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74話 神に選ばれた勇者

「あらあら、精霊ちゃん達? どうした? ユウはもう戦っていると思うんだけどなぁ?」

 一人何処にも属さずフラフラとダグザ城前にやってきたアリアドネをシルフ達が待ち構えていた。

『お言葉ですが。アリアドネ様こそ、フラフラして何をされているのですか?』

「私? 私はユウの為に来ただけだが?」

『ボク達はオマエにお呼びではないって言ってるんだよ』

『今の今までダーリンに本当の事を話さないで、ダーリンをどうするつもり?』

『原初の魔王アリアドネ、どうして今まで隠してたの?』

 アリアドネは頭に手を当てて少し思案した後、何か思いついた顔をし仰々しく手を広げた。

「聞かれなかったからだな。そう、私こそは原初の魔王、この世界最初の魔王だ」

『何が目的ですか? 私達とご主人様を邂逅させたのもあなたですよね?』

「そうだよ。精霊ちゃん達はここまでユウをしっかり導いてくれた。とっても感謝しているよ」

 迷いなく肯定した。

「この世界を見てどう思う? 神に何度も滅ぼされかけて今もまだ神に苦しめられている。700年前もそうだ。デウス=エクス=マキナ扮した神の所為で多くの人が過酷な運命を辿った」

 700年前、リーベル王国が建国し、戦争をしていたと記されている。

「私は原初の勇者であり親友のナギに頼まれたんだ。この国を導いて欲しい。この世界を守ってくれる人を探して欲しいと。ナギに力まで渡されて」

『ナギ様の力?』

「未来予知だよ。渡された力で私は何度も未来を視た。そして、一つの結論に辿り着いた」

 アリアドネは深呼吸をする。

「ユウしかいない。ナギの願いを叶えることが出来るのはユウだけだ」

『ユウくんが……?』

「そうそう。他人を思う心、魔王の力と勇者の力、苦痛への耐性、挙げるとまだまだ有るけどさ。奴らを殺して世界を守れる王者はユウしかいない。この先現れることも無い」

『ダーリンなら……あり得なく無い……かも?』

「ユウがトモヤを殺し力を奪うことで、私の計画は完成する。この世界を守る完全な覇王が生まれる」

『させるわけが無い。ユウもボク達も、そんなこと望んでいない!』

「世界が望んでいるんだ。精霊ちゃん達だって分かるよね? あそこに立てるのはユウしか居ないってことくらい」

『分かりません。分かってたまるものですか!』

『そうよ。何でダーリン一人が抱えなければいけないのよ!』

『ユウくんを一人にはさせない!』

『そういう訳なんだ、お引き取り願えるかな?』

「はぁ、何でこうなるんだか。愛なのか? やっぱり愛なのか? あはははははは、はぁ、くだらない。誰もが愛の為に死んでいく」

 感情が激しく変わる。700年の多くの複雑な思いがそうさせているのだろう。

「仕方ないなぁ、倒していくことにしたよ。後悔……しないでね?」


 アリアドネが魔力を解放する。あまりの魔力の量に怯んでしまう。

「ただの精霊が魔王に勝てるなんて奇跡が起こると思う? 私は思わないなぁ~」

 魔力を放出するだけで空気を震わせる。

『今の私達はただの……精霊ではありません。愛を得た精霊はとても強いですよ!』

『その程度で絶対に負けるてまるかーっ!』

 シルフのかまいたちにサラマンダーの焔が合わさる。

「ああ、うん、よくやるよね~」

 アリアドネが展開した魔力障壁に止められる。

『ユウくんがお姉ちゃんを信じてくれる限りお姉ちゃんは負けない!』

 地面が割れ、大きな落とし穴がアリアドネの足元に出来るが、アリアドネは宙に浮き、落とし穴には落ちなかった。

『くだらないかもしれない。でも、ボクはそれを信じると決めたんだ』

 周囲から出てきた水がアリアドネを包み込む。

「はぁ、私には分からないな。世界より大事なものは無いのに……」

 魔力レーザーが水を割り、火柱を建て地面を焦がす。

 壮絶な攻撃を見ても誰も怖気づかない。

『あなたくらい超えて行きます。それくらいできないとご主人様に相応しくありませんから』

『本当にシルフはすぐ大口を叩くね。ボクも負けられない』

『でも、どうする?』

『お姉ちゃんに良い考えがある!』


「作戦会議は終わったかな? ってゆーかさ、魔王には勝てないんだから諦めたら?」

『ダーリンが諦めた時は諦めてあげるよ』

「はぁ、私が誘導したと言ってもなぁ、普通こうなるかな? 何でこう、愛が芽生えたんだか? 精霊と人間だぞ?」

 不可解と言わんばかりの怪訝な顔をしている。

『精霊とか人間とか、愛の前には関係無いね。オマエだって魔王なのに親友は勇者だろ? それも十分おかしいことだよ』

「あ? 舐めてんの? 精霊風情が私達を語るなよ」

 見る見るうちに機嫌が悪くなった。明らかに精霊を下に見ている。

「もう時間だ。お遊びはここで終いにしてユウの所に行かなくてはなぁ」

 アリアドネの両手から魔力が溢れる。空気中をアリアドネの魔力が満たしていく。

 絶好のチャンスだ。ノームの作戦はアリアドネに全力を出させ、それを真っ向から潰すという、作戦と言えないような作戦だった。全力で攻撃してくる時なら回避や防御を行えない、ピンチはチャンスだ。

