24話 告白
「ユウ。凄いことを教えてあげるっ。」
屋敷を出て、ヴェロニカに先導されて行く。
「今ね。ケレース国王から処刑命令が出てるんだよ。ユウを処刑しろーって」
処刑命令か、物騒だな。擦れ違う人々の顔も暗い。
「この国で一番有力な貴族カミール卿に楯突いたから国王に処刑してくれって命令されたんだろーねー」
それであの全く似てない手配書か。
「カミール卿について何も知らないんだけど。何者なの?」
あ、凄く綺麗な笑顔になった。ろくな奴ではないな。
「クズだよ。ろくでなしのクズ」
「もうちょっと詳しく」
「この国の政治を牛耳っている奴だよ、自分と意見が違う奴、邪魔な奴は暗殺してるし、賄賂とか、癒着もしてる。そうやってこの国最大の派閥になっているんだー」
「確かにろくな奴ではないな。でも、周囲から反感を買わないか? 逆に暗殺されそうだけど」
「そこでアカツキだよ。あいつはアカツキの召喚者だから」
ドヤ顔しながら人差し指を立てている。そのまま人差し指でクルクルと宙に円を描いている。
「そういうことか」
勇者がそばに居て暗殺できるような奴は勇者くらいだろう。
「アカツキは誰もが認める善人だと思う、お金にならないような依頼に、誰も受け無さそうな依頼も無償でやってる、子供から老人までも困ったら勇者アカツキに助けを求めるってくらいに」
「そうか」
「あっ、居たよ。私、物陰から見てるから、青春してきなー」
風のように退散していった。
「あれは何でもかんでも青春って言えばいいと思ってるな」
騎士団の詰め所からアカツキが出てきた。
「よう。決着をつけに来た」
アカツキは一瞬驚いた顔をしたがすぐに覚悟を決めた顔になった。
「待っていた」
アカツキは両腕に盾を装着し臨戦態勢に入った。
朝早くということもあり、周りに人はいない、建物も詰め所の近くということで少ない。
「準備はいいか? ユウ!」
周囲に竜巻、水柱、火柱、土柱が生まれる。ウォーミングアップは充分だ。
「ああ、来い!」
宙に無数の火球が生まれる、道が割れ、アカツキの足元が崩れた。
「何!?」
アカツキがバランスを崩した。今だ! 無数の火球が火の鳥に姿を変えアカツキに襲い掛かる。アカツキは火の鳥に対し盾でガードしようとしている。だが、火の鳥はアカツキに直撃した瞬間に爆発していく。爆発と崩れた足場によりアカツキは防御に専念している。その隙に風を全身に纏い防御面も万全だ。
最後の火の鳥がアカツキに爆撃する。盾の間から覗いて見える顔からは相変わらず効いているように見えない。タフな奴だ。
次の手だ。地面から濁流を生み、アカツキを飲み込む。流されることなく濁流の中をしっかりと立っている。だが、濁流に体を拘束されアカツキは動けていない。
アカツキの崩した足元の残骸を集め大きな槌に形作ってアカツキに叩き付ける。崩れた足元と濁流でまともに動けないアカツキの頭に直撃させた。
「ふん!」
頭から血を流しながらも地面に手を刺し地面を剥がす、濁流を剥がした地面で塞き止めた。なんて馬鹿力だ。
そのまま地面を投げ飛ばしてきたが、瓦礫の槌で相殺する。
「そこだ!」
投げ飛ばした地面の陰に隠れながら突進していたようだ。瓦礫や水を槍に変え迎撃するが、盾に弾かれる。足は止まったが、ガードしながら攻撃してくるのは面倒だな。
「うおおおおお!!」
雄叫びを上げながら力を振り絞って突進を仕掛けてくる。単調だが合理的だ。
「サラマンダー、頼む」
『……ダーリン』
持てる火力全てを突進が決まる瞬間にぶつける、突進が決まる瞬間なら盾の防御も間に合わないはず。ただ自らも巻き込む諸刃の剣。
来た。アカツキはなりふり構わず突進してくる。
地面が熱され白みを帯びたオレンジ色に光る。
「ケリをつけようか」
焔とも言えないほどの熱が身を焦がしていく。サラマンダーに加護を受けたとは言え、熱い、肌が焦げている。
熱で目が開けられない、アカツキはどうなっただろうか。
『ダー……リ……ン!』
熱が治まっていく、消えそうなくらい小さい声が聞こえた。
目を開けると、アカツキは膝をつき肩で息をしていた。
「自分の勝ちだ」
精一杯勝ち誇ってみせる、体に限界が来ていることを隠しながら。
「く……そっ……」
アカツキは大の字に倒れた。
「何でお前はそっち側についているんだ? そういう悪いことが好きなタイプAAAAないだろ?」
「お前は分かっていない。俺一人が足掻いたところでどうにかなる問題AAAAねぇんだよ。それ程の権力を持ってんだよ、俺の雇い主は」
忌々し気に話す。諦めているというか自棄になっているというか。さて、どうしてくれようか?
