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34話 背を追う覚悟

 二人が団長室に入るとネクサスさんは鍵を閉じた。

「人に聞かれたら不味いからね。アルベドの話とダグザで起きた話だね。いいよ」

 向かい合うようにソファーに座る。

「アルベドは、まあ、生まれつきの王だよね。ダグザの件が無ければ、とうに王になっていただろうね。アルベドは昔から政治や武術も学んでいて将来を有望視されていたね。比較的人間も出来ている方だと僕は思うよ。それに魔王だから、寿命も心配なかったし」

「べた褒めですね」

「まあ、それだけ有能で素質を持った人物だからね。現状この国の治安がニグレドの時よりも良くなったのは事実だから」

 命を奪われかけただけあって、何とも言えない。

「君からしたらあり得ないと思うけどね、あと、ダグザの件だね」

 本題だ。

「あれはかなり異常なことだった。先王が無くなった数日後、アルベドが各国に遊学かな? まあ、している時に、ダグザの使者からアルベドが暴れていると知らせが有ったとニグレドに言われ、すぐにチームを組むことになった。チームは僕、ジュン君、マーリン、アレイスター、キルケー、エレノアちゃんの6人、王族だから殺すことも出来ない、封印する以外に手が無かった」

 ここから先がダグザで起こった惨劇の真実。

「ダグザに着き、すぐダグザ城の玉座に行った。玉座は、大量の死体だらけだった。その中でアルベドは血だらけでダグザ王の首を掴み立っていた。ダグザ王の首はあり得ない方向に曲がっていてもう死んでいたことはすぐに分かったよ」

 冷静に整理して確実に言えることはアルベドがダグザ王の死体を持っていたということだけだ。

「大人数に観念したのか抵抗もしなかったね。素直に封印されてくれたよ。だから、どんな魔王の力を持っているのかも僕には分からない」

 あの場にネクサスさんが居ればどうなったんだろうか。いや、考えてもどうしようもないか。

「周囲の様子も詳しく知りたいです」

「周囲の様子か……そういえば、玉座以外に死体は無かったね、あと、玉座が植物だらけになっていたけど、それが元々なのかどうなのかは分からないかな、入ったこと無かったし」

 うーん? 植物? まあ、覚えておくか。

「僕が知っていることはこれくらいかな。その後は、ニグレドしか継げるものが居なくなったから王をニグレドが継いだんだよ。その顔はあまり参考になる情報は無かったようだね」

「いえ、ありがとうございました」

 ソファーを立つ。

「ねえ? 敬語は止めてよ、もう仲間なんだからさ」

 聞き流しながら部屋を出た。


 騎士団本部は広いな。食堂や宿直室、訓練場にラウンジまである。団長室がラウンジの前にあるのは、声を掛けて欲しいからだろう、敬われ過ぎて寂しいのかもしれない。

「よう! ユウ。元気か?」

 ラウンジでゴリラとフードの少女、イブがくつろいでいる。

「暇そうだな」

「そんなわけあるか! 俺は今騎士団所属で色々働いてんだよ! というか、お前に聞きたいことがあったんだ」

「聞きたいこと?」

「ああ、お前、守りたいものがどうとか言ってただろ」

「頭に入ってないってことは……」

「違う! 違う! ここでは恥ずかしくてだな……」

「早く用件を言ってくれないか?」

「お、おう。あの言葉はお前が考えたのか?」

「いや、受け売りだけど?」

「そうか。因みにどんな奴なんだ?」

「皮肉屋な刑事のおっさんだよ」

「どうやったら皮肉屋な刑事のおっさんからそんな話聞くことになるんだ?」

「昔事故にあったから。親代わりに飯とか連れていってくれたんだ」

「……事故? ユウ?」

 考え込み始めた。

「もういいか?」

 疲れたから早く帰ってゆっくりしたい。

「片倉優」

 ボソッとその名前を呟かれた。

「何故自分の名前を知っている!?」

 この世界に来てまだ誰にもフルネームを教えていない。どういうことだ?

