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振り回される俺に救いの手を

スピンオフ要素もあります。不比等がどう変わっていくのか、一緒に楽しんでください。

「ただいま」


と美緒が家に帰ってくると


「お帰りなさい学祭の準備お疲れさま」


と言い雄大(ゆうだい)がキッチンからやって来た。美緒はにっこり微笑みテテテテと走りより雄大に抱きついた。なかなか離れない美緒に雄大が


「美緒ちゃんお鍋が吹きこぼれるから」


と言うと美緒はしぶしぶ離れて椅子に腰かけた。雄大が手際よく料理を運び


「さあどうぞ」


と言うと美緒は雄大の首を引き寄せキスをした。雄大は慌てて飛び退き


「だから美緒ちゃん…そう言うのは後で」


と照れまくっているので美緒はニヤニヤして


「仕方ないなじゃあ後でね」


と言ってニヤニヤしていた。そんな美緒に雄大は叶わないなぁと微笑んだ。


ここで2人の紹介をしておこう、千石美緒20歳は宮ノ坂短期大学の生活デザイン学科に在籍していて目下10月末に行われる学祭『花宮祭』で披露するファッションショーの準備でバタバタしている。

そして松岡雄大29歳は赤池書店三階滝(さんがいだき)店の店員で、最近は学校や移動図書館からの発注の担当になり頑張っているところだ。


「そうだ今日はちゃんと門限までに家に送るからね」


と雄大が言うと美緒は


「あー今日はね大丈夫なの、学祭の準備で帰れないかもってお母さんにいってあるから」


と言うと雄大は立ち上がり


「ダメだって、この間お父さんに遅くなるなって言われたばかりでしょ」


というので美緒は


「だからそれは心配ないって、お母さんが上手くやってくれるから大丈夫信じなさい」


と言ったが雄大は複雑な表情になり


もうすぐ30歳なのにこれじゃいけないよ、ちゃんとしないと…でも美緒ちゃんはまだ20歳で俺のために犠牲にしちゃいけないし


と雄大は一人で思考の迷路にはまりまくっている。


あー雄大さんたら何かまた変なところに迷いこんでる


と美緒は思いながら


「雄大さん、あのね学祭が終わったら本気で就職先探そうと思ってるんだけどどう思う?」


と美緒に言われ雄大は我にかえって


「えっ」

「だから就職先をどうしようかなって」


美緒は雄大をじっとみて言った。雄大はドギマギしながら


「どうしようかって…美緒ちゃんがやりたいことがあるなら頑張れ美緒ちゃんって全力で応援する」


と雄大にガッツポーズで言われた美緒はため息をつき


「そうじゃなくて私が言いたいのは就職先が遠くになったらどうするの?遠距離恋愛になるんだよってこと。雄大さんは耐えられるの?私は無理かもしれないんだよ」


と言うと雄大は


「えっとじゃあ俺は近くの店舗に転勤希望を出す。そうしたらまた一緒にいられるよね」


と言うので美緒は唖然として


「あーもうなんで分かんないかなぁ」


と言われ雄大は


えっなにか間違えた?だって美緒ちゃんの邪魔をしたくないし…美緒ちゃんが頑張るなら俺は何時までも待てるんだけど


と思っていると美緒は


この人ったら本当に分かってないわ何だかんだモテてるから心配なのに…いっそ逆プロポーズする?そうしたら言い寄る女を蹴散らせるし。でも私からってのもさやっぱり言ってほしいじゃない


