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そうです真性こじらせ男子です

授業が終わって帰り支度をしている不比等に付属小学校からの腐れ縁で同じクラスの多治見(たじみ)碧人(あおと)


「不比等、お前今日暇?」


と聞いてきた。不比等は


「すまん今日バイトだから」


と言うと碧人は


「ああ本屋のバイトかぁ、でもお前って社長の息子で金持ちなんだからバイトなんてしなくても大丈夫なんじゃない?」


と言われた不比等は


「金持ちとか関係ないこともあるんだよ、まあタジには一生分かんないだろうけどな」


と言うと碧人は頷きながら不比等の肩に手をおき


「そうか、やっぱりお前はあの家の本当の子供じゃなかったのか可愛そうに」

「またかよ、おいタジお前それネタにしてるだろ」


と言う不比等の突っ込みを無視して碧人は続けて


「高校生になったら独り暮らしをするって言ってたけどずっと嘘だと思ってたのに本当にするなんて…バイトも探してるって言うから何かおかしいと思っていたんだ」


また始まったよ、これ付属中学の時からずっと言ってるし


「俺に任せろ、気にするなお前が何者だろうと俺は永遠にお前の友達だ頑張って学費と家賃を稼いでこい」


いやお前馬鹿か、バイト代で学費と家賃が足りるわけがないだろって分かるわけないか、こいつバリバリのお坊っちゃまだったわ

まあ、俺も金を出してもらってるって事はお坊っちゃまにかわりないか


と思っていると碧人が


「不比等、負けるな頑張れよ」


と涙をふく真似をして走り去っていった。


あいつ自分に酔ってるし…どうせ行くのは駅前の新しくできたカフェだろ

どんだけ甘いもんが好きなんだよってあいつの親父さんホテルのパティシエだったわ

それより前髪長くなりすぎたなぁ切りに行くの面倒くさいなぁ


と思いながら前髪をかき上げ教室を出ると外にいた三人の女子と目があった。


なんなんだ?こいつら俺に喧嘩売ってんのか


と思いながら不比等が玄関に向かうと三人の女子が


「ちょっと今の見た?」

「見た見た何あれあんな顔してたなんて知らなかった」

「本当いつもダサダサだもんねビックリしたぁ」

「ねぇ2人とも暇なら彼がどこに行くかついていかない?」

「良いわね行こ」

「うんうん楽しそう」


と3人は不比等の後ろ姿をこっそりとつけていった。


「巧馬さんお疲れさまです」

「十矢お疲れ、ああ予約してた本な」


レジに巧馬がいると赤池書店の伝説のアルバイト北代(きたしろ)十矢(とうや)がやって来て入り口の本棚を指差し


「巧馬さんあれどうしたの?あそこに女子が三人隠れているみたいだけど」


と言うと巧馬は


「ああ多分いつもの雄大さんにだろ、モデル体型の男前メガネ男子だから彼女が出来たって分かっても見に来るファンが多くて」


と言うと十矢が


「いやそうじゃなくて彼だと思うんだけど彼って新人?」


と言って見る先に不比等がいた。巧馬は頷いて


「ああ、そうバイトの赤池不比等君たしか東城学園の2年だよ」


と言うと十矢は驚いて


「東城って私立東城学園付属高校?へー彼って頭の良いお坊っちゃまなんだね」

「そう言えば、幼稚園や小学校からあそこにいる子は頭の良いい金持の子息って言ってたな」

「そうそう、ん?赤池ってもしかして」

「うん赤池グループの三男」

「マジかぁ」


十矢が本物の金持ちを見たと思いながら不比等を見ていると、女子の一人が他の二人に応援されて不比等に近寄って行き


「やだぁ奇遇ね赤池君ってここでバイトしたんだぁ」


とクネクネしながら声をかけた。その女子を長い前髪の間から不比等は睨み付け


「俺になにか」


と無愛想に言う。女子は一瞬怯んだが負けずに


「私、隣のクラスの相澤芽依(あいざわめい)。私ここによく来るんだけどビックリしたわぁ赤池君がバイトしてるなんて知らなかったから」

「…」

「ねえ何でここでバイトなんてしてるの?赤池君ならバイトなんてしなくてもいいのに…あっそうか現場を知る社会勉強のひとつなのね。未来の赤池グループを背負う一人だもんね」


