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3話 精霊ハーレム

『ごめんね。ダーリン。腰が砕けるなんて思ってなかったから……』

 サラマンダーは申し訳なさそうに謝っている。華奢な幼女体型、どう見ても非力な少女にしか見えないサラマンダー。腰を一撃で粉砕するパワーは何処にあるのだろうか。

「まあ、気にしないで」

『やっぱりダーリンは凄く優しいね。私、そんな所凄く好きだよ!』

 好き!? 一目惚れって言うレベルではない。それにやっぱりってどういうこと?

 燃えるような情熱的な少女サラマンダー、まるで自分を探しているようだった……

『えへへ、ダーリンと会えて幸せ。ダーリンは?』

「え、まあ、うん、う゛っ!」

 肩を借りていたシルフに小突かれる。腰のダメージでまともに歩けずお店に向かえないのでシルフに肩を借りている歩いているが、サラマンダーと話す度に、脇腹を小突かれる。

『デレデレしないでください。他の女に』

 シルフは無表情で無言を貫いている。

「いい身分ね。女の子に囲まれて」

 アメジストはそれだけ言って顔を合わせてくれなくなった。


『ねえ! 私と契約しよう!』

「それは良いんだけど。う゛っ。」

 また小突かれた。シルフとサラマンダー……四大精霊……まさかね。

「ただ、何で自分と契約をしてくれるんだ?」

 色々聞きたいことはある、今は何よりも聞きたい。

『一目惚れだよっ!』

 一目惚れか……嘘だな……

「それはないだろ」

 直球をぶつけてみると、サラマンダーは少し困った顔になった。しかし、何か思いついて笑顔を見せてくる。

『うーん……あ! 秘密だよっ! 秘密がある方が良い女だからね!』

 サラマンダーが腕に抱きつく。対抗するようにシルフがもっと自分に密着してきた。悪い気はしない……今は……


「ここの料理が美味しいの」

 そう言って酒場に入っていく。中にはおっさんに親子に夫婦、老若男女幅広くいる。これは酒場というよりレストランだな。

 席に着き料理を頼む、料理の内容は分からないのでアメジストのオススメにする。

 食べ物が合うとか合わないとか心配していた自分が馬鹿らしい、普通に美味しい。

 ……うん、見た目も味もミートソースドリアだ。

『ダーリン、これも美味しいよ、あーん』

 サラマンダーがパスタっぽい料理を差し出してくる。

『ご主人様、卑しいですね、どうぞ』

 シルフはピザっぽい料理を自分に差し出す。

「うん、最低ね」

 アメジストは笑顔で白い目を向けてくる。自分が悪いわけではないと思うけど。


『『え!?』』

 食べている最中に急にシルフとサラマンダーが固まった。

 二人の視線の先を見ると優し気な女性がいる。こちらに気付いたらしく微笑んでくれる。長髪のスタイル抜群の美人に笑顔を向けられるのは悪い気はしない。

 シルフとサラマンダーが自分に聞こえないように話している。だが、すぐ何か決意したように自分に向く。

『逃げましょう! ここはダメです。ご主人様! 最悪です。最悪中の最悪です』

『ダーリン! 早く出よう! 絶対に酷いことになるから!! 手に負えないのは分かってるから!』

 何が有るのだろう、再び女性の方を向くともう居なかった。

『やっぱり、運命なんだね……』

 後ろから声が!? 驚く間もなく後ろから抱き着かれた。

『ダメだよ。ボクから逃げようなんて。そうだよね? ユウ?』

 抱き着く腕がきつくなる。後頭部に柔らかい感触が……!

『ウンディーネ! ご主人様からすぐに離れなさい!』

 シルフもサラマンダーも険しい表情でさっきの女性、いや、ウンディーネを睨み付けている。

『やっと会えたね。ユウ。もう大丈夫、ボクが居るから。ユウの為ならボクは何でもできるよ』

 誰も自分の名前を口に出していないはずなのに何故自分の名前を知っているんだ!? いや、それはシルフとサラマンダーもだけど……

『ボクとユウは運命で結ばれているんだ。ずっとずっと昔から』

 恍惚な表情でと声で勝手に話し始めた。

「いや、自分はこの世界に来て一日も経ってないんだけど」

 優しい笑顔を見せてくれる。その笑顔に安心さえしてくる。

『ユウ。ボク達は前の世界から赤い糸で繋がっているんだよ。だから、安心して』

 あ、答えてはくれるんだ……

「そうですか」

 ああ、これは、どうすればいいのだろう。女性経験どころか話すことも無かった女性に振り回されている。

『ご主人様! 諦めたように納得しないでください! ろくなことになりませんから!』

『そうよ! 酷いことになる前に逃げましょう!』

 2人は尚もウンディーネと関わり合いになりたくないらしい……

『さあ、ボクと契約しよう? ボクがユウを守ってあげる。誰にもユウを傷つけさせないようにね』

 それは、まあ、ありがたい……

『ふふっ、契約成立だね』

 契約しても良いと思っただけで契約が成立してしまう。大丈夫なのだろうか?

『はぁ、大馬鹿ご主人様。私というものが居ながら……』

『ダーリン、人が良すぎ……大変なことになっても助けられないからね!』

『この虫けらとトカゲは何を言っているんだろうね。ボクとユウは愛し合って結ばれているのに』

『はぁ? これだから魚類の言うことは、ご主人様。聞かなくてもいいですよ』

『そうよ! ダーリン!』

 ウンディーネの一言を皮切りに大声の言い争いに発展してしまった。もう自分では事態を収束させることはできる気がしない。周りの客も白い目で自分を見てる、早くやめて欲しい。アメジストは我関せずといった感じで手帳を読んでいる。お店に迷惑がかかるレベルで騒いでいる精霊3人を無視している。


「やあ! ユウさん、また会ったね」

 店の入り口の方からセツナくんが声をかけてくる。

「店の外からでも騒いでいるのが聞こえたよ。それにしてもユウさんの周りには女性ばかり集まるね。あの後どうなったのか教えてください! ユウさん。相席良いですか?」

 セツナくんの登場により、精霊三人は落ち着きを取り戻し静かになる。まさに救世主の登場だ。セツナ君が座り、料理を頼んだ後、セツナくんと別れたあとの出来事を話す。

「シルフ、サラマンダー、ウンディーネ、四大精霊ですね。でも、今は三人だけ……ですか。なるほど……」

 セツナ君は注文した料理を食べながらしみじみと話す。みんなは食べ終わって食後のお茶を飲んでいた。

「それにしてもユウさんの召喚者が亡国のエルフのお姫様なんて運が良いのか悪いのか、お互い大変ですね」

 亡国のエルフのお姫様……? アメジストが……?

「エルフ?」

「アメジストさんはエルフで亡国のお姫様ですよ……あれ? 言ってない? いやいや、そもそも耳がエルフ耳ですよね?」

 こちらを気にせず手帳に何かを書き込んでいるアメジストをじっくり見てみる、横にはねている髪だと思っていたものがエルフ耳だった!? 急展開過ぎて気が付かなかった。

「うわぁ、全然知らなかったんですね」

 セツナ君、ドン引きしないで、結構傷つくからさ。

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