「美緒ちゃん?どうしたの」


と言われ美緒ははっとして


「雄大さんそれもいいのそれもいいんだけどね私が言いたいのはそういう事じゃなくて」


と言い雄大を見るとキョトンとして美緒をみている。


かっ可愛い…もぉやめてよ仔犬の目をしてこっち見ないでよ…本当にこのモエモエ男子めどうしてくれようか…


と言い美緒は立ち上がり雄大のそばに行き後ろから抱きしめ


「みっ美緒ちゃん」


と照れる雄大に


「あのね雄大さんは私のだからね分かった」


と言った。

ああ甘ったるくて胃もたれがしそうだ…

そんな2人の出会いは2年前、美緒の赤池書店アルバイト初日にさかのぼる。


「松岡ーちょっと来て」


店長の新井(あらい)ひかるが雄大を呼ぶと188cmの長身に眼鏡が可愛い雄大がやって来た。


うわっ高身長ハイスペック男子


と美緒が思っていると、ひかる店長が


「松岡、美緒ちゃん今日からだから頼んだわよ。じゃあ美緒ちゃん頑張れ」


と言い去っていった。美緒はポカンとしたあと雄大をみて


「千石美緒ですよろしくお願いします」


と言うと雄大が


「あっはい松岡雄大ですお願い…します」


とぎこちなく言うので


はい?この人何なのぎこちないわ~ハイスペック男子だと思ったんだけど何か違うような…


と思いながら雄大と一緒に本を並べていると何処からか視線を感じる。

美緒が振り返ると同じ高校の女子が2人こっちをみている。彼女たちは美緒に気付き髪をかき上げながら歩みよって来て


「やだあ美緒ったらここでバイトしてたんだぁ何時からバイトしてるの?」


と聞いて来た。


うわっ香水臭い何なのよこの子達、学校じゃあほとんど話もしないくせに


と美緒は思いながら


「今日からだけど何か」


とそっけなく言うと


「私もバイト探してたのよ知ってたら来たかったな」

「そうよ教えてほしかったわぁ」


と言い雄大に、にじりより


「私たちこの子と同じクラスなんですねっ美緒」

「そうそう仲良しグループなんですぅ」


よく言うわやめてよね全然仲良くもないのにわざと名前で呼ぶし、本当に気持ち悪いったらありゃしない


と美緒は思いながらもにっこり笑って


「ずいぶん前から貼り紙出てたのよ気付かなかったの?」


と言うと彼女たちは雄大を上目遣いでみて


「えー知らなかったぁ美緒ったら早く言ってよ」

「そうよそうよ、あのぉ私たちもぉ今からでも間に合いますかぁ」


と言う2人に雄大が苦笑いをし


「だったら店長に聞いてきましょうか」


と言うと彼女たちはあわてて


「そんな悪いですから、そのあなたの電話番号を教えてもらえますか?後で色々聞きたいので」

「うんうん電話番号ください」


と言ってきた。そんな2人に美緒が


何それ…結局はイケメンの電話番号が目が当てか!


と目を点にしていると雄大はそんな2人に優しく微笑んで


「すみませんそれは出来かねます。アルバイトの件はうちのホームページにも出ていますので、そちらをご利用ください」


と言い美緒をみて


「千石さんいこうか」


と言い歩きだした。そんな雄大に美緒は


なるほどこう言うことに慣れてるのね。なかなか女性の扱いが上手いとみた。見た目は細マッチョっぽいし、やるわねハイスペック男子


と思いながらついていった。事務所につくと雄大はパソコンのおいてある机に座るように美緒に言った。


「じゃあゆっくり教えるね」


と言い自分の名札についているバーコードを読み取らせ


「この名札にあるIDをつかってここへログインしてね、出退勤は習ったよね」


と言われ美緒が頷くと雄大は


「良かった…でももし分からなくなったら俺でも皆にでも何時でも聞いてね」


と言った。美緒はまた


フッ教え方が優しいわねこうやって女を手玉にとっているのね。恐るべしハイスペック男子


と思っていた。そんな美緒には全く気付かず雄大は


「それでさっきのお客さんみたいにうちに在庫がない本がほしいって言われたら、レジのパソコンがつまっている時は時間がかかるから待ってもらえるならここで他店舗の在庫をみて…」


美緒は机の上にある可愛い箱を開け中から紙を取り出した。


これって書店でよく見るたしか本を紹介するやつよね。


「千石さん聞いてますか?」


と言い雄大が美緒を見るとPOPの紙を色々見ている。


「松岡さんこれって何ですか?」


と言い美緒が振り向くと雄大は微笑んで


「それPOPそれによって本の売り上げも左右されるっていうアイテムのひとつ。そのうち千石さんにも書いてもらうと思うから…そうだな気に入ったのがあったら持って帰って見本にしていいよ」

「もらってもいいんですか?」


と美緒が言うと雄大は慌てて


「いやあげるんじゃなくて、貸し出すだけだから後でちゃんと戻しておいてね」


と言うと美緒は


「じゃあ借りていこうかな…」


と言いPOPを選んでいた美緒の手が止まり2枚のPOPを取り出した。雄大はそのPOPをみて


「それね前にいたアルバイト君が作ったやつ。十矢君のPOPは神業だったな」


と言う雄大の説明を聞きながら美緒はもう一枚のPOPを手にし


これそんなに上手くないけど凄くこの本が好きなんだなって分かる…こっちのPOPの方が好きだな


と思っていると雄大が驚き覗き込み


「それ俺が初めて誉められたPOPだ、ちゃんと残してくれてたんだ凄く嬉しいな」


と嬉しそうにウフッと照れる可愛い雄大を見た美緒は


違うこの人はハイスペック男子なんかじゃない…この人はこの人は萌系男子だぁ!


「って言うのが出会いだったのよ、あの頃はこんなに好きになるなんて思ってもみなかったな」


と美緒が雄大のことをのろけてしゃべっている相手は、一ヶ月前に三階滝(さんがいだき)店にアルバイトとして入った赤池不比等(ふひと)高校2年生17歳である。

この不比等は雄大と同じく弟系眼鏡イケメンで身長170cmに大きな二重の瞳がキラキラしているのだが、オーラを消し前髪で目を隠しもっさり感をかもし出している。

なぜそうしているのかはおいおい分かるとして


うざいなこの女…


と不比等が思っていると美緒が


「ねえ不比等君どう思う?」


と言われ話を聞いていなかった不比等はにっこり微笑み


「ごめん美緒さん、なんだっけもう一度お願い」


と小首をかしげた。


うおー小首かしげ可愛いじゃないのモッサイけど


と美緒は思いながら


「だから雄大さんへの誕生日プレゼント男の人って何がいいのかな、出来ればプロポーズもしてほしいのよね…みたいな」


と言うと不比等は


おいおい高校生の俺に聞く事か、その「みたいな」もやめろ


「じゃあ頭にリボンをつけて私がプレゼントよ可愛いお嫁さんよとか言ってみたら」


と面倒くさそうに言うと美緒はパッと明るくなり


「それいいわねそれでいこう、さすが天才少年の赤池不比等ね見た目はモッサイけど助かったわ、あと新刊並べといてね」


と言い去っていった。不比等は目を点にして


モッサイって何なんだよウザいなぁ、なんなんだここの店はどいつもこいつも俺をなんだと思っているんだ。

俺は赤池グループの人間だぞもっと丁寧に敬いやがれ。


そうこの物語の主人公は、こじらせ男子の赤池不比等その人である。


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