第二話「辿る記憶」
「幼馴染を見つけ出してキス!? 」
どうやって全校生徒から幼馴染を見つけ出すんだよ、女の子とキスとかしたこと無いんだけどどうやってキスするんだよ、いやそもそも幼馴染って誰のことだ……。様々な疑問が僕の脳内を駆け巡る。
「んー、ちょっと色々気になることが多すぎて整理しきれない。とりあえずいくつか質問しても良いかな」
「いいわよ。答えられる範囲で答えてあげる」
「まず、君の言う僕の幼馴染なんだけど……僕が小学校低学年の頃に放課後よく遊んでいた女の子のことで合ってる? 」
「ええ。」
そうか……あの子のことか。
僕の脳裏にあの頃の記憶がぼんやりとながらも浮かび上がってきた。
あの頃僕は、学校の授業が終わり家に帰ってくるや否や、ランドセルを置きすぐに家を飛び出して近くの公園に向かっていた。誰と遊ぶわけでもなく、サッカーボールを蹴ったり公園内を走り回ったり、一人で過ごしていた。
ある日、一人の女の子が僕のことを見ているのに気が付いた。僕はそんな彼女が気になり、一緒に遊ばないかと誘ってみた。
それからは楽しい日々の連続であった。毎日放課後に公園で会っては、二人でサッカーボールを蹴りあったり、公園の遊具で一緒に遊んだり、彼女の持ってきた占いの本で遊んだりと。
こんな日々がずっと続くと思っていた。
しかし、楽しかった日常は急に終わりを告げてしまう。
彼女と遊び始めて半年ほど経った辺りであろうか。突然彼女は公園に来なくなった。僕は毎日毎日公園に向かい、彼女が現れないか待ち続ける。1週間待てども、1ヶ月待てども、彼女は姿を見せることはなかった。
両親の転勤によってこの町から引越しでもしたのだろうか。僕にはどういう事情だったのかは分からない。
ただ分かることは、彼女は僕の前から姿を消した。別れの挨拶もなかった。それだけだ。
あれ以来彼女とは一度も会っていない。
彼女はどんな女の子だっただろうか。
まず名前。名前は……そうユキだ。僕はあの子のことをそう呼んでいたはず。彼女が私のことはユキと呼んでと言ってきた。残念ながらフルネームは分からない。
次に顔。顔は……うん。思い出せない。子供ながらに、整った顔立ちをしているなと思った気はするが、詳細は覚えていない。あれから10年弱も経っていれば顔もかなり変わっているだろう。
仕草や喋り方、身体的な特徴はあっただろうか。仕草や喋り方に特徴的な何かがあった記憶はない。身体的な特徴か……綺麗な黒髪をしていたということくらいか。
年齢はどうだろうか。彼女は僕と同学年だったのだろうか。それも分からない。小学校の同級生にはいなかった気がするが、そもそも同じ小学校だったのかも知らない。
こう考えてみると僕はユキのことを全く知らないんだな……。
「彼女のこと、思い出したかしら?」
エルミラにそう言われ、ハッと現実世界に呼び戻される。
「うん──。思い出した。覚えていないことも多いんだけどね」
僕は素直にそう答える。
「もう一つ聞くね。君の言っていた同じ学校に通っているっていうのは既に学校に通っている子のことを指すの?」
「この春から入ってくる新入生、アンタの同級生、そしてアンタの一つ上の先輩。幼馴染はこの中にいるわ」
全校の女子を合わせて恐らく500人近くにはなるだろうか……。分かっていることは彼女の名前がユキというだけ。なんて拙い情報しかないんだ……。
「最後に一つだけ質問をするね。君は一体、何のために僕に呪いをかけたんだ──。君の目的は一体なんだ。」
「目的、ね……。それは答えられないわね」
「答えられないっていうのはどういうことだ」
僕は少しイライラしながらそう聞くが、
「何を言われようと私はそのことについて答える気はないわ」
そう言うとエルミラは黙ってしまい、それ以上口を開こうとはしなかった。