「おーい。ヴェロニカー?」
物陰に居るはずのヴェロニカに声をかける。ヴェロニカと相談してアカツキをどうするか考えよう。
「はいはい、今行く……よ!?」
ヴェロニカが建物の陰から姿を現す、視線がフラフラしている、大丈夫か?
ゴッ!!
は? 鈍い音と共に後頭部に激痛が走る。……何が……起き……て?
地面に倒れ伏せる。血の付いたレンガが視界の先に落ちてきた。殴られた? 誰に?
叫ぶような音が聞こえるが、意識が……
「なるほど。事情は分かりました。そういうことだったんですね」
誰かの声が聞こえる。目が覚めた。ゆっくりと周りを見回す。知らない部屋だ。頭が働かない。
「ポンコツ勇者様のお目覚めね」
アメジストの悪辣な挨拶を聞きながら体を起こす。
「お久しぶりです。ユウさん」
目の前に見たことのある小柄で中性的な少年が居る。
「セツナくん?」
「はい。噂、聞きましたよ。正義を貫いて大暴れしているそうですね」
「ああ……いや、そういうつもりではないんだけど」
奴隷商人の貴族をぶん殴った、あれのことかな。
「正義のヒーローみたいでかっこいいですよ。僕もあの場に居れば一緒に戦えたのに。残念です」
目をキラキラさせながら話すセツナくん、正義のヒーローに憧れているのかな? 現実はそんなものではないけど。
「ところで、何でここに? いや、ここ何処?」
「ここは私の隠れ家だよん」
ヴェロニカが小さな女の子を連れ、部屋に入ってきて答えた。小さな女の子はヴェロニカに隠れながらこちらの様子を伺っている。
「大変だったんだからねー。気絶したユウを運ぶのは」
それは、申し訳ないことをした。
「たぶん、冗談ですよ。実際は4人で運びましたから」
「それで、自分を殴った犯人は?」
「犯人は透明人間なんだー」
そういう冗談は面白くないな。
「レンガが勝手に浮いてぶつかっていったんだよ」
いや、冗談はもういいって。冷ややかな視線を送る。ヴェロニカは不満げに頬を膨らませてしまった。
「残念ながら僕も見ました。レンガが宙に浮いてユウさんの頭に飛んで行ってました」
……分かったよ。信じますよ。
「そう言えば、ヴェロニカ、その子は?」
ヴェロニカにべっとりくっついている女の子に視線を送り、聞いてみる。
「よくぞ、聞いてくれました! この子はニーナ。今はもう無いけどケレース王国のお姫様だよ」
アメジストと同じ境遇の子か。アメジストも神妙な面持ちでニーナを見ていた。
「この子の両親はあのクズに殺された。私はね、ニーナの両親に召喚され、ニーナと指輪を託されたわけ」
アメジストとは違うのか。ヴェロニカは見覚えのある指輪をテーブルの上に置き、淡々と話を続ける。
「この指輪は、ケレースにある魔石の採掘場の鍵、権利書のようなもの、王国の管理で毎年定量帝国に輸出することで国を守っていた。あのクズは採掘場を手に入れ魔石を大量に帝国に流し、儲けようとしている」
あの偽物の指輪はカミール卿をあぶり出すために使ったのか。おかげでこっちは大変な目にあったけど。
「ここに4人も勇者が集まったことは運命だと思う。今こそ、カミール卿の不正を暴く時だよ!」
4人? 自分、ヴェロニカ、セツナくん、あと一人は?
「本当に申し訳ございません。私の父、カミールのせいで皆様に迷惑を……」
アリシアさんとマナカさんが居たのか。声は聞こえるけど、姿はテーブルで隠れて見えなかった。
「アリシアちゃんのせいなわけなーいよっ。よしよししてあげるーっ!」
ヴェロニカは、はぁはぁしながらアリシアさんを撫で始めた。
おい! 真面目な話をしていたのでは無かったのか!?




