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25話 至神の騎士

「そろそろ口を出してもいいかな? コホン、私が君たちに協力しよう。」

 キッチリと整えた服を着た初老の男性ヴァルと白衣を着て目にくまを作ったアヤネが入ってきた。

「誰? どうしてここを知っているの?」

 ヴェロニカが臨戦態勢をとる。

「あ、すみません。僕が呼びました」

 セツナくんが申し訳なさそうに手を上げた。


 各々自己紹介を終えひとまず事態が納まった。

「申し訳ない。決起を終えたあとだったとは」

「まあ、私が悪いんだけど」

 どうでも良さそうにアヤネが口を挟む。

「私達も協力しよう。国その物を相手にしているようなものだ。一人でも仲間は多い方が良いだろう」

 魅力的な提案だ。だが……

「賢者が国を裏切っていいのか?」

 考える素振りも見せない、もう決めているのだろう。

「もちろん、不味い。だが、そんなことで恩を仇で返すくらいなら、協力して恩を返すのが筋というものだろう」

「まあ、賢者が協力してくれるのは嬉しいねー。じーっ」

 問題は勝手に部屋を探索しているアヤネの方だろう。ヴェロニカも睨み付けている。

「私? 私はヴァルに従うだけ。そうしないとご飯にありつけないし、研究も出来ないから。それだけ」

 うーん。大丈夫なのか?

「申し訳ない。アヤネも悪意があって言っているわけでは無いんだが、ただあまり他のことに興味が無いからな……」

「そういう訳なんで」

 あまり期待は出来ないが勇者が5人か。


 ヴェロニカとヴァルが今後の事を相談している。まとまってから後で聞こう。

「あ、あの、少し、いい……ですか?」

 服を引っ張られた。マナカさんが呼んでいる。

「分かった。大丈夫だよ」

 そのまま人の居ない部屋まで連れてこられた。

「その、人に聞かれたらいけないので」

 え、何の話なんだ?

「ん、んん、よし」

 たまにマナカさんは別人のような時があるな。

「助言をしてやろう。じょ・げ・ん。」

 ドヤ顔をしている。いつもおどおどしていてドヤ顔をするタイプではないはず。

「ヨハン・セイクリッドを調べろ。ネクサスの本名だ」

 ……どういうこと? 真意を確かめるべく、じっと表情を見る。

「ああっ、その冷たい視線、いい!」

 ええ、いきなり何を言っているのか……

「助言はしたからな! あとは頑張れ! ……あっ、ご、ごめんなさい!」

 ドヤ顔から涙目に変わり謝り始めるマナカさん、何が起きているのかさっぱり分からない。

 ヨハン・セイクリッドか、一応調べてみるか。


 取りあえず図書館に行ってみるか。出来ることはそれくらいだ。

 図書館前の広場に着いた。剣士の像が中央に立っている。剣士の像にしては爽やかだな。

「気になるのか? その像」

 金髪に白いメッシュを入れている不思議な男に声を掛けられた。

「ずっとその像を見てただろ」

 優しい表情なのに冷たいような。

「至神の騎士、ヨハン・セイクリッド。そいつの像だ」

 いきなり大当たりか!?

「ぜひ教えてください!」

 ちょっと食い気味だったかもしれない。驚かれた。

「まあ、いいぜ。そいつは、建国に携わった騎士だ。そして……」

 もったいぶってなかなか話さない。

「一人で一国皆殺しにした大量殺戮魔さ」

 一人でそんなことが出来るのか?

「おっと、悪い、もう行かなければいけない」

 行ってしまった。もう少し詳しく聞きたかった。

「やっほー。ユウくん。普通に出歩いてるね。注意しないといけないよ。狙われているんだからさ」

 入れ替わりにネクサスさんがやってきた。

「図書館に用かな? 何か調べもの?」

 調べている本人に出くわすなんて、どうしようか。

「ヨハン・セイクリッドについて調べているんですけど……」

 ネクサスさんは顎をさすり何かを考え込んでいる。

「誰かの入れ知恵だったりする?」

「まあ、そうです」

「そうだよね、君が調べている理由がないし。それで誰に入れ知恵されたの?」

 あれは、本当にマナカさんでいいのかな、どう説明すればいいか思いつかない……

「すみません。誰かはちょっと……」

「そっかぁ、まあ、分かったよ。僕が教えてあげよう。どうせ、僕の本名だって教えられたんでしょ?」

 どこまで見通していいるのか。

「まあ、事実だからさ……まあ」

 全てを悟ったように語り始めた。

「至神の騎士。神に至る剣術を持つと言われた騎士が居たのさ。彼は初代リーベル王国騎士団長を務めた人物であり、建国当初から初代の王に仕えていた。度々戦争が起きては最前線で指揮を執り勝利をおさめていた。だけど、まあ、彼も結局は人、戦争で命を落とした」

 命を落とした……?

