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62話 アレルギー魔王

「そろそろみんなが心配なので帰りますね」

 特にシルフとサラマンダーとウンディーネとノーム……あれ? もしかして全員? 放っておくと何をしでかすか分からない。

「そうですか、では、引き続き頼んだものよろしくお願いします」

「あっはい」

 マリスさんの部屋を出るとき、瓶に入れられた一輪の花が目に留まった。不思議と吸い寄せられるような美しく妖しい花、何だろう?

「興味ありますか?」

 マリスさんが瓶を渡してくれる。不思議だ。封がしてある。

「開けるときは注意してください」

 言われる前に開けてしまった。凄まじい刺激臭がする!?

「げほっ、な、何でずがごれ?」

 急いで閉じる。涙と鼻水が止まらない。マリスさんには効いていないようだ。

「この花は魔王化している人には耐えられない程の刺激臭がするんですよ。私は魔王化していないので分かりませんが」

 何だそれ!? そんな酷いメタあってたまるか!? 咳も涙も鼻水が延々と出続ける。

「そんなになるものなんですね。記録、記録……」

 記録取ってる場合じゃないですよね? ね?

「ウタカタノリンネと言うそうです。1度咲いた後は種子を残して枯れる、2度は咲かない、名前はその儚さから来ているそうですよ」

 なるほどなー、自分の魔王の力でも出せるかな。やってみたいけど、自分が一番ダメージを受けそうだな、もし右目に咲いてしまったら大惨事だ。しかし、美しいな……花に心奪われるなんて思いもしなかった……

「砂漠の境目の極めて限られた一部の場所にしか咲かない、貴重な花です。研究するにも数が無くて……何が魔王に反応しているのかさっぱり分かりません」

 やってみるかな、魔王の力を使い、床に咲くイメージをしてみる。床から小さな花の蕾が出来る。蕾が開き花が咲く。

「でぎましだ」

 花粉が魔王の力に反応しているのかな? また鼻水が……

「おぉ、素晴らしいです。もう何本か咲かせられますか?」

 え? この世に地獄でも作る気ですか? ああ、魔王の住み辛い世の中になっていく。言われた通りに10本咲かせるまで返してもらえなかった。


 広場に出るとみんな揃っていた、誰一人欠けることなく自分を待っていてくれてい……るなんてことは無いだろうけど。

「話は終わったか? マリスさんに報告したいことが有ったんだが」

 あら? ヘイとトモヤも来ていたのか。

「お前、何か花の匂いがしないか?」

 流石狼、イヌ科なだけあるな。刺激臭と言わないあたり、本当に魔王にしかアレルギー反応しないのだろう。

「ああ、えっと陛下、少し下がっていてください、ちょっと大変なことになりますから」

 陛下が充分に下がったのを見て、ウタカタノリンネを咲かせる。うわぁ、また目にくる。鼻水が止まらない……

「ごれの匂い、マリズざんの研究の為に咲がぜだんだげど」

「ごれ酷い、何でずがごれ?」

 え!? 魔王にしか反応しないはずの花なのに!? トモヤが鼻水で鼻声になっている。いや、しかし、ただの花粉症かもしれない。確証がない。

「お前ら酷いアレルギー持ってんだな、まあ、日本人らしいと言えばらしいけどな」

「前までアレルギーば無がっだのに……」

『ユウくん大丈夫? 鼻かもうね? えへへ、お姉ちゃんが居ないとダメなんだから~』

 初めてお姉ちゃんらしいことをし始めるノーム。しかし、力の入れ過ぎで鼻が痛い。だが、姉らしいことが出来て嬉しそうだ。

「何なのですか、その花? 陛下をいつまで下がらせておくつもりですか?」

 ルビーが忌々しく文句を言って来る。それもそうだ。花を枯らせる。

「もう大丈夫です、見たかったらマリスさんに言ってください、瓶に入れたものがありますから」

「そうか、マリスに言ってみよっと綺麗だったし」

 陛下はスキップしながらマリスさんの部屋に入っていった。あれ? もしもマリスさんが花を外に出していたら……まあ、もう自分には関係ない……うん!

「では、私も」

「待って! ルビー!」

 ルビーとカオリも陛下に続いた。

「ああ、ユウ、そこで少し待っとけ」

 ヘイはそう言い残し続く。

「では、俺も報告があるので」

 トモヤもそれに続いた……全員入っていったぞ!? 大丈夫なのか? 部屋パンパンになってない?

『待ちましょうか、協力関係は続けた方がよろしいでしょうし』

「そうだね」


「ドラゴン狩りに行くぞ」

 部屋から最後にマリスさんと出てきたヘイの第一声がこれだ。全ての過程が飛んでいる。何故いきなりドラゴンなんだ?

