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23話 決意の後

 意識が朦朧としながらもなんとか屋敷にたどり着いた。誰も居なかったらどうしようもないが、それでも休めれば。屋敷のドアを開ける。

「ユウ。大丈夫なの?」

 ドアを開けた先にはアメジストにサファイア、ヴェロニカも居た。もうダメだ、意識が保てない。そのまま意識を手放した。


 目が覚めた。屋敷に着いたのが夕方で、外を見る、今は夜だな。自室のベッドまで運ばれたらしい。体中に治療の跡もある。

「おはよう。ユウくん。凄い戦いだったね」

 見回しても部屋には自分しか居ない、でも、ネクサスさんの声が聞こえる。何処だろう?

「窓開けて貰っていいかな。少しお喋りしよう」

 ……窓? 窓にネクサスさんが張り付いていた。しかし、ここは2階だ。まあ、開けるか。

「いやぁ、ありがとう。ここが君の部屋なんだね。うん、質素だね」

 部屋に入ってすぐに部屋を観察し始めた。やめて欲しい。

「ああ、本題だね。2つあるんだ。まず、1つ目。はい」

 紙を渡された。紙には髭を蓄え、鼻が高く、けつあごで、左目が傷痕で塞がれ、顔中にも傷痕のある男の似顔絵が描いてあった。

「それね。ユウ君だよ」

 こんな顔してないよ!?

「手配書なんだ。まあ、捕まえる気がないからそんな無茶苦茶な顔になったんだけどね。君の顔を元にして改造していったらこうなったんだ。輪郭は君っぽいでしょ?」

 てへっ、って感じで話すネクサスさん。

「でしょ? って、そういうことでは無いですよね!? わざわざ落書きしないで最初から別人で作ってください!」

「あと、奴隷にされていた人達も追いかける気は無いから、返してあげてくれないかな? 僕たちは動けないし」

「まあ、アメジスト達に何とかして貰うしか無いですけど」

 こればかりは自分ではどうしようもない。

「分かった。ありがとう。それで、2つ目なんだけど。当分の間、外に出ない方がいい」

 やはりそうなるか。

「分かっていると思うけど、君は狙われている。前よりも本格的に。そして、僕たちも守ってあげられない」

 貴族に逆らい、この国の敵になってしまったから、本来なら騎士団も自分たちを狙う立場にある。

「君のやったことは正しい、そう騎士団全員が思っているから」

「あの後、アカツキはどうなったんですか?」

「アカツキくんは、騎士団で捕らえて治療を受けさせているよ」

「そうですか」

「うん。では、僕は巡回に戻るから。おやすみなさい」

 窓から飛び降りた。次からは普通に入って来て欲しい。


 喉が渇いた。飲み物を飲むため部屋を出る。普段なら誰も居ないはずの3階が明るい。行ってみるか。

「ユウ……もう……大丈夫なの?」

 3階の個室の部屋のドアが開いていてそこから声がした。覗くと、アメジスト達があのボロボロのダークエルフの治療をしていたようだ。

「ああ、もう大丈夫」

「良かったわ。でも、まだ寝ているべきだわ」

 アメジストは少しの間、目を閉じていた。

「ん……んん……ここは?」

 ダークエルフが目を覚ました。

「私は……って、あっ。その……私を助けて、その、あの、あぁ、うわぁぁ」

 いきなり叫び顔に手を当てる。

「大丈夫? 何処か痛むの?」

「いや、その、大丈夫だ。その」

 袖を掴まれる。

「名前をお聞きしても……」

「自分? ユウだけど」

「そうか。ユウ……か、ふふっ。かっこいい」

 小声だけど聞こえていますよ、とは言えなかった。

「アメちゃん、そっちはどうですー? ソフィアちゃん、大丈夫そうですー? あれ? 起きてる」

 サファイアが部屋に入ってきた。

「……サフィちゃん? 久しぶり……ってアメジスト様!!? 多大な無礼を申し訳ございません!」

 サファイアの知り合いなのかな。

「もう私は姫ではないから、畏まる必要は無いわ」

 二人の知り合いなのかな。

「あ、ユウさん。この子はソフィアちゃん、ダークエルフの国でお姫様セレーナ様の従者で子供の頃からの友達なんだー。従者友だよー。最近は会ってなかったけど、どーして捕まってたのー?」

