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52話 華麗と憎悪の魔王

「終わりのようだな」

 アルベドの余裕の勝ち誇った声が聞こえる。師匠が心配して駆け寄ってきた。少し冷静さを取り戻した。

「ユウ! ユウ!」

 出来るだけアルベドに聞かれないような小さな声で師匠に返事をする。

「自分は大丈夫です。とりあえず師匠、静かに聞いてくれませんか?」

 師匠は自分が冷静に応対してくることに驚きながら小さく頷いた。

「この部屋からみんなを逃がしてくれませんか? あと、ついでに腕も」

 あとで師匠に腕をくっつけてもらうしかない。

「ユウは、どうするつもりなんですか?」

 こんな余りにも酷い状況、師匠は一緒に逃げて腕を治したいと思っているのかもしれない。

「決まっていますよ」

呼吸を整え、大きく息を吸う。


「アルベドに勝たないと」


 師匠は自分がもう助からないといった形で自分を残してみんなを連れて玉座から出て行ってくれた。

「見捨てられたか、愚かだな。力の差も分からないとはな」

「さあ? どうだろうな? 力の差なんて動き方次第でいくらでも縮むものだけどね」

 フラフラしながら立ち上がる。やっとバランスが取れるようになってきた。

「動き方も無様なものだな。まだ戦う気か? 片腕が無い状態でどうするつもりだ?」

 ああ、余裕そうだな。

「右腕も差し出そうか?」

「何!? 貴様どういうつもりだ!?」

 流石にぶっ飛んでいるな。しかし、アルベドへの精神攻撃は効いているようだな。

「いや、別に戦うのに腕を使わないからさ、もっていっていいよ?」

 アルベドの顔が強張った。壊れた玩具を見るような哀れみと恐怖の眼差しを向けている。

「ああ、そうさ、壊れているさ。最初から。どうでもいいんだ、自分のことなんてさ。さあ、まだ、戦いは始まったばかりだろう? 楽しもう」

 目を瞑る。位置関係はシルフが教えてくれる。光を目で追っても仕方がない。空気の流れでアルベドの場所を捕捉すればいい。シルフのおかげで分かったことが有る、アルベドの移動先はアルベドが移動する前から空気の流れが変わっている。たぶんアルベドは体の一部を光にして先に送っているのだろう、その場所が安全かどうかの確認も兼ねて。

 空気の流れが変わった場所に爆撃を仕掛ける。

「ぐっ!? な、俺様の動きを読んだだと!?」

 アルベドが爆撃に直撃し驚いている。正解か。

「かわさないと次々行くけど?」

 アルベドは自分を指差した。

光輝、直射、閃光リュミエール・デ・ソレイユ!」

 シルフが風で自分の体を動かし回避させようとするが、右肩に直撃し、右腕が玉座から飛んで出ていった。アドレナリンが出ていて痛みは感じない。まあ、いい、後で師匠に治してもらおう。

「これでバランスが良くなったな!」

 明るく笑顔でアルベドに話しかける。

「!?」

 アルベドの顔が引き攣った。

「もう終わり?」

 精霊達が壁を作り上げる。アルベドは玉座の壁を添うように出来上がる焔の壁に目が釘付けになっていた。

「貴様! 何のつもりだ!?」

「さっきもそんな言葉を聞いたよ。逃げられないようにしただけだろう?」

「違う! 焔の壁の裏に土で壁を造っているだろう!」

「あらら、バレたのか」

 目聡いな。焔の壁の裏に土の壁を造っておいたことが一瞬でバレたらしい。

「部屋ごと焼けば逃げられないでしょ? いやぁ、頭が良くて困るなー」

 普通に考えれば、自分も焼け死ぬから凄く頭の悪いゴリ押し作戦だけどな。まあ、煽れるだけ煽っておこう。

 アルベドの後ろから光輪が出来る、そして、自分に向けて指を構える。なるほど、やられる前にやるってわけか。

光輝、直射、閃光リュミエール・デ・ソレイユ拡散、反射、光輪(アルベド)!」

 続けざまに2連か……

 まあ、もう当たることも無いけど。


 全ての光は自分に命中することなく通り過ぎていった。

「何が起きている!?」

 アルベドは慌てふためいている。自分は動いていないのに光が自分に全く当たらない。何度撃っても当たらない。簡単なことだ、アルベドと自分の間にある水の壁が光を屈折させているからである。

 水の壁はアルベドが焔の壁に目を取られている間に作っておいた。作戦の本命、焔の壁の裏の土の壁が見破られるとは思わなかったが、本命はバレなくて良かった。

 アルベドからは自分の居場所が屈折して見え、光も屈折するという、攻撃までに2重に屈折している状況に砂埃と焔、当てることが出来るわけが無い。

拡散、反射、光輪(アルベド)!」

 どれだけ撃ったところで当たらない。自分に当たらないようにウンディーネが屈折を水の壁をコントロールしているのだから。

「貴様!」

 自分の目の前の空気が乱れた、目の前に出て攻撃する気のようだな、屈折させているはずなのに目の前の空気が乱れたということは、光にして先行させた体の一部で周囲を感知しているのか。

 目の前にアルベド本体が現れた。

「貴様! 水の壁で屈折など小賢しい真似を!」

 小賢しい真似か……分かってるさ……弱いからさぁ、使える手は使うだけだっての!