「暗黒に失しろ! ブラックホールアタラクシア!」

 アリアドネの両手の魔力を一つにする。混ざった魔力は黒い渦となって、闇を放出する。

 闇は地面を削り、通り道にあるものを全て飲み込み、膨れ上がっていく。

 巨大な力を前にしても誰も引かない。今、引けば二度と会えなくなるから。それぞれが自身の属性の魔法を撃つ準備をする。体から溢れる魔力が覚悟を物語っていた。

『行くよ』

 4人の魔法が闇と衝突する。闇から飲み込んだ地面や木の破片や石が飛んで来て、傷つけていく。

「属性魔法如きが闇に勝てると思ってんのか? 笑わせるな!」

 アリアドネの怒りと共に闇が力を増していく。

『こんな痛み。ダーリンが私達の代わりに傷ついてくれた分に比べれば、何ともない!』

『ご主人様は、戦闘での痛みを全部背負ってくれましたから、今度は私達が!』

 魔法が闇を押し返していく。

『オマエ言ってたよね。ボク達の力は無限の力だって。闇が無限に飲み込んだってボク達の思いはそれを越していく!』

 闇が飽和し魔法を飲み込めなくなり、闇を押し込んでいく。

『絶対にユウくんはお姉ちゃん達が守って見せる!』

 魔法が黒い渦まで届いた。

「ごめん、ナギ。約束守れそうに無い……」


 黒い渦が崩壊し、アリアドネの目の前まで魔法が迫っていた。諦めて目を閉じ、力を抜いて倒れた。あとは魔法に飲み込まれるだけだ。

「全く……勘違いしてるよ」

 後ろから聞こえた声と同時に魔法が切り裂かれ、散り散りになって消えた。

「久しぶりだね。アリアドネ、僕がどれだけ探したことか」

 ネクサスに肩を抱かれ、受け止められていた。

「ヨハン……」

「ナギは、誰かという誰でも、みんなで、世界を一緒に守って欲しかったんだと思うよ。夫の僕だから、やっと気づけたんだけどね」

「そっか……私、間違えてたのか……」

 アリアドネは満足そうに笑って目を瞑った。

「精霊様、行ってあげて、ユウ君の所に。後は僕がどうにかするから」

 シルフ以外は城に走った。

『ありがとうございます。ネクサス様』

 シルフは一礼した後、追いかけた。


「さあ、来い! ユウ!」

 雨のように武器が降り注ぐ。武器の落下点を予測し、回避する。武器は地面に刺さると消えて行った。

「今の俺には仲間の力がある。止神剣ワールド、硬鎧斧シュウ、信勇槍ロンギヌス、砕切鎌ブライ、救友槌バベル」

 今までの武器とは雰囲気が違う武器がトモヤの周りを守るように浮いている。

「これは信じてくれた仲間の力。最後まで俺を信じて戦い抜いた仲間の力さ」

 トモヤが剣を手に取る。小さな笑みを浮かべ、姿を消した。あの武器が仲間の力だというのなら、姿を消したのはケイスケの時止めを使ったということだ。後ろを振り向きながら花弁を盾にする。

 トモヤの剣が花弁に包まれ体に届く前に止まった。しかし、間髪入れず鎌を振って来る。鎌に花弁が当たると花弁が爆発し燃え尽きていく。

 瞬間移動からの連撃と爆破、攻勢に出る隙が無い。

「それで終わり? 威勢の良さは口だけだね」

 言い返す余裕も無い。少し当たるだけで致命傷になりかねない鎌の攻撃を避けることに集中する。距離を開ければ、延々と武器が降ってくる。回避し続けて疲労させられるだけだ。

「くっ」

 花弁の竜巻を周りに起こす。突っ込んでくれば花弁が身を刻む。一時的な防御手段でしか無いが体勢を立て直すのには充分だ。

 息を整える。竜巻が止まれば武器の嵐だ。どれだけ傷ついても止まれない。

 竜巻が止んだと同時に走る。武器と地面がぶつかる凄まじい音が後ろで聞こえた。花弁を剣にして、トモヤに斬りかかる。

「ううん? ははっ」

 剣はトモヤに当たった。しかし、トモヤには傷一つ無い。マルガリータの力を持つ斧を手にしていた。トモヤが片手で槍を振う。体が槍に吸い寄せられる。ギルバートの魔力操作か!

 槍を剣で防ぐ、槍に触れた部分の花弁が枯れていく。やむを得ず、剣を手放す。

「こんなものか? 違うだろ? 俺達は選ばれたんだ」

 トモヤが槌を持つ、体が重い、重力が何倍にもなったようだ。

「自分は選ばれてなんかない。ただ、みんなと居て、少し前に立っているだけだ」

 力を振り絞る。余裕を見せるトモヤの顔を振り絞った力で殴る。

「いいね、でも、これで終わり?」

 殴られたというのに楽しそうに笑っている。

「天命剣プトレマイオス」

 開いた天井から空で何かの光が見えた。よく見ると剣先だった。城を大きく超える大きさの剣が空から舞い降りてきている。この光景は忘れられない、前はマリスさんが命を使い、やっとのことで剣を止めることが出来た。

「アイオーンの時はマリスさんが止めたけど、さあ、どうする?」

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