つかみたいなら手を伸ばせ
お待たせしましたm(_ _)m
そろそろ終わる時間だよな
不比等が校門にたっていると通りすぎる生徒がチラチラ見ながらボソボソ言うのが聞こえてくる。
それを穂香は教室のまどから見て
だから、あれは行きにくいって…どうしたらいいの
困っている穂香に小春が
「ちょっと、あれ赤池君じゃない。えっ何々まさかとは思うんだけど待ち合わせとか」
「うっ」
言葉につまる穂香を見て小春はニヤッと笑い
「へーそういう仲なんだあ」
「どっどういう仲よ」
2人の会話を聞いていた幸村朔が
「わざわざ学校まで会いに来るなんて大事な用なの?」
真顔で聞いてきた。穂香は困惑しながら
「大事な用…なのかな?会わせたい人がいるからって言ってたんだよね」
「そうなんだ…」
モジモジしている穂香にしびれを切らした心春が
「とりあえずあまり待たせるのもなんだから、恥ずかしかろうが何だろうがとっとと行きなさい」
と言い穂香に鞄を持たせて教室から追い出した。そして
「幸村…あんた今さら割り込もうなんて許さないから」
「許さないって何?」
「穂香のこと諦めたんだよね」
幸村朔はフッと笑い
「まだどうなるか分からないのに諦めるもなにもないよね」
「あんた」
「時間はたっぷりあるんだし友達でいる分には構わないと思うけど…人の事より自分のこと気にした方がいいんじゃないの?」
そう言い教室を出ていった。
あいつとんだ曲者だわ
赤池負けんな!
しばらくすると2人の女生徒が不比等に近寄り
「あのぉうちの学校に何かようですか?」
「なんなら構内を案内しましょうか?」
と言ってきた。不比等はぶっきらぼうに
「じゃあさ呼んできてよ旭川穂香」
「え?」
「だから旭川穂香、急いでるから呼んできてよ」
「えっと…」
そんな不比等に穂香はあわてて
「ごっごめん待たせて」
と言いながら駆け寄ると
「お前な遅いんだよ」
と穂香を見ると急いできたのかほほが赤らんでいる。
えっなんなんだ可愛い
と穂香を見て照れていると、それを見ていっそう真っ赤になった穂香が女性と二人を残して不比等の腕をつかみ足早に歩き出した。
「おっおい何処行くんだよ」
「うるさい黙ってて」
耳まで真っ赤にして歩く穂香に気付いた不比等は
本当に、こいつ可愛いなぁ
不比等はニヤニヤしたあと
「分かったら落ち着けって」
と言い繋いだ手を引き寄せた。
その勢いで振り返った穂香は不比等の胸に抱きとめられた。
「うぐっ」
ぎゅっと穂香を抱き締める不比等に焦ってジタバタする穂香。
「今から黙って俺についてこい」
と言うとおでこにおでこをコツンと当て
「良いな」
といった。突然の出来事に固まる穂香をじっと見て
「静かになった…なるほど…少女漫画も読んでみるもんだな」
と言い嬉しそうに穂香と手をつないだまま歩き出した。
「なっ何少女漫画ってなに」
「あー最近たまーに新刊出たらPOP作らせて貰えるようになってたから…まあ色々」
「色々?」
「そう色々」
今までこんなのありえねぇとか思ってたけど役に立つもんだな
嬉しそうに駅に向かう不比等の背中を穂香は微笑みながら見ていた。
たどり着いた場所には立派な門が有りその奥には豪邸がたっている。
うっ何ここ…豪邸だよ
穂香が呆然としていると
「お前…口開いてるぞ」
と微笑む不比等。穂香はひきつりながら
「ここって何処」
と聞くと不比等が真面目な顔をして
「俺の婆ちゃんち」
「婆ちゃん家って…この間亡くなった?」
「そう行くぞ」
穂香の手を引き家のなかに入っていった。
「ただいま」
奥からお手伝いの女性が出てきた。
「おかえりなさいませ」
不比等君って本当にセレブだったんだ
穂香はあまりの違いに戸惑っていた。
「祖父さんは?」
と言いながらどんどん居間へ向かう不比等のあとを必死でついていく穂香。
「ただいまお呼びします」
お手伝いの女性は奥に去っていった。
居間に入ると豪華なソファーや机や飾り棚に穂香は
「何ここ…私は何処に迷いこんでるの?日本だよねここ日本だよね…すごすぎる絵本の中みたい」
と瞳をキラキラさせて言う穂香に
「お前…本当に…」
可愛いなぁ
と言いかけて不比等は口をつぐんだ。そこに哲成がやって来て
「おかえり不比等…ん?そのお嬢さんは」
「こいつ旭川穂香、ばあちゃんの大切な友達」
私が大切な友達?