「ドラゴンが陸路に出て商人を襲っているとか、対処、ぜひお願いします」

 なるほど、マリスさんに詳しい説明を貰ってようやく一大事が起きていることが分かる。

「説明なら道中でいいと思ったけどな」

「商人たちは?」

「ああ、逃げきれたってさ、心配すんな」

 まあ、そうか、そうじゃなければもっと慌てているはずだ。

「荷物だけ狙っているらしいぜ、逃げ出す商人には目もくれず荷台を漁り始めたってさ」

「荷物は何が?」

「たしか……食料ですね。果物や野菜です」

 果物や野菜か、草食なのか? そもそもな話だけどドラゴンが肉食ってイメージなのではないだろうか。童話で出てくるドラゴンは人間を丸飲みしていたりするけど、実際は? いや、実際とか言ってもこの世界に来て初めてドラゴンに会ったのだから分かるはずがない。

「何ボーっとしてんだ? 行くぞ」


 一面の砂漠、立て札と柵が無ければ、道に迷って、干からびたミイラになりそうだな。

『ダ~リ~ン、暑いぃぃぃぃぃ』

 ……この焔の精霊、ダメかもしれない。

「サラマンダー、焔の精霊だったよね?」

『そ~だけどさ~、これは暑いよ~』

「おい、お前んとこ、大丈夫なのか?」

「これが大丈夫に見えるか?」

 一番に焔の精霊が暑さにやられてしまった。意味が分からない……焔って日の光よりも何百倍も熱いはずなんだけどな……

「もう、見えてくるぜ、荷台の残骸が」

 無残な荷台の残骸が見えてきた。ラクダっぽい、もうラクダでいいかな、ラクダが取り残されて立ち往生している。植物にしか興味が無いのか? ドラゴンは生物が死を超越したことによって進化した生物、元が何か分かれば対処のヒントになるかもしれない。

「ここからは、俺達だけで行くぞ、荷台壊されてここから歩いて帰るなんて馬鹿馬鹿しい」

 ヘイは荷台から飛び降りた。自分も行くか。


 荷台は粉々に破壊されていた、どんな力なら粉々に粉砕できるんだ……

『すっごく強い何かが居るんだけど……』

「ノーム?」

『あれ? 分からなくなった』

「ノーム、もうちょっと詳しく」

『う~ん、ごめんね、お姉ちゃん、ちょっと何とも言えない』

「ヘイ、どんな奴なのか分かる?」

「さあな、影になったと思ったら荷台が壊されたんだってよ、聞いたのはそのくらいだ、本当に何の気配も無いな、臭いも無い」

 影か……なら上から来るな。

『申し訳ありません、空気中にはそのような気配は感じられませんでした』

 仕事が早い、しかし、また、デミウルゴスみたいな感じなのか? それは嫌だな。

『ユウくん! ユウくん!』

 ノーム?

『違うんだよ! ユウくん!』

 何が?

『空気中じゃなくて地中なの!』

 その直後、地鳴りと共に地震が起きる。地中? 嫌な予感しかしない。

 荷台が吹き飛び大きな塔? が地面から出てきた。ダンジョン? レイドイベントじゃなくて?

「おい! それ、ドラゴンだ!」

 ……は? そんな馬鹿な!? 見上げても一番先が見えてないし、まだ地面から出てくる、太さも一軒家丸飲みできるくらいあるぞ!? これで草食なら腹減るだろうな! 砂漠だし! というか、こいつ、ミミズか? ミミズなのか?

「どうする?」

 ヘイを見ると、狼になって果敢に爪を立てていた。猫が柱に爪を立てているようにしか見えない。ドラゴンの方は傷一つ付いていない。

「どうする?」

 ヘイを見る。ヘイも自分を見ていた。

「どうにもならなさそうだな」

 ドラゴンはこちらを攻撃する気配は見せない。草食万歳!

「帰ろう、これは無理」


 無様に帝国に逃げ帰ってきた。あんなものは自然の猛威だ。下手に手を出すと大惨事を起こしかねない。

『良かった、あれと戦うなんて言い出したらボク、無理矢理でもユウを止めないといけないかと思ったよ』

 戦うだけが戦いじゃない……あれぇ? 何か違うような? まあ、いい。戦えないのなら、戦わず解決すればいいのだから。その為には色々と知る必要がある。


「マリスさん、以前にも襲われたことってありますか?」

 報告と共に質問をする。

「ええ、ありました。前回も対処できませんでした、なので、気にしなくても良いですよ」

「前回対処したのは俺じゃないな」

「そうですね。ユウさんがまだ会っていないだけで多くの勇者を抱えておりますので」

 そんなに居るんだ……まあ、今はそんなことどうでもいい。

「同じ場所でした?」

 対処するには生息域を知る必要がある。

「それならこの地図をみてください。出現した場所を記しておりますので」

 地図には出現した場所と襲われた物が記されていた。全ての地点で襲われた物には共通点があった。それは植物が関係していること。まあ、これは分かっていたことだ。大まかな生息域も割り出すことができた。後は協力をして貰えるかどうかだ。

「残飯が必要なんです!」

 ……空気が冷えた。いきなり言ったので完全に変な奴を思われているのかも……

「今日は色々ありましたね。疲れているのなら今日はもう休んでもらって結構ですよ」

 優しい声で労われる。いや、そうじゃない。

「それさえあれば、たぶん、襲われることは減ると思います、どうですか、上手くいけば色々利益が出るかもしれませんよ?」

 2人は疑いの目で自分を見ている。自信満々の笑みを2人に返す。

『凄い。ダーリンが自信満々だー!』

 余計なことは言わなくていいから!

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