第127話 最強の装備②
プロキアが敵国の侵攻を食い止めた頃。
パディス宮殿内で警告が鳴り響き、ヒロ達は防衛軍に追われ続けていた。
「流石に数が多すぎる!」
「倒しても倒してもキリがないぞ!?」
ミエコという荷物を守りながら、ヒロとサリエラは魔術で銃兵たちを無力化。
そしてシロウは刀を、マオは爪を振るい敵を狩り続ける。
だが敵国の中心だけあってか警備も厳重で、各地に仕掛けられたトラップ、そして多様な聖遺物に苦しめられていた。
「それに、さっきもこの廊下来た気がする!」
「確かに、目印に付けた傷がそっくりそのままだ!」
「恐らくは、敵城に備え付けられた罠。幻術や地形変化の類だろう」
「なら、それをぶっ壊せば」
「そもそも場所がわからん、最奥に備え付けられてたら一生ここで走り往生だ!」
「縁起でもないじゃんか!?」
「それに、拙たちの動きが読まれている可能性も高い。練度の差が無ければ十度は全滅していただろう」
「貴方こそ物騒な!?」
「み、みみみぃはここで終わりだぁ、きょーやが居ないならみぃは死ぬしかないんだぁ、だすけてぎょーやぁ」
「おいマジで最悪な言葉をやめろ!」
ネガティブな言葉の嵐にヒロは否定を返す。
だが頭を抱えて顔を白くするゴスロリ女を見て、なにか閃いた様子で問いかけた。
「ん、いや待てよ。入り口で罠にかかったとき、ミエコの能力は把握して無かったよな」
「気安く名前呼ばないで!」
「あ、ごめん。ハサマさん」
「苗字呼び、嫌!」
「めんっどくせえなコイツ!?」
ワガママ娘に手を焼きながらも、続ける。
「ともかく。現実攻略本だっけか、それを参考に俺たちを迎え撃っているのだとすれば」
「ミエコ・ハサマはイレギュラーな存在、ということか!」
「フルネーム呼び、やー」
「おいヒロ、コイツをしばく許可をくれ」
「出すなら、とっくにしばいてるよ」
魔術杖をバットの要領で素振りする宮廷魔術師を止め、思い返す。
鹵獲した敵兵の記憶を探ったとき、様々な情報を入れ込み事情を正確に予測する聖遺物の存在を知った。
パディス軍は、これを基に行動している。
そして、ミエコの情報は現実攻略本に入力されていない。
「頼む、一緒に戦ってくれ!」
すぐさま少年は背後の少女に向き直り、頭を下げたが。
「きょーやじゃないから、や!」
「……いいか、よく聞け」
「ひぃ!?」
敵陣のド真ん中で勝手を言い続ける子供に青筋を立て、額を近付け圧をかける。
「俺が死んだらシノハラも死ぬ、お前悲しい。オーケー?」
「お、おーけー、うん!」
頭に付いた雑草の臭いを振り撒きながら大きく頷き、ミエコは壁と床に手を付けた。
黒鋼で造られた堅牢な壁は、飛び交う銃弾も迫り来る軍兵も全て遮断できる。
さらに期待するならば、宮殿に備えられた罠の強制解除まで望めるのだ。
「くっつけー!」
精一杯、ゴスロリの少女は叫ぶが。
底の低い彼女の魔力は入り口で底をつきかけており、ただ大声を上げた痛い人になってしまった。
「えっ」
「脆弱」
「ワタシ達と比べるとな」
「ほらぁ! みぃは弱いんだぞぉ!?」
ノーマークでも良い理由を実感したヒロ達に、ミエコは涙目で反抗しようとしたとき。
壁の一部が消え、床が勇者達の足元を反射し出した。
「あ」
消えた壁の奥に目をやると、二階へと続く階段が見えた。
「なるほど。聖遺物の能力は『鏡』か」
「それも、映すものを自在に定められる」
「……ど、どーだ! 凄いだろぉ!!」
「うん、凄いね〜」
突然自信を取り戻したミエコが貧相な胸を張り、ヒロは生温かい目でパチパチと拍手を送る。
「ともかく先へ進むぞ!」
「そうだね。マオ、もう良さそうだから行くよ!」
「ワァウ!!」
敵兵を抑えていた白い狼が高く飛び退き、幼馴染の隣へ降り立つ。
すぐさま帝王の下へ向かおうとするが、それを許すパディス軍ではない。
「絶対に食い止めろ!」
「行かせるものか!!」
自らの手で選び続けた指導者が取られるかもしれない。
その恐怖が士気を格段に上げ、侵入者へと一気に迫る。
「だが、遅い」
「ぐぁっ!?」
階段に足をかけようとしたところで、シロウは踵を返して殿を務めんと日本刀を中段に構えた。
「何してるんですか、はやく」
「ここは任せて先に行くがいい」
「それ死亡フラグですよ!?」
「死程度を気にしているならば問題ない。早く行け!」
でも、と止めようとした。
だが熟練した侍の気迫と自信には、何か根拠がある。
(……恐らく、見せる気のない能力)
真意を汲み取ったヒロは、すぐさま階段へと足を掛け直した。
「どうか、ご無事で」
「小僧こそ自分の心配をしておけ」
そう、見届けた次の瞬間。
パディス軍の猛撃に堪え兼ねたシロウは、ついに一瞬の隙を突かれ。
その身体は爆散し、マナ化した。
「撃破、死亡確認」
「侵入者の追跡を優先しろ。絶対に皇帝へ近付け」
「誰が死んだと?」
軍兵、そして隊長たちに戦慄が走る。
確かに四肢はバラバラとなったはずだ。
鏡の一撃、雷光、銃弾の嵐などを受け、マナ化だって済んだはずだ。
しかし、侍は蘇った。
霧散したマナが人の形へと集まり、白い髪と端正な顔立ちを持つ漢が再臨している。
「げ、現隊長……嘘ですよね」
「俺の隊長と同僚たちは、奴に両断されたんですよ!?」
百の首を並べた怪物の復活に恐れをなし、逃げ出す兵も現れ始めた。
「拙の能力は『不死の生命』。人の生は一度切りと決まっているが……まあ、転生している時点で何も言えぬか」
常軌を逸した武術に、無限コンティニュー。
そんなチートキャラが、階段を守らんと刀を構え直す。
「さて、誰が為の剣となるは侍の誉れ。どこからでも来るがいい!」
そして再び、彼岸花が辺りに咲き乱れ始めた。




