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54話 帝国の勇者達

「ユウ。占いをしてみません? 私、占いが趣味なんです。当たると姫から評判なんですよ!」

 屋敷を出る直前、ソフィアがテーブルにカードを並べている。

「タロット占いです。知りません? 元々は勇者の誰かが伝えたものなんですって!」

「タロットは知っているけど、ソフィアは国に帰らなくていいの?」

「はい! モニカちゃんが居ますし、アメジスト様も起きてきませんし、ユウが返って来るまでは居るつもりです」

「……いつ帰って来れるか分からないのに大丈夫なの?」

「……はい! それより占いませんか?」

 迷いが見えた。後先は考えた方がいいと思うけど。

「あ、お願いします」

「これからのユウの無事を占いますね!」

 え!? それは碌な結果ではなかった時、悲惨なことにならない? 今から遠出だよ!?

「これですね! あっ……」

 審判の逆位置……意味は後悔、再起不能……

「えっとですね……まあ、何とかなるって意味です。大変ですけど……」

 しどろもどろになりながら目を泳がせお茶を濁し始めた。

「いや、意味知ってるからね!? これかなり悪い方だよ!」

「ごめんなさい! だってこれを引くとは思ってなかったんですー!」

 再起不能……先行き不安だ……


 帝国に向かう為に城でマリスさんと会う予定になっている。

「よお。今日から帝国行きだろ? その前に倒したドラゴンのこと聞きたくないか?」

 キルケーが城の中で待ち構えていた。

「聞きたいです」

「ふっ。いい反応だ。教えてやるよ。素人には分かんないだろうからテキトーに言うぜ。あれはこの世界のものではねーぜ」

「……自分の世界にはドラゴンなんて居ないぞ」

「さあな。少し調べただけで、魂を他の世界に移せるわ、魔力は凄まじい構造をしているわ、能力を模倣したりできるわ、で何をどう調べればいいかこっちにもわかんねーよ。まるで神だな」

 神ねぇ……

「そういうことだからよ。アリアドネは帝国から帰って来るまで借りとく。まあ、奴も協力的だから、帰って来るまでにはなんとかする」

 帰って来れるか分からないんだけどな。

「では、自分は行きますね」

「ああ、行ってこい」

 マリスさんのもとに向かう。


「あれで良かったの? キルケーちゃん。彼、帝国に行くんだよ?」

「知るか。ネクサスこそいいのか? あいつのこと気に入ってたんだろ?」

「まあね、寂しいよ。トラブルメーカーだったけど居ないとね。彼が行ったら帝国がとんでもないことになったりして。先代皇帝様」

「その名はもう捨てた、今の私はただのキルケーだ。血が繋がっているからこそ情はあるけど、私はあの国に興味は無い。いや、案外、帝国ごと抱えている問題きれいさっぱり消してくれるかもな」


 城のマリスの居る部屋に入る。

「お待たせしました。マリスさん」

「大丈夫です。よく来てくれました。歓迎します」

 歓迎か……従わなければ極刑なのによく言うよ。

「馬車を用意しております。行きましょうか」

 馬車に向かいながら話は続く。

「一つ聞いていいですか?」

「いくらでもいいですよ」

「何で自分なんです?」

「噂を聞いたからですよ。ネクサス殿を倒した者が現れたと。さあ、行きましょう。国で陛下がお待ちしております」

 城から出て馬車の荷台に乗り込む。

「クッションをどうぞ。かなり長いので無理は禁物です」

「これはどうも、丁寧に」

「出発してください」

 マリスさんの指示で馬車が出発する。


「お仕事のお話をしましょうか」

 人通りも無く殺風景な道を進む中、マリスさんが話を切り出す。

「ここでなら誰にも聞かれないでしょう。ユウさん。あなたには帝国に潜む裏切り者を見つけ出してください」

 ……反応し辛い。なかなか難しいことを言われてしまったぞ。

「聞いたことありませんか?  帝国を名乗り暴れている連中が居ると」

「有ります。というか会ったことも……」

「それを率いているあのお方という人物が帝国に潜伏しているようでして、それを見つける事が主な仕事となります」

 ……悪縁もいいところだな。

「何人も同じ任せたのですが消息不明になり誰一人帰って来なかったのです、ですが、まあ、あなたなら大丈夫でしょう」

 随分と適当だなぁ。

「着くまでにまだまだ時間がありますのであなたのこと、話して頂けますね?」


 全てを話し終える頃には地面に草木が無くなり砂漠に近づいていた。

「近くの町で乗り物を変えます。砂漠を往くので少し多めに水も持っておくといいでしょう」

「……砂漠!?」

「バールは砂漠の中央にあるので服装も注意してください。あ、私は大丈夫です」

 ……紳士服にアンダーウェアで砂漠って大丈夫なのか?

