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55話 甘々皇帝

 じりじりと狼の群れに追いつめられる。

『ダーリン』

「ああ、大体察した」

「ぼそぼそと何喋ってんだ? 命乞いの相談か? まあ、有り金全てで助けてやるよ」

 ヘイは余裕そうに笑っている。

「ああ、悪い。無いんだ」

「……何がだ?」

「お前に渡すお金」

「……馬鹿な奴だ。やれ」

 ヘイの合図と共に狼が襲って来る。

『獣なんかにダーリンには指一本触れさせない!』

 サラマンダーが自分を包むように焔の壁を展開する。

「きゃうん!」

 犬みたいな声を上げながら焔の壁に跳ね返される狼達。

「懲りてくれた? 獣風情が人間に勝てはずがないんだよ」

 これは余裕過ぎたな。ちょっとイキリ倒してやろう。

「はっ! これでもそう言えるか?」

 焔の壁に裂け目が出来た!?

『ダ、ダーリン!? 壁がー!!』

 焔の壁が破られた……!? 大きな爪と狼の頭が焔の壁の裂け目から見える。

「驚いたか? 俺のこの姿! これを見た奴は泣きながら腰を抜かして許しを乞う。まあ、許すかどうかは俺次第だけどな!」

 崩れる焔の壁の先に3m近い狼の獣人が立っている。大きな鋭い爪から少し煙が出ている。あれで焔の壁を破壊したのか……

「マリス様には悪いけど、お前は八つ裂きだ。さあ、何処まで足掻けるかやってみろよ! ガルルルル!」

 ヘイの雄叫びで狼の鋭い牙が見える。噛まれたらそのまま喰い千切られる。


 凄まじい獣の殺気、ヘイから顔を背けたくなる。ヘイの爪、牙、何処を見ても自分を殺す為にあるように思える。だが、怯んでいられない。ここで死ぬなんて馬鹿馬鹿しい。

「ノーム。地面を自分の体重以上の物が載った時崩れるようにできる?」

『大丈夫だよ! 難しいけどやってみる!』

 地面から小さくミシッと音が鳴った後、ヘイの居る地面が崩れる。どんな相手でも地面にいる限り……

 あっれぇ……何であいつ浮いてるんだ……?

「麒麟って知ってるか? 動物の方ではないぜ。伝説の生物の方だ」

 何を言っている!? まさか……

「気づいたな。俺はただの獣ではない、伝説の生物の能力ってわけさ。どうだ? 泣いて俺に命乞いする気になったか?」

 おい、待て! 何の冗談だ!? 麒麟!? どう対策すればいい!? そんな馬鹿な!?

『ご主人様、肝心なところで焦る男は嫌われますよ』

 ……シルフに言われてハッとする。焦っている場合ではない。

「シルフ。あいつを落とせる?」

『やるだけやってみましょう』

「女との最後の逢瀬は終わったか? ナヨ男」

 なよなよしている男でナヨ男か、ふざけたあだ名をつけてくれる。

「誰が子犬程度に負けるんだよ? そんな面白い奴なかなか居ないぞ」

 本人は気付いてないようだけど、ヘイが少しずつ地面に落ちてきている。ナイス! シルフ!

「はぁ? 誰が子犬ぅぅぅ!?」

 ヘイが地面に落ち、地面が崩れバランスを崩した。

「ウンディーネ、サラマンダー、今しかない、やれる?」

『もちろんだよ! 分からせてやるんだから!』

『ボクのユウをナヨ男って言ったこと後悔させる』

 わぁ……タノモシイナァ……生かしておいてね……

 高圧水流と火炎放射の螺旋攻撃。ヘイは立て直す為に下がるが移動する場所全ての地面が崩れて立て直し切れていない。立て直せないことを察したのか、地面が崩れる中突撃してきた。

「お前らの貧弱な攻撃ごと捻り潰してやるよ!」


「ダメー! 争いは良くないよー!」

 え!? この女性の声、空から!? 突然空から声が聞こえたが、ヘイは止まらない。声の主は気になるけど、突撃してくるヘイから目を離すわけにはいかない。

 空から光の矢が自分とヘイに降り注ぐ。光の矢は地面を爆撃する。爆撃に直撃はしてないけど地面を破壊され立っているのがやっとだ。サラマンダーとウンディーネに攻撃を中止させ、ヘイは突撃を止める。

『誰だ! ボクのユウに攻撃する奴は!』

 自分とヘイの間に誰かが降り立つ、爆撃で出来た煙で見えない。

 首筋に冷たい感触が何かを首筋に突きつけられ背後をとられた。

「動くな」

 この声はルビーか、下手に刺激すると首を斬り落とされる。大人しく従おう。

 煙が晴れてきた。自分とヘイの間に立っている人物が見えてきた。ヘイに向かって何かを差し向けている。ステッキかな? どう見ても魔法少女だ。魔法少女にしてはまあまあ歳が……

「魔法少女! マジカルラブリーカオリン! 参上! みんな平和が一番だよ!」

 ……え、それ、きつくない? 年齢的に大丈夫? 後で死にたくならない?

「動くと殺す」

 大太刀では無いな、メイド服の何処かに忍ばせていた脇差を首の前で止め、いつでも殺せるように構えている。

「動かないので刀を降ろして貰えませんか?」

 ダメもとでお願いしてみる。戦闘を止める為だから降ろして貰えるよね?

「やっぱり気に食わないからコロス」

 無感情な声で恐ろしいことを言って首に刃を近づけ始めた! 何でそうなるの!?