「みんな、いける?」

『もちろんです。ご主人様』

『大丈夫、ダーリン!』

『ボクの準備は出来ているよ、ユウ!』

『ユウくんの為ならいつでもお姉ちゃんは頑張れる!』

 アルベドの蹴りが迫っている中、精霊達はアルベドの方を向き魔法の準備をする。


『『『『「四属性勇者砲撃エレメンタリー・ブレイブリー・ブラスト!」』』』』


 精霊4人がそれぞれの属性魔法をアルベドに放つ。蹴りの最中だったアルベドはかわすことができずに全弾命中し、焔の壁まで押し込まれる。

「今なら降参してもいい、全てを白日の下にさらし謝罪するのならだけどな、どうする?」

 魔法と焔の壁にサンドされ苦しむアルベドに降参を促す。

「黙れ! 貴様に! 貴様に! 屈する俺様では! 無い!」

 凄まじい痛みのはずなのに何故そこまで頑なに謝らない。

「一国の主が過ちを犯していると知られる訳にはいかない! 王は完璧で清廉であり続けなければいけない! その苦労が分かるか! 俺様にあんな過ちがあってはならない!」

「それはお前の身勝手だ!」

「黙れ! それほどのカリスマが無ければ国は成り立たない! 貴様に! 貴様に! 分かるか!」

 アルベドの体が分裂し光になり部屋中を反射し駆け巡る。

「絶対に! 貴様は! 貴様は!」

 みんなは魔法を撃つことを止め、構えている。

「哀れだな、両腕を奪った相手に追いつめられるなんて」

 単調に話す。感情的に煽るのではなく、呆れたように。

「無様だな、雑魚だと言っていて奴に追い詰められるなんて」

 体は動かさない、いや、歩くことすらできないのだからそのままでいい。

「でも、お前は自分に負けるんだ」

 上から光を感じる。今までと比べ物にならないほどの強烈な光、アルベドは持てる力の全てをここにぶつけてくるつもりだろうな。

「黙れー!」

 アルベドの雄叫びと共にレーザーのように光が降って来る。

「これで……終わりだ!! 星彩、直射、曙光リヒト・デェア・フェアファル!」


「みんな、これが最後だ、いける?」

 静かに頷いてくれる。上に居るアルベドと迫るレーザーを見る。レーザーは平屋くらいなら飲み込むほどの幅だ。

『『『『「四属性勇者砲撃エレメンタリー・ブレイブリー・ブラスト!」』』』』

 4の魔法がアルベドのレーザーを押し返す。精霊4人の最大出力と拮抗した。


 だが、直ぐに精霊達の魔法が押し込んでいく。

「ああ! 貴様は! 貴様は! 何なんだ……」

 レーザーを押し返し4人の魔法がアルベドを飲み混んだ。


 魔法を止めると、アルベドが落ちてきた。

『……呼吸はあります……ね……すみません。力を……使い果たして……しまいました……』

 シルフをはじめにみんな自分にしがみつき寄りかかる。

 焔の壁と土の壁が崩壊して、師匠達が入って来た。


「ユウ! 大丈夫ですか!?」

 師匠が自分の両腕を持って近寄り、治し始めた。治療を受けるために精霊達を横にする。

「お互いに息はあります。やりましたよ」

「馬鹿です! こんなにボロボロになって……どれだけ心配させれば気が済むのですか!?」

 師匠は泣いている。この涙は悲しいだけの涙ではないはずだ。

「大丈夫ですよ、自分は腕が取れようが足が取れようがみんなが居てくれれば勝てますから」

 師匠に腹を殴られた。

「自身の身を大事にしてください。だから馬鹿なんです!」


 アメジストと魔力を使い果たしたアメジストを支えているサファイアが倒れたアルベドの前に立っている。

「アメジスト」

 アメジストは自分に振り向かない。

「……何かしら?」

 素っ気ない。

「自身の身は大事にしろよ。アメジストは自分と違って死人ではないからさ。アメジストが死ねば自分が復讐してくれるって思ったんだろ? 合ってるよ」

「そう。なら良かったわ。ごほっ」

 アメジストは素っ気ない態度を貫いている。

「アメちゃん? 凄い汗ですよー? 大丈夫ー?」

「ごめん、サフィ、玉座に入ってから目眩が酷いの……」

 アメジストが膝をついて咳き込む。アメジストも魔力を使い果たした後だ、あまり良い予感はしない。


