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番外編3話 幕間 勇者で魔王

「ふぅ……」

 帝国の食客になる事を知り、部屋の片付けをする。必要最低限の衣服の準備と掃除だ。……相変わらず物が少ないな、前はスマホ一つあれば全く物が要らなかったし、無頓着過ぎるのか?

『ご主人様。お茶の準備が出来ました。休憩にいたしましょう』

 シルフが部屋に入って来た。

「シルフの方は?」

『私は日頃から片付けて居りますので。怠惰なご主人様は自身のことに集中してください』

 無表情で棘を刺してくる。言葉だけでは信憑性に欠ける。

「シルフの部屋が見たい!」

『はぁ、女子の部屋を見たいなんて』

 シルフ一息置いて大きく息を吸う。

『変態ですね。途轍もないド変態ですね』

 真顔の罵倒……癖に……いやいや……

『まあ、見ることは構いませんが、お茶が冷めてしまうので、手短にお願いします』


『ダーリーン!  助けてー!』

『ユウくーん!  お姉ちゃんもうダメー!』

 片付け苦手勢が抱きつき泣き言を言っている。

「無理」

『そうです。ご主人様はこれから私の部屋に来るので忙しいのです』

『ボクも同行させてもらおうかな』

「ウンディーネは掃除は終わった?」

『もちろん、ボクの部屋も見るに来る?』

『私の部屋が先ですよね?』

 2人の視線がバチバチと火花をあげている。

「分かったから喧嘩しないで」

 この2人手がかかる。


『どうぞ』

 モノクロを基調とした家具で統一されていて綺麗に纏まっている。自分の部屋と構造は同じなのに、ここまで変わるものなのかぁ。

『どうですか? 私の部屋は? ご主人様が宜しければご主人様のお部屋も改造しますよ』

 自分の部屋がこんなお洒落な部屋になってもいいのか?

『ユウはこんな暗い部屋なんかよりボクの部屋みたいなお洒落な明るい部屋がいいよ。ボクが改造してあげるよ』

 ウンディーネも部屋もあまり見たことが無いから気になるところだ。

『あなたの雑多な部屋はご主人様みたいなシンプルが好きな人とは合わない気がしますけどね』

 いつの間にかシンプル好きにされていた。

『それはボクの部屋を見て無いからだよ。絶対にボクの部屋の方がユウは好きになってくれる。こんな殺風景な部屋よりね』

 そもそも帝国に行くから部屋を模様替えしても無駄なんだけどね……

『早くボクの部屋に来てよ!』

 ウンディーネが腕を引っ張る。


『どう? ボクの部屋は!』

 雑貨やボードゲーム等がお洒落に飾ってある。少し物が多いけど、楽しく明るい部屋だな。

『物が多すぎて落ち着きませんね。少しは邪魔な物を減らした方が良いですね』

『まあ、おっぱいも無い奴には分からないかな?』

 あっ……

『その無駄な肉、ご主人様が好まれているとでも? 時代はスレンダーですから』

 一触即発な空気……おっぱいが嫌いなんて一言も言ってない……

「冷める前にお茶にしない?」


『どうぞ、ご主人様。お茶です』

『はい、ユウ、ボクが作ったお菓子だよ』

 自分を挟んで喧嘩が始まった。お茶とお菓子を口に押し付けられる。

『ダーリン、どうしたの、これ?』

「分からない……何でこうなったんだか……」

『ユウくんが優柔不断だからかなってお姉ちゃん思ったり……』

 う……痛い所を……

 2人を宥めるのに時間がかかった。

『……今まで色々ありましたね』

 今までか。転生してからの事を思い出し整理するのもいいだろう。

『初めてセツナ様とお会いした時、セツナ様はアルベドの封印を解きに行っていたようですね。ということはあの頃からかなりの強さをお持ちだったのですかね?』

「どうなんだろう。生涯病気で動かなかったって言っていたからかなり鍛えたのではないかな?」

 セツナ君との戦いを思い出す、熱く正義を語るセツナ君に乗せられ暴走してしまった自分が恥ずかしい……普段なら絶対にあんなこと言わないはずなのに……ついでに変なことを思い出すし……

『子供っぽくてユウくん可愛かったよー』

 うん、反省しなければ……

『でも、ダーリンもかなり強くなってない? サフィがあんなに強いことも驚きだったけど』

 サファイアとの特訓を思い出す、何度蹴られたことか、おかげで自分も蹴りのコツを少しは理解できたけど、代償は大きかった。

「エルフって身体能力が高いんだな。ソフィアも強かったし。ソフィアの国の女王のセレーナも強かった」


『ユウはさ、ギルバートとかの帝国の名を騙っていた奴らの事をどう思う?』

 ヴェロニカの村を襲ったギルバートとイライアス、そしてソフィアの国を襲った少年と中年の二人組、そして、全て謎のあのお方、これから帝国に行くことになったし、嫌だが運命を感じる。