「ダメ! ルビーちゃん! 私達魔法少女は平和の使者なんだよ!」

 ……ルビーも魔法少女なのか!?

「ハッ!? そうでした。このろくでなし憎さに我を忘れて……」

 大丈夫なのか? 強くて暴走しやすいとか、ただのやばい奴なのでは?

「陛下が起床為されました。早く行けグズ」

 何でここまで言われないといけないんだろう、酷くないか?

『ルビー様、いえ、あなた、これ以上ご主人様に狼藉を働くようなら、先にあなたの首を落としますよ。警告するだけまだ優しいですよ?』

 風が吹き荒び、空が荒れる。まさか、これ全てシルフがやっているのか!?

「シルフ? ここは穏やかにね? お願いだから」

『甘いですね。ご主人様。甘々です。ですが、それがご主人様のいいところですね。ええ、私も甘やかしてください、ベッドの中で』

 ……えぇ。

『何でシルフが! ボクを甘やかしてよ!』

 ウンディーネがシルフを押しのける。

「陛下が待っているからさ、うん、この話は後にしよう。うん」


「遅かったですね。陛下がお待ちです。凄く疲れた顔してますね。何かありましたか?」

 何か……襲われまくったけど言えない……

「いえ、特に……」

「そうですか? 陛下が待っていますので、急ぎましょう」

 皇帝の部屋は国で一番高い建物の最上階だそうだ、高所恐怖症なら地獄だろうな。

「えっと……礼儀とかあまり知らないんですけど……大丈夫ですか?」

「一般的なもので大丈夫です。色々な国から人材を集めていますから。陛下もそこまで気に掛ける方ではありませんから」

 大国の皇帝……どんな人物なんだろうか。大層寛大で威厳のある人物なんだろうなぁ……

『お姉ちゃん達が居ても大丈夫、マリスさん?』

「ええ、陛下もお喜びになるでしょう。この先に陛下が居られます。心の準備は出来ましたか?」

「え!? え!? ちょっと待ってください。深呼吸をして呼吸を整えてから……」

「では、開けますね」

「ええ!?」

 ドアを開けた。問答無用なんですか!?

「おはようございます。陛下」


「うむ。おはよーマリスー。おやつ食べたーい!」

 ……身構えたのはいいけど、思っているより緩い、というか幼い? あと皇帝は女性なのか。

「おやつですか? 甘い物でよろしいですか?」

「もちろん、我、マリスの甘い物好きー!」

 というか幼女なんだけど……ベッドが一つありその上に幼女が居る。この幼女が皇帝なのか……

「あれは誰?」

 皇帝は自分を指差している。

「あの人はユウさんです、ネクサス殿を倒したお方です。今日から陛下の下で働くことになりました」

「わー、それ凄くない? すっごく弱そうだけど」

 もう弱いって言われ慣れたよ。そんなにオーラ無いかな……取りあえず挨拶しないと。

「よろしくお願いします。ユウです。陛下」

 跪く。

「うん、よろしくー」

 うわぁ、緩ーい。

「良かったですね。ユウさん。陛下があなたの事を認めてくださりましたよ」

 何とも言えなーい。

「陛下、お召し上がりください」

 マリスはケーキっぽい食べ物を陛下に渡し、自分に向く。

「この国の皇帝、ベアトリーチェ陛下です。寛大なお方です。陛下に忠誠を誓ってくださいね」

 仮面で表情が見えなくても声から分かる、マリスさん凄く嬉しそうなんだけど……

「ごちそーさまー。もう一個食べたい!」

「陛下、あまり食べ過ぎると料理人に私が怒られます。ご自重を」

「うー、けちー」

「はぁ、ダメです」

 ダメと言いながら次のケーキを用意している。ダメな父親と娘みたいだ。何を見せられているのだろう……

「これで最後です。ディナーはしっかり食べてくださいね。陛下」

「ありがとー、マリスー、流石我の最高の臣」

「いえいえ」

 ……甘えに弱すぎでは?

「ユウさんも分かりますよ、じきに、ね?」

 怖いことを言わないで欲しい。サラマンダーの視線を感じる。もっと甘えればいいのか、みたいな顔しない!


「緊張しました。はい」

 部屋を後にする。皇帝の威厳を気にしているかもしれないと思い嘘を吐く。

「嘘はよくないですよ。すぐ分かります。陛下の愛らしさを前にして緊張しているわけがありません」

 緊張していないのは、そういうことではないんだけどなー。

「今日はもう休んでいただいて構いません。明日はあなたの能力を測りましょう。朝迎えに行きます。まだ、土地勘も無いでしょう」

「あっはい」

「部屋の場所が分からなくなりましたら、私の所に来てください。私の居場所ならそこら辺の誰かに聞けば分かるでしょう」

「ありがとうございます」

「お疲れ様でした」

 マリスさんが去り、自分達だけになる。

「みんなはこの後どうしたい?」

『食事と買い物が良くない? ダーリンは枕買わないと、寝られないでしょ?』

 枕は拘らせてもらおうか。

『そうしよう。ボクもボードゲームの一つくらい買いたい』

『調味料も調べておかないといけませんね。調味料が変われば全く味付けが変わりますから』

『お姉ちゃんは……お腹空いたからご飯食べたい……かな、えへへ』

 もう夕刻だ、お昼は荷台でシルフのお弁当だったし、この国の食べ物も食べてみないとね。

「まずは買い物をしようか。そして、何処か食べに行こう。それでいい?」

『うん!』

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