 町に寄って水を買う。砂漠……どうなんだろうか……

『水ならボクが用意してあげるのに』

「いや、それは、ちょっと……」

 ウンディーネの水……聖水……良からぬ妄想が……

「その方が精霊ですか?」

 マリスさんがウンディーネを見ている。

「そうですけど」

「ああ、いえ、珍しいので。砂漠は大丈夫でしょうか? あと、日光を防ぐ羽織るものがあった方がいいですよ」

 マリスさんは先に行った。

「大丈夫?」

『ボク達なら大丈夫だよ』

 羽織るものを買ってマリスさんを追いかける。


 ラクダみたいな生物に荷台を引かせ荷台に乗って移動するらしい。

「砂漠は蹄鉄が熱を持つので火傷してしまってダメなんです」

 馬車と言っていたけど厳密には馬ではないが、ほぼ馬だな。そうか、砂漠は行けないのか。

「国に着いたら、まずは私の部下を紹介します、その後に陛下にお目通りといきましょう。本筋の任務はあのお方を探すことですが、気取られない為に他の仕事もしてください。もちろん、報酬は出しますので」

 大変そうだ、ニートの勇者をやってる頃は楽だったな……

「見えてきました。あれがバール帝国の首都です」

 荷台から外を見る……は!?

 超大型ショッピングモールくらいの大きな建物が見える。何だあれ!?

「あの建物の頂上に陛下が居られます。建物に頑張って機械を取り入れているのですが、まあ、魔法には敵いませんね」

 ……いや、現代でもこんな大きさの建物は滅多に無いよ。

「あそこが今日からあなたの仕事場です」

「え……何で砂漠にこんな大型都市が……!?」

「近くには海があり輸送も便利、鉱石も多く取れるので都市としては素晴らしい立地です。まあ、ここまで栄えたのは代々の皇帝の力の賜物です」

 自慢げだ……うん、これは自慢していいと思う。

「さあ、もう少しで着きますよ。降りる準備をしてください」


 荷台から降りる。砂に足が埋もれる。

『うわぁ!? ダーリン!?』

 砂に足を取られたサラマンダーが抱き着いてくる。

「大丈夫? 気をつけてね」

『えへへ、ありがとー。ダーリン』

 マリスさんは手続きをしている。

『ご主人様。一つお耳に入れておきたいことがあります』

 シルフが怪訝な顔をしている。

『マリス様から心音が聞こえません』

 ……うん?

『私が空気を通して心音を聞くことが出来るのはご存知ですよね?』

 アルベドの時とかやってくれていたよね。

『マリス様からは心音が聞こえないのです。これがどういうことを意味しているかは分かりませんが、ご主人様に』

「ありがとう。シルフ。覚えておくよ」


 街を歩く。商人だらけだ。

「ここは商業区です。見ての通り、お店が多く、様々な専門店があります。行商人も多いですね。どなたでも申請すれば商売出来ますが、まあ、あなたは、皇帝に仕える身になるのでやめておいてくださいね」

 商業区画か……調味料の専門店もあるな。シルフが喜びそうだ。暇な時に行ってみようか。

「他にも居住区、工業区などがありますね。あなたは、居住区ではなく、城の一室に住んでもらいます。いつでも動けるようにということです」

「……あれは奴隷ですか?」

 一つのお店で人の首から値札がぶら下げている。

「そうですね。この国は形はどうあれ力が無ければ生きていけません。力が無ければ仕事がありませんから。ですが、才能を得ることが出来れば、すぐに成り上がれるのもこの国の特徴です。今は富豪でも昔は奴隷だったという者も居ます。まあ、皇帝の元、国が管理していますので非人道的なことは無いと言っていいでしょう」

