表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/173

第108話 勇者の決意③

 久方ぶりに外へ出たヒロを迎え出たのは、荒廃した城下町の風景だった。

 家屋や広場は瓦礫となり、民が懸命に復旧しようと働いている。

 国王が暗殺されてなお逞しく生きようとしていたが、何処か顔には覇気がない。


「……あんなことがあったからな」


「それだけではないぞ。ジークが裏切り、大国宝を奪い去った」


 よって、プロキアは自治権を失い、いつ植民地宣言が出されるかわからなくなっていた。


「……ジーク」


「私、目の前で国王が刺されてるとこ見た……見てることしか、できなかった」


「いつか暗殺される日が来るとは思っていたが、実行犯がジークとはな……」


 三人は瓦礫の道を征く。

 知り尽くしているはずの場所が、まるで別の世界の光景に見える。

 国民は有事に備えて堅牢に造られていた建物を避難地としていた。

 その中の一つ、サリエラとレティシアが守り抜いた劇場に入り、雑魚寝する人を避けながら奥へ進むと。


「エリーゼ」


「っ……!」


 低く、そして真っ直ぐな口調で三つ編みの少女の名を呼んだ。

 難民にカレー鍋を振る舞っていた彼女は一瞬驚いた様子を見せ、そしてすぐに憎悪を顔に宿す。


「何しに来たの」


「謝りに来た。クルトのことを」


「アタシはアンタを許す気はない。弟を殺した、アンタを」


「当然だ。俺は、それだけのことをした」


「ならどうして謝ろうって。自己満足?」


「正直それもある。犯した罪から解放されたい気持ちもある」


 それでも少年は、決して目を逸らさない。


「だけど、越えてしまった一線から逃げたくない。これ以上、意味のない人殺しをしないように」


 そのまま両膝を地につけ、両手をピタリと付ける。


「だから……本当に、ごめん。一生をかけて償う」


 そして頭を下げ、誠意を露わにした。

 土下座の意はプロキア人に通じない。両手を顔の前で合わせ無ければならないからだ。

 エリーゼの口調と表情が更に険しくなる。


「保証は無いでしょ。また暴走して誰かの命を奪わない、なんて」


「ああ。だから」


 そのまま赤髪の少年は、シロウと対話していた道具屋の親父へ視線を向けた。

 ちょうど侍の拡声器を作り終えたばかりだったヒゲ男が、同じギルドに住む同僚のもとへ足を運ぶ。


「ヒロ? どうしたネ」


「ガナシュさん。俺の能力を抽出した道具を作ってほしい」


「何と!?」


 ガナシュが丸い身体をボールのように飛び退かせて驚愕を示す。


「急にどしたネ、今まで頑なに断ってきたのに!?」


「そういや、ヒロは翻訳指輪みたいに能力を道具化させてなかったな」


「着るだけで最強になれる装備だなんて、量産化したら秩序が乱れるからさ。犯罪とかに使われたら、たまったものじゃないし」


「それなら理由言ってくれれば良かたネ」


「あれを量産化してたら、バサナ戦も楽だったのに」


 ミライ達に白い目を向けられつつも、最強装備の転生者は真剣な様子を崩さずに道具屋へ頭を下げる。


「だから、ワガママで申し訳ないけど……俺がシノハラに乗っ取られたときの抑止力として、最強装備を道具化してほしい」


「オーケーネ。なら遠隔自爆機能も必要ネ、任せなさい」


「助かるよ。侵略戦争や犯罪とか、私利私欲に使ったら自爆するようにしてほしい」


 ガナシュはしたり顔で親指を立てて見せつけた。


「……なんだ、ちゃんと考えてたんじゃん」


「何なら、死んでと言われたら切腹しようと思ってたよ」


「ほんと、そういうとこヒロらしいわよね」


 頭を抱えたエリーゼが、唸りながら吐き捨てる。


「アンタを許す気はない、これは今も変わらない」


「うん。むしろ、そうしてほしい」


「ただ、アタシはヒロを信じたい。ずっと助けてくれた、優しいヒロを」


「ッ……!」


 弟を殺した相手への言葉が少年の目を開かせる。

 段々と頬が上がり、涙腺が絞られてゆく。


「アタシはアンタを許さない。だけど、ヒロのことは勝手に信じるから」


「……ごめん、そして……ありがとう……!」


 ヒロは声をあげて泣いていた。

 もう絶対に無意味な人殺しをしない。

 その決意を本物にしようとした、そのとき。


「はなせぇ! みぃは、きょーやに会いたいだけだぁあーっ!!」


「黙。大人しくするがいい」


 長髪の皇子に羽交締めにされ、ゴスロリの少女が騒ぎ立てていた。

 ヒロも見覚えのある女の声を耳に入れたエリーゼが、頬に青筋を立てて呟く。


「……あと、絶対信じたくない奴はコイツだし」


「ああ……それは俺も……」


 すっかり涙が引っ込んだため、宿敵と合体させた犯人を問い詰めるべく踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