「片倉宗吾と唯衣花の子供。もしかして、おっさんって桜川哲也って名前か?」

「そうだけど、お前、まさか、死んだ先輩って……」

「すまない!」

 ゴリラは土下座した。マジか……おっさん……

 体から力が抜ける。相変わらず知り合いの死は重いな。

 ゴリラの頭の上で手刀を構える。

「はぁ、頭を上げろ」

「ユウ。すまない」

 ゴリラが頭を上げた所を手刀一閃。

「痛い! すまない!」


「……お茶」

 イブがお茶をカフェから買ってきてくれた。

「ありがとう。はい、これはお茶のお金」

 お金を渡そうとするが貰ってくれない。

「いいの?」

「ああ、貰って欲しい」

「分かった」

 やっと受け取ってくれた。まだ、警戒されているな、命を狙った人間相手だ、仕方が無いことだ。

「なあ? ユウ。先輩はどうだった?」

「どうって言われてもな。自分の親の事件は知っているのか?」

「ああ、老人による暴走事故だったな。相手さんは外車で無傷、被害者は二人」

 お茶をすする。

「その二人が自分の親だ。自分は後部座席に座っていたから、命は助かった。いや、助けてもらった、偶然現場に居たらしい桜川のおっさんに」

「あの事故は容疑者の心神喪失によって一時は起訴すら出来そうも無かった。だが、事故直後の動画が出てきて、それが決め手になり有罪判決が下った」

「自分が入院していた時、おっさんが来て言ってくれたんだ、必ず俺が何とかしてやる。さっさと元気になって一緒に飯行くぞ! ってさ」

 お茶をすすり一息入れる。

「正直さ、ニュースを見てたから何も思わなかった、頼んでも無いのに来て事故の事を話していくんだよ。そのうち自分は口も開かなくなっていった。日に日に何も感じず何も考えられなくなっていった」

 二人は口を挟まず静かに聞いている。

「でも、来るんだ。ある日、証拠を見つけたって言ったんだ。そして、何処で飯食いたいか考えとけよ、って」

「先輩……」

「次の日、起訴された。死んでいた心が戻っていった。桜川のおっさんが自分を人間に戻してくれた。その日も来てくれて一緒に泣いてくれた。自分もこんな人になりたいって思った」

 お茶を飲み干す。

「それからよく一緒に飯を食べに行くようになった。桜川のおっさんは酒を飲んでは語りだして、自分はそれをアホみたいに一生懸命聞いていたんだ。まあ、自分にとっては親代わりって感じだった」

「ふぅ……そうだったのか」

 ゴリラは思いつめた顔をしている。

「ゴリラはこれからどうするんだ?」

「俺は当分の間は騎士団で働くよ。まだ、贖えていないって思うから」

「そうか」

「無理はするなよ。お前が気付いていないだけで、お前はかなり無茶苦茶だからな」

 やることももう無いな屋敷に帰ろう。


「お、お帰り、ユウ」

「お帰りなさい、お兄」

 二人が出迎える。

「お兄!? 誰だ変なことを教えたのは?」

「あ、ごめんなさい。私が兄妹みたいだなって。よく、ぎゅってするところが」

「お兄……ぎゅっ!」

 グサッ

 角が毎回毎回刺さる。

『……』

 ウンディーネがジッと見ている。最近少し様子がおかしい。でも、話してくれることも無い。

「ご飯が出来てます。モニカちゃんに教わって色々作ってみました」

 ソフィアが教わる方なのか。

「私とモニカちゃんの国の料理を作ったんです。まあ、その、ほぼモニカちゃんが作ってくれましたけど」

「お兄の為に頑張った、食べてくれる?」

 上目遣いでお願いしてくる。可愛い、癒しだ。

「もちろん!」

「あ、私もお願いします! 今運びますから座って待っていてください」

「手伝うよ」

「いえいえ、大丈夫です」

 足早にキッチンに行き、料理を……目を疑った、大皿の上に十人前は有りそうな大盛りの料理を運んできた。

「はい! これがユウの分です! 精霊様方の分もすぐに持ってきます」

 ドンッ! とテーブルが音を立て揺れる。モニカは首を横に振っている。止められなかったのか。

『ダ、ダーリン。今日は私の分も……』

 サラマンダーが自分に皿を押し付けてくる。

「サラマンダーは大きくならないといけないだろ?」

 食べきれるわけが無いので押し返す。

『はぁ、食べきれない分は保存して明日に取っておきましょう』

 流石シルフだ。

「食べきれないんですか? これでも少なく注いだのですが」

 何をおかしなことをと思ったがソフィアは一人で全部食べ切っておかわりを取りに行った。

 ウンディーネが一口も口を着けていない。

「ウンディーネ、調子が悪いのか?」

『大丈夫だよ。ユウ。優しいね』

 ウンディーネの目は昏く優しかった。

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