穂香が戸惑っていると
「そうか君が…話は聞いていたよ、こっちにおいで」
と言い穂香の手をとり哲成が歩き出した。
なんて紳士的なお祖父さんなんだろう…
そして花にかこまれた遺影のまえに穂香をつれていくと
「お待たせ、やっと来てくれたよ」
哲成は遺影に声をかけた。穂香はその遺影を見て息を飲んだ。
「…おっお婆さん…」
穂香の脳裏にお婆さんが甦る。
『あなたに素晴らしい愛を私と共に』
「素敵な言葉でしょ。この言葉を月明かりの下でインカローズの石を握りしめて唱えると素晴らしい出逢いが訪れるって言われているのよ」
優しく微笑むお婆さん。
「このカードもあなたにプレゼントするわ時々お祈りしてみてちょうだい」
カードを渡してくれ
「あなたにはこれからもっと素敵な事が訪れるはず…例えば素敵な男性と良いご縁があるかも」
と言ってくれたお婆さん。
そしてあの日、悩んでいた自分に優しく微笑んで
「よく考えてご覧なさい2人のうちどちらと一緒にいたいのか、そうすれば答えに気付くはずよ」
穂香の背中を優しく押してくれたお婆さん。
あのお婆さんが…不比等君のお婆さんだったなんて
「彼女は自分はもう長くないと知っていたんだ。だから私と初めて話したあの公園…今では図書館になっているがね、そこに時折通うようになったんだよ」
後ろで聞いていた不比等が穂香に近寄り
「あの図書館、昔は公園だったって聞いたことないか?」
「そういえば…」
哲成は優しく穂香を見て
「その公園にあったベンチで彼女と初めて話したんだ」
「初めて話した?」
「そう彼女はその前に私を知っていてね、あの公園で待っていたそうだ」
懐かしそうに微笑む哲成を見て
「大切な思い出の場所だったんですね」
と言うと哲成は
「そんな場所で君に出会えたのは運命だったのかな?彼女は嬉しそうに君のことを話していたよ素敵なお嬢さんに会ったとね」
穂香は戸惑いながら
「そんな私なんてなんの取り柄もないただの庶民ですし見映えもよくないし」
「そんな事ない」
思わず不比等が言うと哲成はフフッと笑って
「そうだね君は魅力的だよ。彼女は君の話がとても楽しかったと言っていたよ。それは素敵な才能だと思うがね」
「そうだぞ穂香の話は他の誰より変わってて面白い」
「変わっててって」
と言う不比等を見て穂香は照れながら
「ありがとう」
と呟いた。哲成は話を続け
「そんな君と出合い彼女はこう願うようになったんだ」
ベッドに座り本を読んでいた瞳は、ふと
「ねぇあなた…私ね素敵な事を思い付いたの」
「素敵な事って何かな?」
「あのお嬢さんがあの子のそばにいてくれたら、あの子はきっと幸せになれると思うの。もうこれ以上一人ぼっちで寂しい思いをしてほしくないわ」
「そうだね」
そして手を合わせ
「不比等に素晴らしい愛を彼女と共に、どうかどうか2人が出会えますように幸せになれますように」
と祈る瞳…それをそばで微笑み見ていた哲成。
哲成は穂香に
「年寄りのワガママを許してやってくれ」
「そんなワガママだなんて思いません。だってお婆さんと出会えて、あのインカローズとも出会えたから、今こうやって不比等君と一緒にいられるんですから」
「インカローズ」
穂香は鞄から箱を取り出し哲成に渡した。懐かしそうにその箱を開け石を見る哲成。
「ああ久しぶりだ。これはね新婚旅行の時に結婚指輪の代わりに彼女に渡したものなんだ」
と言い穂香に渡す哲成。
「えっそんな大事なものだったんですか」
返そうとする穂香に
「良いんだよ彼女は君に持っていてほしかったんだから」
と言い箱をしまうようにいった。鞄に箱を入れる穂香が
もっともっと話しておけばよかったな
もっともっと…
と思っている穂香の手を突然不比等が握りしめた。驚き振り向くと不比等が泣いている。
「こっち見るな」
と言う不比等に穂香は手を握りかえした。
そんな2人をほほえましく見ていた哲成は
「でも本当に2人が出会って、ここに一緒にいるとは彼女も今頃驚いているだろうね」
「はいそう思います」
と言い瞳の遺影をみていると突然哲成が
「そうだ良いことを思い付いた、不比等との結婚式にそれをネックレスにして付けたらどうだい?」
「え?」
「え?」
突然のことに驚いた2人は目を点にした。
「祖父さん何いってんだよ」
「そうですよ」
「良いじゃないかそう遠い未来じゃないと思うがね」
俺だってそうなって欲しいし
そうするつもりだけど…
「あのさ、まだ俺達高校生だぞ」
「じゃあ婚約と言うことで」
「それなら…」
なんだろう…お祖父さんと不比等君って思考回路が似てる…
クスクス笑う穂香を見て不比等はムッとして
「お前、笑うなよ」
「だって2人とも似てるし」
「はぁ?」
「だって結婚前提って…」
「お前なぁ」
あんなに不比等が楽しそうだとは
やはり君の目に狂いはなかったようだな
素敵なお嬢さんでよかった
「そうだ2人とも少し待っていなさい」
哲成は二人を残し席をはずした。