「それが、魔物討伐の帰りに後ろから襲われて……」

「ええー!? あの史上最強で姫の美しき剣と言われていて模擬戦負けなしのソフィアちゃんがー!?」

「サフィちゃん! それ、すっごく恥ずかしいよ!」

 楽しそうだ。入る隙間は無さそうだな。

「あ、ああ、やっとお会い出来ました! 主様!!」

 グサッ! 背中に何か刺さった! 振り向くと少女の角があった。

「主様。私は主様の奴隷。掃除、炊事、洗濯……夜のお世話も……何でもお申し付けください」

 空気が一瞬で凍り付いた。この少女、いや、幼女、とんでもないことを言いだした。

「……ねえ? モニカちゃん? そういうことは言うものではないわ。ユウもとっても困っているわ」

 この子の名前はモニカというのか。左右に角が生えている。人間ともエルフとも違う種族なのかな。

「え、そうなのですか。アメジスト様。私、何か至らないことがありましたでしょうか? 主様、不甲斐ない私にお仕置きを」

 天然でやっているのかな。そうであって欲しい。

「そう言えば、ヴェロニカは?」

 無理矢理話題を変える。放置プレイって言葉が聞こえたが、気にしてはいけない。

「同居人に心配かけられないから一度帰る、と言っていたわ。明日、また来るって」

 同居人はたぶん村で連れていた女の子のことかな。

「あと、相談があるんだ。今全員いるし、話しておいた方がいいと思って」

 視線が集まる。深呼吸をして息を整える。

「隠れ家を作ろう。狙われている。ここに居たら、いつ襲われるか分からない」

「それについては、ヴェロニカの隠れ家を使うことになったの。現状帰ることが出来ないのは、ソフィアとモニカちゃんだけだから、二人を連れて移ることに決まったの。他の人達は何とか帰る目処が立ったから、大丈夫なの」

 何だ、もう話終わった後だったのか。

「そうか、それは良かった」

 あとは、ケリを着けるだけだ。

「ダメよ。あなたは、私の復讐の為の切り札なんだから」

 まだ、何も言ってないのに突っぱねられる。

「自分を狙っているのは、あいつだ。あいつを倒さなければ、いつ襲われるか分からないまま怯えて過ごさなければいけない。やっぱり倒すべきだと思う」

 引くわけにはいかない。

「……はぁ、分かったわよ。でも、負けることだけは許さないわ。だから、明日に備えて寝なさい。怪我を完全に直すまでは戦わせるわけにはいかないわ」

 素直に従って明日に備えようか。


「お・は・よ・う、ふーっ」

 耳元で囁かれ、息をかけられた、くすぐったくて飛び起きる。

「無言で飛び起きるなんて危ないなー。勢いでキスしちゃうよ」

 ベッドの横に立っていたヴェロニカは投げキッスをしていた。

「キスは禁句でお願いします」

 姿は見えないけど、精霊達がピリピリしている。

「え!? ツッコムところ、そこなの?」

「朝早いですね。暇なんですか?」

「もちろん、気になっていたからだよっ! 元気そうでよかったー」

 頬ずりされた。端正な顔立ちをしている美人だけど、行動や言葉遣いが子供っぽいな。

「今日は私の住処にご案内って感じでしょ? 朝早い方がいいかなーって」

「申し訳ないけど、自分はあいつと決着をつけに行くよ」

「はぁ、馬鹿。付いて行くから。危なくなったら無理やりにでも連れて帰るから」

「分かった。ありがとう」

「はぁ、あいつの場所は分かってるから行くよ。ユウ」

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