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くらいところ  作者: ぞい
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初めて他人と関係を持って

 大学の授業は、友達ができないということ以外にそれほどの問題はなくて、合唱団については、なんだかんだ、気付くとパートリーダーを担当していて、四パートそれぞれが四つに分かれて十六声になる楽曲をやることに決まった。しかも、パートで分かれるそれぞれが、二拍三連を含む異なるリズムをやるという複雑な作りになっており、リズムを捉えるのが苦手なわしは、ここで全パートを理解せざるをえなくて、放課後、部室で独り、太ももが痛くなるほど叩いて、悲鳴を上げながらそれぞれのリズムを把握する練習をしていた。疲れ切ったわしは、ある冬、ミクシィのゲイコミュニティへと興味を向けた。


 勇気がなくて、持っているだけでほぼつけていなかった黒縁の眼鏡をかけ、顔の上半分だけを写した写真を載せて、誰でもいいから自分と同じ性嗜好の人と知り合ってそのようなことをしてみたい旨の投稿をした。ほどなくして、ひとりからアプローチが来た。特に深い話もせずにひとまず会うことにして、学寮の住所を教えた。前の坂に着いたとのことで、おどおど降りていったが、初めにすれ違ったのはプロレスラーみたいながっちりした黒い人で、まさかこんな怖い人のはずがと思って通り過ぎたが、同じタイミングで振り返られてその人なのだと分かった。向こうはスネ夫みたいと思って通り過ぎたらしい。


 そんな微妙な出会いではあったが、寮の狭い部屋に招いて話をしてみると、わしとはかなり違う性格ではあるものの、諸外国に対して興味があるらしく、外国語をやっているわしと、初対面ではあったが、話に花を咲かせてくれた。そして、もじもじしながらもわしは、ベッドに一緒に入ることを相手に求め、挿入はしないものの、横たわってハグをし、初めて他人の性器というものに自らの口を付け、これまでに見てきた映像の記憶を総動員させてご奉仕した。事後、ひとまず連絡先を交換して送り出したが、正直、相手が自分のことを気に入ってくれたのかわからなくて、わしはもやもやしてまた自涜に耽った。


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