』だな。木材もそうだ。この辺には自生していないはずだぞ」


 スタークウォルドは火山地帯に生息する木で、噴火に耐えながら火山灰などに含まれる栄養を吸収して育つため、圧倒的な耐熱性、耐久性を誇る。

 だが、いま居る場所は断崖地帯で、サリエラによると生育環境が殆ど合わないらしい。


「ということは……」

「木々に精通した者が、アウレオラに協力している可能性が高い」

「つまり敵は1匹ではない、か」


 より一層警戒しないと、とジークが呟く。


「……見て、コレ」

「ちょっと、勝手に入ったら危ないよ」


 だが一足先にミライが神殿に近寄っていたらしく、それに追従する形でジーク達も中へと入る。

 そして、ミライが指差した柱を見た3人は、思わず驚愕の表情を見せる。


「えっ……?」

「ふむ、これは」

「うん。どうして『ヒロの苗字』が彫られているの?」


 実際には『点字』のような形で彫られていたが、その意味は翻訳指輪のおかげで理解できた。

 ナカジマクン、ナカジマクン、ナカジマクン。

 狂ったように、そのような意味を持った穴が柱に刻まれていたのだ。


「まさか」

「待って、正面からは危険すぎる!」


 気がついたときには既に駆け出していた。


(もし、あの人が転生していたなら。真央の手掛かりを知っているかもしれない)


 ヒロには覚えがあった。中学のときに勉強を見てくれた、全盲の先生だった。

 特別、尋を可愛がり。そして尋もまた信頼し、よく料理をご馳走し。

 そして受験直前に、トラック事故で亡くなり、合格の報告が出来なかった人だった。


「……貴方も転生していたんですね」


 祭壇にて煌龍の前で祈りを捧げる男に、ヒロが告げる。

 その声を聞き、身体をピクリと震わせた後、目に涙を浮かべながら男が振り向いた。


「――まさか、中嶋君か?」

「お久しぶりです。植草先生」


 その声には、悲しみと懐かしさが混ざっていた。

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