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命短し恋せよ若人

週末、授業が終わり穂香が教室を出ようとしたとき幸村(さく)


「待って旭川さん」


と呼び止めた。穂香が立ち止まり振り向くと幸村朔は思いきって


「旭川さん明後日の日曜日って時間あいてる?」

「えっ?」

「その…前に行ってみたいって言ってた水族館に行かないかなって思って」


ポカンとする穂香に幸村朔は


「突然でごめん」

「そんな謝らなくていいよ」


と言う穂香に朔は


「返事は今じゃなくて後でメールでいいから、じゃあ返事待ってる」


といって教室を出ていった。玄関で靴を履き替えながら幸村朔は


良かった言うべき事が言えた…後は返事を待つだけだ


と思っていると


「朔、もう帰るの?」


先輩の田宮(しおり)に声をかけられた。彼女は朔の2歳年上で家が近所の幼馴染みである。

始め朔は私立高校を志望していのだが、穂香がこの高校を受けると知り志望校を変えるとき田宮栞がいるからと言い両親を説得したのだ。


「田宮先輩、何か用ですか」


と言うと田宮栞は複雑な表情になり


もう前みたいに栞ちゃんって呼んでくれないのね…


「ねえ朔いい加減にサッカー部に入りなさいよ、みんな待ってるのよこのままじゃ宝の持ち腐れになるじゃない」


と言う栞に朔はフッとわらい


「俺なんか居なくてもサッカー部って強いじゃないですか、それに塾もあるし無理です。それじゃ」


と言って立ち去ろうとした朔に


「ちょっと待って朔、高校に入ってから私に冷たすぎない?」


と言うとため息をついた朔は


「田宮先輩もう自由にさせてください。それと呼び捨てはやめてください」


と言いさっさと去っていった。取り残された栞は


なんでそんなに冷たいのずっと一緒だったのに大好きだって言ってたじゃない

私がいるからこの高校にしたって言ってくれて嬉しかったのに、なんでそんなに変わったのよ


「朔…なんで」


栞は朔の後ろ姿を辛そうに見ていた。


教室で立ち尽くす穂香にニヤニヤしながら高梨心春(こはる)が近付いて来て


「やだ何あれデートの誘い?」


と言って穂香を見ると目を点にしていた穂香は慌てて


「違う違うデートだなんて幸村君に失礼だよ、ただ前に言ってた水族館に見物に行こうって事だと思う」

「ほお前に言ってたってなるほどね、でもさ穂香それをデートと呼ぶんだよ」

「だから違うって言ってるでしょ、一人で行きにくいから付いてきてって話なんだし」


と必死で否定する穂香に心春は内心呆れながらもニッコリわらい


「ふーんまあそれはそうとして、どうするのよ行くの」


と聞くと穂香は悩みながら


「うーんそれは…」


と言ったあと時計を見て


「ごめん図書館しまるから私行くわ」


と言い駆け出した。心春は悔しそうに


チッ上手く逃げられたか


と舌打ちをした。


危ない危ない、行くなんて言ったらデート確定って言われかねないし

私と噂になったら幸村君に悪いものね


と穂香は学校をあとにした。

図書館に着いた穂香が新刊コーナーをゆっくり見ていると久しぶりにコツコツと杖の音が聞こえてきた。


あっお婆さんだ


穂香は急いで音のする方に駆け寄って行きお婆さんの姿を見付けた。


「お久しぶりですお婆さん」


と穂香が声をかけるとお婆さんは振り返り


「あら穂香さんお久しぶり元気そうで良かったわ」


と上品に微笑んだ。穂香は嬉しくなって


「ハイ元気です。それに久しぶりにお婆さんに会えたから嬉しくって」


と言うとお婆さんは


「そう、それはよかったわ」


と微笑んだ。その時、穂香の携帯のメールの着信音がなった。穂香はお婆さんに少し待ってて下さいと言いメールをチェックすると


「日曜日、9時に駅前集合。博物館に行くぞ」


不比等からのぶっきら棒なメールが来ていた。


えっ日曜日って幸村君と被ってるしってか駅前集合って何処の駅前なのよ


と穂香が困っているとお婆さんは


「どうかしたの?」


と声をかけた。穂香は少し戸惑ったあと思いきって


「じつは、ある2人から日曜日のお出掛けのお誘いを受けて水族館と博物館のどっちに行けば良いのかなって」


と言うとお婆さんが


「そう2人から、それはデートのお誘いって言う事なのかしら」


と聞いた。穂香は焦って