 アメジストの咳は止まらず震え始めた。自分の腕の治療を終えた師匠がアメジストのもとに向かう。

「大丈夫ですか? アメジストちゃん?」


「来ないで!」

 アメジストがサファイアを突きとばし、師匠が来ることを制した。次の瞬間、サファイアの居た場所から刺すように鋭い木の根が飛び出してきた。

 玉座は地上よりもかなり上にある。木の根が地面から下の階を貫いて出てきたとは思えない。

「そんな……何で……私が……私は……」

 アメジストから凄まじい魔力を感じる。おかしい、アメジストは元々魔力を多く持てないはずだ。

「ユウ! アメジストちゃんは魔王化しているかもしれません。今なら止められます、手伝ってください!」

 アメジストの所に駆ける。

「自分は何をすれば?」

「アメジストちゃんの動きを止めてください。あとは私が何とかします」

 精霊達は力を使い果たしまだ動けない。自分だけで何とかしなければいけないか……

 次々と木の根や蔦が地面や壁に絡む。ネクサスさんから聞いたダグザ王の最後の時みたいだ。絶対に救ってみせる。


 木の根や蔦はアメジストを守るように球を作る。

 襲い掛かる木の根や蔦を避けながらボトルを開ける。

「アハハハハハハハ、許セナイ、許セナイ」

 アメジスト……

 サラマンダーの力を使い木の根や蔦を燃やし、アメジストに一気に近づく。

 植物の球に火をつける訳にはいかない、中のアメジストまで燃やしてしまう。

 シルフとウンディーネの力で植物を切り、ノームの力で掻き分けていく。切り開き出来た間を進んでいく。木の根が体を抉る。蔦が絡み着き手足を引っ張る。アメジストの下まで傷だらけになりながらも辿り着く。

「来ルナ! オ前ニ助ケラレルワケガ無イ! 無能ノ役立タズナンダ! オ前ハ! オ前ガ私ヲ! コンナ風ニシタンダ!!」

 アメジストに絡みつく植物をナイフで切りアメジストを抱える。アメジストは意識を失った、これはラッキーだ。

 植物が一斉に自分を狙う。アメジストを逃さないという意思でも有るのか?

「任せてください! 早くエレノア様の所に!」

 サファイアとソフィアが植物を退ける。

「ユウさん、お願いー!」

 ああ、任された!

「師匠! 何とか出来そうですか?」

 迫りくる植物から逃げながら師匠の所に走る。

「やってみせます! 絶対に!」

 師匠にアメジストを渡し、すぐに追ってきた植物を相手にする。

 サラマンダーの力で焔の壁を造り植物の侵入を止める。

 焔の壁を突破した植物が自分に絡みつき焔の壁に吸い寄せる。執念深いな! ナイフで切り落とし対処する。

 植物の余りの多さにサファイアもソフィアも追い込まれ始めた。このままではみんなやられてしまう。


「アメジストちゃん! アメジストちゃん! 起きてください! こんなこと! こんなこと! 望んでいないはずです!」

 師匠は呼びかけながらアメジストをどうにか止めようとしているようだ。

 植物が自分の腕から生えてきた。まさか、見えないほど小さな種子が飛んでいるのか!?

 ボトルの力がそろそろ切れる。もう1セット分のボトルに手をかけた瞬間、手から生えてきた蔦が手を拘束し、そのまま転がされた。

 サファイア達2人も植物に絡みつかれ動けなくなっていた。一巻の終わりか。

「師匠!」


「僕がやります。エレノア司教、そこを退いてください」

 セツナ君!? セツナ君が何かをアメジストに飲ませると植物の動きが止まり、枯れていった。

「大丈夫です。毒物ではありません、まあ、少しの間、意識を完全に飛ばすことになるので、害は無いとは言い切れませんが」

「どういうことですか?」

 師匠が怪訝な目でセツナ君を見ている。何でセツナ君はこんなことを知っているのだろうか。

「魔力を封じただけです。禁書庫にある魔王化に関する書物に対策法として書いてあります」

 セツナ君の手を借りる。植物を払う

「お礼と思って、一つ頼みを聞いてくれませんか? ユウさん」

 セツナ君は真剣な眼差しで自分を見ている。


「僕と決闘してください。ユウさん」

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