と食い下がる。そんなやり取りを巧馬と十矢が


あれは彼とお近づきになりたい女子の必死の作戦だな


そうですね、あの作戦はいまいちどころか最悪だと思われるけど


と興味深く見ていると不比等は


「だからなに喧嘩売ってんの?それともバイトしてるのバラされたくなかったら言うこと聞けとか言う脅しか」

「えっ」

「残念だったな、ちゃんと許可はとってあるから」


と言う不比等に芽依はビビリながら


「違う違う、たまたま廊下で前髪あげたのを見て可愛いなって思ったの。だからお互いの為にもこれから友達になりたいなって」


と言われ目を見開いた不比等


えっなに?私のことを見てる…やだぁ


と芽依が照れているとニヤッと不比等は笑って


「へー俺は球技も下手だし足も遅くてダサいうえに鈍くさいから、こんなのが赤池の人間だなんておかしいだろってお前ら皆で言いふらして近寄りもしなかったのにな」


と言うと芽依は焦って


「それは皆が言ってるけど、私はそんなこと言いふらしたりしてないわ無視はしてたけど。でもね本当の顔を知ってたらもっと早く仲良くしてあげてたわよ」


と言う言葉を聞いて不比等は


ほら出たよ、見た目がマシで親が自分の家より金持ちとは仲良くしてあげといて、玉の輿に乗ったあげくにゆくゆくはその会社を乗っ取ろうって魂胆がな。


そんな芽依を不比等はバカにした目をして見て


「前髪を上げてたのが可愛いってなんなんだ、見た目でしか興味持てないなんて本当にクズだな、お前なんかを相手にするわけがないだろ。とっとと帰れ」


と言い捨てた。芽依はワナワナと震えたあと


「あんたこそクズね!何よちょっと見た目が良いからって調子にのらないでよ、後で泣いて謝っても知らないんだから覚えてらっしゃい」


と言い二人の女子と一緒に去っていった。


おいおい、どこをどう見たら赤池の見た目がいいんだ?


どう見ても今の彼はモッサリに見えるんだけど


と事のなり行きをポカンと見ていた巧馬と十矢に李々子が近寄り


「2人とも口が空いてるんだけどどうしたの?」


と呑気に言ってきた。巧馬は李々子に


「リーコもしかして今の聞いてなかったの?」


と言うと李々子は笑顔で


「えっ何かあったの何々」


と言う。巧馬と十矢は顔を見合せ


この人の天然は奇蹟だ、本当に最高だ


と笑い合っている2人に李々子は憮然として


「何で笑うのよ何なのよちょっと早く教えなさいよ」

「大したことじゃないからリーコさんは知らなくても良いよ、なんだろうリーコさんはずっとリーコさんでいてね」

「そうそう、リーコはそのままが一番」

「はい?なにそれ2人して意味がわからない」


李々子はそう言い首をかしげながら去っていった。


本当に可愛いなぁリーコさん


と微笑んでいる2人にひかる店長が近寄り


「本当に可愛いなぁとか2人して思ってんでしょが」


と言われ驚いて振り返る2人にひかる店長は


「あのさぁあんたらはリーコマニアか、って言うかあの女子も女子だわね覚えてらっしゃいってどんな捨て台詞よ。でも不比等君って運動音痴には思えないんだけどなまあ良いか、それより…」


と言って2人に不比等を見るように示して


「ほらよーく見るのよ、あいつこそが真性のこじらせ男子よ」

「こじらせ男子?」


2人が驚いて言うとひかる店長はつづけて


「そう、こじらせ男子。不比等君は全身の針を逆立ててドツボから抜け出せなくなって負のオーラ撒きまくりで相手を攻撃してしまうの、とくに女性に敵対心を持ったこじらせ男子ね。最初は私にも食って掛かってたけどすぐ大人しくなったわ」


ニヤリと笑うひかる店長に2人は


どっどうやって手懐けたんだ


と青ざめていると


「やだぁ暴力なんてしてないわよ、ちょっとね権力使ってみたのバラすぞって」


なんなんだ!あんた、なんの情報を握ってんだ


「それにしてもアンタたちはああなんなくて良かったわね、一時期の十矢と松岡はヤバかったけどね」


と言い去っていった。うっと落ち込んだ十矢が


「確かに俺ヤバかったよね巧馬さんに殴られたこともあったし」


と言うと慌てて巧馬が


「えーあれは不可抗力みたいなもんだろ」

「あーそうでした、それにしても…」


本物のこじらせ男子…


2人は顔を見合わせ


「ああならなくて良かった」


と頷き合った。


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