表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

133/173

第131話 生命の再生①

 一面の草原を抉った流星群の跡に、血色の獄炎が燃え盛る。


「グォ……ォオオオオオオッッ!!!!!!」


 中心にて立つ狂戦士が、悪魔のような咆哮をあげ。

 噴火と見まごうほど高く跳躍し、宙におわす日帝グレイへと殴りかかった。


(……いま、わたしの役目は尋くんのサポート。攻めたら足手纏いになる)


 マオは、互いに空を蹴りながら拳を打ち合う姿を見ることしかできない。

 今のヒロは幼馴染以外の全てが仇敵に見える。極限まで引き出された憎悪が、叛逆装備ブラッドフォームの力となっているためだ。


(ほんとは絆ノ装備(ブルームフォーム)で戦ってほしいけど、おそらく火力不足でジリ貧になっちゃう)


 そして、敵の親玉が手にするスマートフォンの力が途轍もないことを理解していた。


叛逆装備ブラッドフォームはデメリットが大きい。もし暴走したり魔力切れが近くなったら、必ずわたしが止めるから)


 だからこそ祈るしかない。最愛の幼馴染が勝つ姿を。


権能アプリケイト環境設定コンフィグ


「なん、だ……!?」


 帝王がスマートフォンから浮き出る画面に指を走らせると、周囲が白く輝き出す。

 すると今度は絶対零度の氷河地帯へと変化し、ヒロの身体を凍てつかせ始め、墜落させた。


「この程度で、止まるわけには」


権能アプリケイト魂魄抽印フォトシャッター


「っ、危なァ!?」


 何とか転がり、聖遺物サルベージアイテムのレンズから逃れる。

 だが先ほどまで背を付けていた流氷は、まるで切り抜かれたかのように抉り取られ、消滅た。

 しかしヒロの心に増した感情は、恐怖ではなく、憎悪。


「まだだ……お前を殺すまで、俺は止まらない!」


 赤黒いドロドロとした炎が装備を燃やし、蒸気を発生させてゆく。


(速い!)


 放たれた跳躍は、マオも眼で追うのがやっとな程に速く。


「ブッ壊れろォオオ!!」


 その状態からマグマのような魔力を纏わせ肥大化させた拳を、グレイ目掛けて全力で撃ち放ったが。


権能アプリケイト圧縮防壁ウイルスフィルター


「ッ、硬ェなァ!?」


 スマートフォンの画面を何層も重ねたような盾で防がれ。


天体観測マッピング


「二度も通じ……がぁあアッ!!」


 返しの流星をモロに喰らい、凍結の大地へと打ち付けられてしまった。


「ワォオン!!」


 白い狼が救援しようと駆け寄る。

 だが狂戦士は、落とされた海を蒸発させんばかりの勢いでジャンプし、世界へ命令して作った塩の足場へと着地し、天上の帝王を睨みつけた。


「シノハラ……お前は、必ず、殺す!!」


「狂人が。パディスの地を踏み汚すな!!」


 叛逆装備ブラッドフォームの更に火力が上がり、蒸気で姿が覆われるほどに熱を帯びる。

 たとえ狂っていようと、憎悪の力は底を知らない。

 煙の中で二つ小さく光ると同時に、グレイは間合いを侵略されていた。


「なに……!?」


「焼け、爛れろッ!!」


「ぐぅうう!?」


 ついにヒロの蹴りが帝王の盾を貫き、その身体を後方へと吹き飛ばす。

 グレイは数秒ジェット機のように宙を飛んだ後、オーロラの描かれた闇夜へ激突した。

 そして空に、ビシビシとヒビが入ってゆく。


「焦げろ。爆ぜろ。潰れろ……!!」


「っ、よくも……よくも、傷を付けたな……!」


 だがそんなことは気にも留めず、ヒロは追撃せんと拳に煉獄を宿し、詰め寄る。

 まともに防御できなかったため腹部に甚大なダメージを負ったグレイは避けようとするが、見上げたときには振りかぶった拳が目の前まで来ていた。

 マオも勝利を確信する。ヒロも咆哮と共に拳を打ち抜こうとする。


「……なんだ?」


(まずっ、魔力が……!)


 だが憎悪のエネルギーは無限でも、ヒロの魔力は有限だ。

 エネルギーを欲した呪いの装備は、今度は装着者の生命力を求め始めていた。


「ははっ、動きも力も脆弱!」


 ヒロの身体は細く弱くなり、攻撃をかわして身体を修復させる余裕を与えてしまった。

 視界も段々と正常に、否、段々とぼやけ出してしまっていた。


「俺は、シノハラを、殺さなきゃ、いけないのに……!」


 無我夢中で拳を振るうも、当たらない。


「フンッ!!」


「ぅあっ……」


 返しで飛んできた頭突きで兜が割れ、後ろへ五回転。


(尋くんっ!)


 ボロボロどころか生命の危機すら迫っていた幼馴染を助けようと、マオは前に躍り出て魔力を分け与えようとするが。


「……俺は、シノハラを、倒す……」


(嘘……装備、解除されないの!?)


 尋は、大切な少女を判別できなくなっていた。

 色や輪郭わからなくなった視界を辿り、ゆっくり、ゆっくりと一歩を進めようとしたとき。


(代われ)


「っ、お前……!?」


 キョウヤがヒロの眼前に現れ、先ほどまで喚いていた耳障りな雑音とは違う言葉を言い放つ。


(美恵子を守った借りを返すだけだ。代わっとけ)


「っ……それしか、無いか……!」


 血色の竜巻がヒロの身体を纏い、装備を、体力を回復させてゆく。

 佇まいが野生味を帯び、より凶暴性を発露させていた。


「よォ。第二ラウンドだ」


「人格……否、遺物ドロップアイテムによる身体の操作権が入れ替わったか」


「アイツの精神は休ませてる。倒すのはオレじゃねェといけねェしな」


「ウォオン、ワォン!?(尋くんは無事ってことでいいんだよね!?)」


「なに言ってっかわかんねェ、よ――?」


 白い狼の鳴き声をあしらっていたとき。

 少年の頭蓋に、金貨ほどの穴が空いてしまった。

 飛び散る脳漿のうしょう。倒れゆく身体。

 そして、害獣を見るかのような視線を向けるグレイ。


「我が妻の傑作を傷つけた罰。死を持って贖え」


 ヒビ割れた箇所から浮き出た銃口から、白く細い煙が吹いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