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『画一的に』『耳を塞いで』
当人にとっての理想となる世界観は当然のことながら変化すると思います
『画一的に』
全てを一とするならば
二は一で、三も一で、四も一
木は枝分かれすることもなく
形状も長さも全部同じ
葉は一様に色づき同時に枯れ落ちる
運命は一本道で
皆同じことを思い考えるのだから
選択の猶予すら与えられやしない
時間も距離も道さえも
決められた通りに進むだけ
なんて楽で全備な設計だ
彼らは何もしなくてもよい
何故なら理想的なこの世界には
文句を言う奴はたかが一人もいないのだから
『耳を塞いで』
ドンッ
キーッ
ザーッ
ザワッ
絶えず放たれ流れ出る
音の濁流に揉み抱かれて
息つく暇もない音の世界は
意識を溺れさせていく
朦朧としていく私の聴覚は
あっという間に臨界点
止まることの知らない響音は
ノイズと成って私の耳を通過する
もしも音鳴りを操れたなら
私は音を画一にするだろう
もしも音を消せるなら
私にとってそれは理想の世界になるだろうか