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くらいところ  作者: ぞい
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友人に性嗜好がバレて

 合唱も授業も結局の所はそれなりな感じで、部屋に帰ったら誰を気にするでもなく、自分だけのパソコンでサブカルな動画を見漁りながら流行に乗り、高校までと同じように、成人男性向けの男性同士でのそのような新作動画のトレーラーをチェックしていく内に、少しずつひとり暮らしにも慣れてきた。ある日、授業の合間に遊びに来た徹が、わしが部屋を空けている間に履歴を見たらしく、「『エロ男好みのエロ男』って何?お前ゲイなの?」とサイトを指差しながら尋ねてきた。カミングアウトという言葉もまだ知らないわしはひどく動揺し、すっとサイトを閉じて、しどろもどろにひとまずごまかした。


 一回生の時期はあっという間に過ぎ、わしは声の適性を見直されてバスの下パートであるローベースを担当することになり、田内はすでに団を辞めて、四角い印象の桜井という眼鏡の男の子が新たにバリトンとして入団していた。向こうのキャンパスの寮に住まわされていた徹は、わしにとってのおいしい先輩と桜井とを呼んで宅飲みをするということで、わしもその場に招かれた。ほどよく盛り上がってきた頃、徹はわしに対して、「お前、ゲイなんやろ?」と聞いてきた。二人は寝耳に水な様子で何か場を取りなすことを言っていたような気がするが、わしはもう観念して「うん、そうだよ」と正直に答えた。


 その後は、わしが開き直ったので深掘りされることなく酒がどんどん進み、気が付くと、わしは徹の部屋で朝を迎えていた。どんな話を皆にしたのかは、正直な所、よくわからない。だが、自分のそういう性嗜好について、初めて他人に明かして吹っ切れたのか、大阪の堂山という所にあるゲイエリアへと興味を持つようになった。とはいえ、柴田淳のオフ会でバーに連れて行ってもらったくらいのわしに盛り場へ行く勇気などなく、せいぜい、ゲイビデオショップへ行き、安くなっているDVDを買ってみるということくらいしかできず、相変わらず経験のないまま、気付くともう二十歳の冬になっていた。


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