 職安みたいになっているのか……それもそれで嫌すぎる。屈強な男が俺を買ってくれと言っていてどう反応すればいいか分からない……


「ここで待っていてください」

 皇帝が居るという建物に入り大広間に通された。部屋を眺める、広いし金属が多いな。

「お待たせしました」

 マリスさんが数人を引き連れ部屋に戻ってきた。

 砂漠なのに黒いコートのワイルド系な男、真っ赤な髪のメイド服に身長よりも大きい太刀を背負ったエルフと手鏡を見ているギャル、そして、平凡な感じの少年の4人。

「ヘイさんとルビーさんとカオリさんとトモヤさんです。彼らが私の直属の部下です」

 誰も何も言わない。

「彼はユウさんです」

 一瞬でルビーが太刀を抜き首筋に突き付けた。鮮やかな太刀筋……

「貴様が姫を妹を誑かした勇者か!?」

『ユウくん、彼女、どうやら……サファイアのお姉ちゃんかな?』

 一人称がお姉ちゃんの人がお姉ちゃん言うと混乱しかねない。

「えっと、誑かしてないので降ろして貰えませんか?」

 手を上げて弁解してみる。いきなり抜刀しているし弁解が通用し無さそう……

「貴様の事が書かれた手紙が来たきり、一通もサフィから手紙が来なくなった! 姫達に指一本でも触れていたら、その首を飛ばす!」

 興奮している。一緒に住んでいた、なんて言ったらすぐ首が飛ぶだろうな。

「いや、そんなことはシテナイデス。ハイ」

 急に太刀が下に……後ろから引っ張れた。

『忠告をさせていただきます。サファイア様のお姉様であってもご主人様を傷つけるというのなら容赦なく貴方を吹き飛ばしますから』

 シルフは自分を抱き締めながら、風で太刀を押さえつけている。

「くっ! 体が動かない」

「はいはい、もうおしまい。仲良くね!」

 ギャルのカオリがルビーを宥めている。

「よろしくお願いします。俺はトモヤ」

 普通な少年のトモヤが挨拶をする。

「よろしくお願いします。ユウです」

「チッ。ヘイだ」

 最後の黒コートのヘイが挨拶をするとマリスが間に入る。

「挨拶も済みましたし、陛下のお目通りと行きたかったのですが、今は陛下は就寝中ですので。その間にヘイさん、城内を案内してあげてください」

「何で俺なんだ? 他の奴でもいいだろ」

「あなたしか暇な人が居ません」

 不満げなヘイに暇と言い放った。

「チッ、しゃあねぇな」

 舌打ち、歓迎されて無いな……ここまで露骨だと少しは傷つく。

『嫌な奴だね。ユウがこんな奴ではなくて良かったよ』

「あはは……」

 ヘイに聞こえなくて良かった。

「では、解散しましょう。あとはお願いします。ヘイさん」

 え……マジ? 初対面の人に任されるの? コミュ障の自分にはきつ過ぎですよ?

「おい!  早く行くぞ!」

 ヘイに急かされ部屋を出る。


「ここがお前の部屋だ。鍵は魔法認証式だ」

 部屋に入ってみる。広い、マリスさん、5人で暮らせるように調整してくれたのかな。

『キッチンの設備もしっかりしてあります』

『ベッドは一つしか無いね』

「自分はソファーで寝るからいいよ」

『もう!  みんなで寝ればいいでしょ?  ダーリン』

 各々が部屋を見る。快適に過ごせるな。

「チッ。次行くぞ」

 外で待っているヘイがイライラしている。急ごう。


 次は商業区を案内してくれるらしい。こっちでの生活に必要な物を買い揃える為にお店の目星をつけておこう。

「お前、金持ってんのか?」

 ヘイが突拍子も無い質問をしてくる。

「まあ、有りますけど」

「そうか」

 なんなんだろうか……

「なら有り金全部置いていけ」

「は!?」

 物陰から男達が現れる。周囲を見渡しても男達以外に人影は無い。

「ワオーン!!」

 え!?  ヘイが吠えた……何の真似だ!?

 すると、男達が狼に変身していく!?

「運が悪かったな。俺に目を付けられたんだ。この国ではそれだけで終わりなんだよ」

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