「デートじゃありませんよ見学そう見学です、デートだなんてそんな恐れ多すぎます」


と言うとお婆さんは腰掛けに座り穂香にも座るように言った。そして腰を掛けた穂香に


「じゃあデートではなく見学に行くとして、穂香さんはどちらの人と出掛けたいのかしら?」


と直球で聞いてきた。穂香は戸惑いながら


「どっちって、水族館に誘ってくれた幸村君は同じクラスの優しい人なんです、もう一人の博物館に誘ってくれた人は何時も意地悪するしぶっきら棒だし」


と言うとお婆さんは


「あらあら、穂香さんに意地悪をするなんてどんな人なのかしらね」


と言うと穂香は


「今時のイケメンみたいですけど本当にぶっきら棒で凄く言い方がキツイんです。多分私がドンクサイから腹が立つんでしょうけど本当にワケわかんない人なんですよ」


なんだかんだ嫌いではない言い方をする穂香にお婆さんは


「それじゃあそのワケの分からない子と優しい幸村くんて子と、どちらと一緒にいたいのかしら?」


と聞かれて穂香はえっと言葉をなくした。


どっちと一緒にいたいって…


と悩んでいるとお婆さんは優しく微笑んで穂香を見て


「よく考えてご覧なさい、2人のうちどちらと一緒にいたいのか。そうすれば答えに気付くはずよ」


と言うと穂香は


「私は行くなら両方行きたいです、でも…」

「そうね両方行ってみたいって気持ちは分からなくないわ。でも2人でとなると話は別よね」

「はいそうなんですよね」


と言われ穂香が困惑しているとお婆さんは


「じゃあ行き先は別としてどちらの人をもっと知りたいかしら?」


とお婆さんが聞くと穂香は


「知りたい?」

「そうよ、相手の事をもっと知りたいと思うのはどちらかしら」


と聞かれて穂香は考え込んでしまった。お婆さんが穂香が答えを出すまで黙って待っていると暫くして穂香は


「私は幸村君といると穏やかでのんびりした気分になります、でも反対に彼といる時は怒ったり笑ったりバタバタ忙しくて何なんだこれはって退屈する暇がなくて…」


と言うとお婆さんは穂香の頭をなでで


「わけの分からない彼の方が気になるのね」


と言って穂香見ると真っ赤になった穂香が


「えっいやそんなだって怖いしキツイしなんであんな言い方するのか気になるって言うか…」


と言ってうつ向いた穂香にお婆さんは


「やだわごめんなさいね、少し意地悪をしちゃったわ」


と言うと穂香は首を降って


「意地悪だなんて思ってません。ただ幸村君とは先に約束していたのに、こんなに悩むなんて思ってもなかったんで…私ってひどいなって思って」


と言う穂香を優しく見つめ


「そうね、でも心配ないわどちらを選ぼうと穂香さんを誰も攻めたり出来ないもの」


一人、心春と言ううるさいヤツがいるんですけどね


と穂香が落ち込んでいるとお婆さんが


「あら、どうやら小姑さんがいるみたいね」


と言うと穂香は


「はい、うるさいのがいます」

「やだうるさい小姑なのね、でもきっとその子は穂香さんの事が好きなのよだからつい口を出しちゃうのね」


と言われ目を点にして


「そうなんですか」

「そうよ、ちょっと困った友人ね」


と言われ穂香はフフッと笑って


「はい困った親友です。すごいなお婆さんは何でも分かるみたい」

「そう?私でもまた分からないことばかりよ。でもね悩む時間が有ると言うのは素敵な事なの。心の扉を少し開いて自分と向き合ってご覧なさい(おの)ずと答えは見つかるものよ」


と言われ穂香は不思議そうに


「そう言うものなんですかね」


と言うとお婆さんが嬉しそうに


「そう言うものよ、今度会うときにはデートがどうなったか教えてちょうだいね」


と言われた穂香は


「だからデートじゃありませんって」


と言って照れ臭そうに微笑んだ。ふと壁の柱時計が目にはいった穂香は


「うゎこんな時間、私そろそろ帰りますね。お婆さん今日は話を聞いてくださってありがとうございました」


と言い頭を下げた。その穂香にお婆さんは


「こちらこそ私とお話してくれてありがとう。また必ずお会いしましょうね」

「はい」


穂香はお婆さんに手を降ったあと図書館を足取りも軽く出ていった。


「命短し恋せよ乙女、あなたの行く先に幸多からんことを…」


そう呟いてお婆さんは穂香を微笑んで見送った。


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