「そう、命を落とした。初代王マーロンは初めて勇者を召喚した人物で魔術師の祖ともいえる人物だ。騎士は死の直前、このままでは戦争で負けて国が亡びると危惧し、そこで王に頼み、召喚魔術を応用し、その騎士の魂を鎧に宿して貰った」

「それでネクサスさんが生まれたと言う訳ですか?」

「そういうことだよ。あれからもう700年近く経ったのか。この国も変わったなぁ」

「700年!?」

「そうだよ。騎士団長はまだ2代目の僕までしか居ないね」

「怪しまれないんですか?」

「まあ、そんなに人と顔を突き詰めていくことは無いからね」

「そういう問題ではない気がしますけど」

 とんでもないことを聞いてしまった。しかし、これからのことと何も関係ないような……

「あっ、一つ謝らないと。たぶん、今、君の隠れ家が襲われてる」

 ネクサスはお茶目に言った。なんてことだ……

「は?」

 いや、でも、あの場には勇者4人に賢者が1人、返り討ちに出来るはず」

「戦えるのは、アレイスターくらいかな? あと、セツナって名乗っていた子ももしかしたら戦えるのかも、でも、二人以外の子を人質にとれば案外楽に片が付くかもね」

 不味い! 急いで戻らないと!

「ごめんごめん、たぶん、もう遅いから。それにアカツキくんも居たから、死人が出ることはないし、彼らの目的はニーナ様の誘拐だけだからさ。カミール卿と直接決着を着けた方がいいよ。ユウくんの処刑命令もまだ出たままだしさ」

 嬉々として話すネクサス、楽しんでいるようにも見える。

「明日の昼、カミール卿は政治で玉座に来るから、そこで決着をつけるといいよ。その間、城の人払いは騎士団がしておくから」

 全て見通されているようだ。

「明日、楽しみに待っているよ。ユウくん」

 上機嫌に手を振りながらネクサスは去っていった。

 隠れ家に急ごう。


 ネクサスが言った通りニーナが居なくなっていて、皆、落ち込んでいた。玄関ドアは破壊されているが、部屋はほぼ荒れていない。

「すみません。ユウさん。僕が居ながら」

 セツナくんは俯いたまま謝っている、悪いけど、そんなことに付き合っている余裕はない。

「何があったか教えて欲しい」

「アカツキに玄関ドアを破られ、3人に突入され、セツナが不意打ちを食らいアメジストが人質に取られた。ニーナと人質を交換すると、フードの少女に言われたら、ニーナが自分から身を出した」

 淡々とヴェロニカは事態の説明をした。

「カミール卿は明日玉座に居るそうだ。ネクサスさんが城の人払いをしてくれるからそこで決着をつけにろ、と」

 誰もが驚き声も出なかったが、アメジストが口を開いた。

「玉座に突撃するしか無いわね。それで作戦を組みましょう」

 アメジストの提案に皆何も言えず頷く。追い込まれてしまったのだ。

「まず、誰が玉座まで行くかが問題になるわね。私はユウしか居ないと思うわ」

 アメジストはじっと自分を見つめている。

「僕もそれでいいと思います」

 セツナくんは顔を上げ覚悟を決めた顔で賛同した。

「私とアヤネは城の外で他の賢者達が介入してくることを防ごう。マーリンなら必ず介入してくるからな」

「ソフィアちゃんはモニカちゃんとここを守って欲しいなー」

「サフィちゃんがそういうなら。分かりました。全力で死守します」

「私とマナカがユウ様を玉座まで道案内します」

 アリシアさんの提案に皆眉をひそめる。

「それは一番危ないから、ダメ」

 ヴェロニカが許可しなかった。まあ、みんな同じ考えだろう。

「いえ、父は私達には手を出さないはずです」

 アリシアも引く気が無いようだ。

「ユウ。守ってあげてよー。残りがユウを援護しながら、ニーナの捜索をする。それでいい?」

 最後のまとめをヴェロニカに取られ少しアメジストは不満げだ。

「返事が無いってことは賛成と見なすから」

 決戦が始まる。

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