第三話「クラス分け」
ほんの2週間前の衝撃的な出来事について考えつつ、学校に向かって歩き続ける。
「そういえば、春休みは全く家から出なかったから気にならなかったけど、ずっと僕について来ているよね。君の姿が僕以外に見えたら大変じゃないの?」
「それは大丈夫よ。私の身体はあなたにしか見えていないから」
なるほど、実に都合の良い設定のようだ。
「周囲に誰もいないのに話をしていたら変人に思われそうだからね。学校ではエルミラが何を言おうと反応しないから」
「ふーん。どうぞご勝手に」
エルミラは少し不貞腐れたような顔をしてそう答えた。
ようやく昇降口の手前まで着く。
普段とは違い今日は、昇降口のガラス扉の前が無数の人で溢れかえっている。僕の通う高校では、新学期の登校日に昇降口のガラス扉にクラス分けが書かれた大きな紙が貼られる。
どこか緊張した面持ちでクラス分けを眺め自分のクラスを探すもの、既に自分のクラス分けを確認し下駄箱に向かうもの、友達と同じクラスであったことを喜ぶもの、色々な人達がいるのが見える。
僕もそろそろクラス分けを確認しようかなと、2年生のクラス分けが書かれた紙に近づきそれを眺める。僕のクラスは──ああ2-Bか。クラスの他のメンツはどうなっているのか確認しようとしたその時、
「おはよう誠―! 」
快活そうな女の子の声が後ろから聞こえた。上半身を軽くひねって後ろを振り返る。
「おはよう千里」
そこには、制服を身に纏い、首には2年生であることを指し示す赤いリボンをつけた少女がいた。
少女の名前は津川千里。身長は170センチある僕よりかは、10センチほど低いだろうか。肩にかかるくらいで切り揃えられた綺麗な黒髪を携え、小さな顔に少し大きめの眼、筋の通った鼻、形のいい桜色の唇が上手く配置されている。
「ちょうど誠もクラス分け見ているところだった?えーっと私のクラスは──あ!2-Bだ!」
「なら僕と一緒だな。今年もよろしくー」
「あ、誠も2-Bだったんだ。去年に引き続きよろしくねー」
千里はそう笑いながら答える。
僕と千里は昨年1年間同じクラスであった。名前の順が近かったこともありよく話す仲になった。
「誠以外に去年同じクラスだった子は……いないね」
「2年生から理系文系クラスに分かれて、ぼくらは理系にしたけど去年のクラスは文系選んだ人達が多かったからなー」
「うーんまあちょっと残念だけど、新しい友達が作れるってことだから楽しみ」
千里は明るく、見た目も良く、人を惹きつけるものを持っていると思う。
「後10分くらいで朝のホームルームが始まっちゃうからそろそろ教室に向かおうか」