「さあ、目の敵にはされているだろうし、気は抜けないかもね」

『目的は何だろう? 帝国を潰すことなのかな? でも、そんな回りくどいことをしなくてもいいと思うけどなー』

 あれだけの勇者が居て、大量にゴーレムを作り出せるのに正面切って戦っても勝てない程、帝国は強力な国なのか? 帝国のことを少しでも調べてみるべきだったな。

『まあ、アリシア様のお父様のカミール卿も帝国を恐れていて、アルベドも帝国を牽制していたので、かなり大きな国なのでしょうね』

『ユウくん、そんな国にスカウトされるなんて凄いね!』

 暢気だな……まあ、気が楽でいいか。

『どんな陰謀があるかは分からないけど、ボクとユウなら乗り越えて行けるよ』

『せめてそこは私達でしょ! ね? ダーリン?』

 みんなが居てくれればどんなことでも乗り越えて……うん、そうだな。


『それより問題なのはユウが魔王化したことだよ。大丈夫、ユウ!?』

「……今日朝起きるとベッドが華で覆われていた」

 ……事実なんだけどみんな笑いを堪えている。

『ぷっ。冗談がきつ過ぎますね。ご主人様にしては面白いですよ』

「いや、冗談ではなくて事実なんだけど」

『それは大変だよ! 今日から寝るときはボクが一緒に寝てあげるから!』

 ……心配してくれているからなのか下心からなのか、前者であって欲しい。

『『『……は?』』』

3人の顔色が変わった。

「魔王化の話に戻らない?」

『大事な話だからダーリンは少し静かにしてて!』

「……はい」

 結局、自分の魔王化はコントロールも有効活用も出来そうに無いな。


 言い争いが終わり、改めて話を切り出す。

「ダグザ王の暗殺についてさ、少し聞いてほしいんだけど」

『分かりました。纏まらない頭を話して整理したい、ということですね』

「ああ、自分はさ、あの事件の犯人がニグレドとあの勇者の2人だけだとはちょっと思えなくて」

『えっと、どういうこと? ユウくん』

「ダグザとリーベルでは距離が結構な離れているよね? アルベドは他の国からダグザに向かったらしい、アルベドが着いた時には魔王化が起きていて周りは全滅していた、そして、その直後にネクサスさん達が到着。時間がカツカツなんだよね。でも、ズレが起きることは無かった」

『時間通り正確に出来たとしてもアルベドが遅れる可能性もあったはずですね。そう考えると不思議なくらい上手く行ってますね』

「思ったのはアルベドを監視して報告する役とダグザ王を襲った役と最低限2人いるのではって」

『組織的な犯行ってことだね』

「うん。やっぱり、引っかかる。けど、主犯を捕まえれば全て明らかになるはず、マリスさんも手を貸してくれるって言ってたから何とかなるかな」


「そろそろ話して欲しいことがある。何で自分のことが好きなんだ? おかしくないか? こんな奴と契約を結んでくれるなんて」

『……まあ、いいでしょう、話しても。たぶん、全員同じ理由でしょうし』

「全員同じ理由?」

『ご主人様と契約をする少し前のことです。突如としてある記憶が送られてきました』

「……記憶が送られる!?」

『ええ、最初は混乱しました、良く分からない男と一緒に居る記憶がいきなり頭の中に入り込んでくるのですから』

 良く分からない男か……

『ですが、嫌な記憶ではありませんでした。暖かくて胸が苦しくなるほど、愛してやまない記憶、それまで何もなく退屈だったのに、それを見てからは会いたいと思って夜も眠れませんでした』

「どんな記憶だったの?」

『ご主人様と一緒に戦ったり日常を過ごした記憶です。今までのことですね』

 ……今までの記憶を先に持っていたのか。

『どれだけ作為的なものであれ、この気持ち、この胸の高鳴りは嘘ではありません。確かめてみますか?』

 シルフが近寄り頭に胸を近づけてくる。シルフはウンディーネ達に力づくで止められた。

『ダーリン、確かに始まりはあれだけどね、その時より今はすっごくすっごくダーリンのことが好きなんだ!』

『ボクは最初から運命を感じていたけどね。ユウが運命の人なんだって……ふふふっ』

『お姉ちゃんもだよ! えっとえっととにかくすごく大好きだから!』

 ……みんな。

『ボク達が居ないとユウはダメだからね。本当はボクだけを選んで欲しい、でも、我慢する。だから、たまには、1人だけを見てよ。ユウ』

「本当に……うん、ありがとう。愛してる」

『それなら、掃除助けて! ダーリン!』

「あ、それは無理」

『ダーリン!?』

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