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第109話 勇者の決意④

「シゲシゲ皇子、どうしてプロキアに」


「誰……いや、ナカジマか」


 暴れるゴスロリを抑えていたため一瞬警戒の姿勢を見せたシゲシゲだったが、よく知る者たちだとわかった途端に表情を緩める。

 互いに第一印象こそ悪かったが、誤解が解けてゆきヒノワを出る頃にはすっかり打ち解けていた。

 ヒロも当初は無かった敬意を見せるようになり、また第一皇子も彼相手ならと感情を露わにする。


「憤。バケバケがパディス帝国と手を組み、有力者の殆どを殺して回ったのだ」


「そんな……ヒノワの人々は大丈夫なんですか!?」


「応。逃げ切れたヒノワの皇民は、難民として受け入れてもらっている。ウォルター殿には感謝しかない」


 共に皇国を脱出したムネニク大名も、シゲシゲやレティシアと共に別の避難地で懸命に働いているらしい。


「メリアが裏切って大変だからって、シゲシゲさんも復興を手伝ってくれてる。あとはマオのご先祖様も」


「そっか……ありがとうございます。それと」


「何、わかっている。逃げ仰た際、利害が一致したゆえ捕らえておいた」


「なんでぇ! 助けてやったろぉ!!」


 緩まった皇子の腕から脱したミエコが、ギャースカと抗議するよう騒ぎ立てた。

 だが関係ないと言わんばかりに、ヒロはワガママ女の胸倉を掴んだ。


「どうして俺の身体にシノハラがいる」


「ホントだったんだ! きょーや、そこに」


「質問に答えろッ!!」


「ひゅい!?」


 多くの命を背負った凄まじい剣幕で詰めると、カタカタと歯を鳴らしながら必死に言葉を発する。


「だって、きょーやに、死んでほしくなくて……おまえも、ああしてなかったら死んでたんだぞぉ!」


「それでクルトが死んだ、殺してしまった! それだけじゃない、獣人ニュートも、パディス兵も、他にも!!」


「じゃあ自己責任だぁ! きょーやもみぃも、悪くない!」


「っ、それは……!」


「ほらみろぉ! みぃ達は悪くな」


 そう、ゴスロリ女が嘲った瞬間。

 劇場の入り口と道具屋の方から白閃が走り、堅牢な劇場の壁を破壊するほどの勢いで押さえつけた。


「ぶえぇ!?」


「グルァウ……!」


「子孫の友を嘲るならば、然るべき報いを受けてもらう他あるまい」


「驚。真に喋れるようになったというのか」


「いやそこじゃないだろう! あの二人を止めないと重要参考人が死ぬぞ!!」


「ん、でも手加減してるっぽい。マオは能力を切って……」


(先ずは腹を割かせるか。果たして臓腑や魂魄が黒か白か)


(あはっ! 首の血管を順に切っていくから、何本目で死ぬか予想しない?)


「ヒュッ」


「む、どうした」


 あまりにも人道から離れた発想をする侍と狼に、ミライは心の底からドン引きしてしまう。

 ミエコも同じものを感じたのか、顔を白くして残像が見えるほど速く首をブンブンと横に振っている。


「……そこまでにしてほしいです」


「何故」


「グァウ!!」


 シロウが冷徹に問い、マオが猛烈に吠える。

 それでも、ヒロの想いは変わらない。


「俺が殺した事実は変わらない。だから、これ以上無駄に命を消費したくないんです」


「戦場で兵を斬るのと同じことではないのか」


「全く違います。兵と一般人では、覚悟の分だけ命の重さが違う」


 一線を越えていない者を殺めてしまったからこその言葉。

 戦国時代より転生せし侍は、その重さをしかと受け止める。


「承ろう。なれば、次に無辜なる民を傷つけた際は」


「はい。俺の首を刎ねてください」


「何!?」


「ワォウ!?」


 侍の主君と勇者の幼馴染が共に驚愕の声を漏らす。

 だがシロウは、ふと目を閉じて口角を上げていた。


「我が子孫は、良き友を持ったようだ」


「ワゥ! グァオウ!!」


「マオと申したな」


 そして瞼をゆっくり開き、鋭い眼光をマオへと合わせた。


「彼を護りたい気持ちは重々承知している。だが、命を軽く思ってばかりいると、彼との縁は途絶えるぞ」


「グゥ……!」


「拙も徳の道は、半ばにすら立てておらん。故、今のうちに其の道を進むことだ」


 なにも言い返せない。

 マオは先祖の教えを受けるほかなかった。


「……教育してる」


「察。何百年もの御先祖ゆえ、思うところがあったのだろう」


「マオだからこそだろう。他のモンスターでは」


 サリエラが解釈を述べていた、そのとき。

 何の前触れもなく、太鼓、シンバル、そして金管の混ざった音が、劇場の厚い石壁を揺らした。


「っ、うるさぁ!?」


「この音楽は……!」


 耳を塞ぐ一行の中で、犯人に覚えのあった宮廷魔術師がたちまち外へ駆け出す。

 すぐさま追って空を見上げると。


「飛行船!?」


「パディスが攻めてきた……!」


 無数の銃口を携えた三隻の飛行船が、プロキアを照らす太陽を覆っていた。

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