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22話 怒り、苦しみ、その果てに。

「ゴリラーーーー!!」

 人だかりの前に出る。

「何だぁこの男?」

 ダークエルフを蹴っていた男がこちらを向く。瞬時に男の顔面を殴る。男はよろけ尻餅をつき倒れた。人だかりの人々は息を呑み、静まる。

「何をやっているんだ! ユウ! その男は王が認めている貴族の……」

「黙れ!」

 ゴリラの言葉を遮り怒号を上げる。

「こんなこと、有っていいはずがないだろうが!」

「それは……」

「ゴリラお前に選択肢を与えてやる。一つ、ここから立ち去る。二つ、自分に協力して、奴隷にされている人達を助ける。三つ、自分と戦うか。選べ!」

「ユウ……俺は……」

 この期に及んでまだ迷っているのか。道は一つしか無いはずなのに。

「貴様! 早くこの男を排除しろ! カミール様に働かないゴミだと言うぞ!」

 貴族の男は立ち上がり、気絶し倒れているダークエルフを蹴ろうとしている。すぐ間に入りダークエルフを庇う、足を蹴られた。

「くそぉ! ……ユウ……お前を倒す!」

 何でだ? 何でその道を選んだ!? お前は警察だったんだろう、正義は無いのか!? 心で叫んだ。この言葉を口にしても、もう届かない。


 ボロボロのダークエルフを抱き上げる。ここに寝かせていては巻き込んでしまう。店を見るとヴェロニカはもう潜入していた。

「悪いが容赦はしない!」

 アカツキは籠手のように腕に盾を着ける。腕全体を盾で覆い、殴りかかってきた!

 攻撃が当たらないように距離を保つ。店の中に居るヴェロニカに気付かれてもいけない。貴族の男にノームが土のアッパーカットを顎に食らわせ気絶させた。これで、敵は……アカツキだけだ。

 意外と速い。アカツキの拳が体を掠る。こうも近いと魔法を撃つ余裕が無い。最悪時間稼ぎをすればよい、自分とこのダークエルフだけならアカツキから逃げることは出来る。だが、アカツキの目を覚まさせたい。

 大きくバックステップをして距離を開ける。サラマンダーが目の前に大きな火球を作り上げる。

『今なら行けるよ! ダーリン!』

「頼む!」

 火球は火の鳥となりアカツキに襲い掛かる。アカツキは腕の盾で防ぐが、火の鳥はそのまま火柱となりアカツキを包み焼き尽くす。これで少しは。

 ボンッ! 火柱が爆発し、中から無傷のアカツキが出てくる。そんなに甘くないか。

 アカツキは盾を構え突進してくる。あの盾を打ち破るほどの魔法。そんな魔法を今撃てば周りの人やヴェロニカ、このダークエルフに被害が出る。

『お姉ちゃんに任せて!』

 アカツキの前に何重にも分厚い土の壁が出来上がる。だが、壁を突き破りながら突進してくる。

 せめて、このダークエルフさえ起きてくれれば、もう少し自由に魔法が使えるのだが。

「ユウさん、私の分は終わりました。そのダークエルフをこっちに渡してください!」

 サファイアが俊敏な動きで近づいてダークエルフを抱えて離れていく。直後、突進してきたアカツキを横に避ける。盾が腕を掠る。危なかった。

 だが、これで魔法に集中できる。


「いやぁ、一進一退だね。ジュンくん」

 屋根の上に登り騒動を眺めていた。

「そうですか? あのダークエルフを担いで一進一退なら、圧倒するのでは?」

「いいや、アカツキは手を抜いていたね。やっと、二人とも本気が出せるだろうね」

「というか、止めなくていいんですか?」

「え? そうだね、好きなタイミングで止めてくれるかな」

「好きなタイミングですか? ……好きなタイミングですか!?」

「そうだよ、僕はもうちょっと見ていたいからね」

「被害が出るのでは?」

「あの二人に限ってそんなことは無いと思うけどねぇ。ああ、よろしくね。ジュンくん」


 改めてアカツキと向き合う。アカツキは腕に装着している盾を少し大きくした。次は掠るだけでは済まさないという意思が見える。

 シルフに自分だけに聞こえるように耳打ちされる。

『ご主人様。どうなされますか?』

 自分も同じように周りに聞こえないように頼む。

「次のアカツキの攻撃に合わせたい。頼んでいい?」

 何を言っているのかって感じの顔をされる。えぇ、そんなぁ。

『当たり前です』

 シルフは言い終わると同時に自分の右腕に風を纏わせる。

「ああ、静まれ俺の右腕、……なーんて」

 苦しそうに右腕を押えてみせる。

『なんですか、それ?』

 シルフに冷めた目で見られる。ネタにもならないか。

 何も言わずアカツキがまた突進してくる。先程より盾を大きくした分、空気の抵抗を受け、遅い。

 アカツキの突進に合わせて構える。狙いは一瞬。盾の内側に入らなければ。

 アカツキの盾が目の前に迫ってきた。今だ!

 地面が盛り上がりアカツキの腕にアッパーカットを加える。アカツキはバランスを崩し腕を仰け反らせた。

 アカツキを右腕で全力で殴る。……びくともしない。

「……何のつもりだ?」

 アカツキは動かなかった。

「時限式なだけだよ。」

 右腕に纏っていた風が破裂する。破裂した風は鋭い刃となりアカツキの体を切り裂き吹き飛ばした。

「ちぃっ!!」

 ザーッと地面を擦りながらアカツキは体勢を立て直す。服はボロボロだがダメージが入っているように見えないな。嘘だろ?

「こっちから行くぞ!」

 飛び掛かってくる。 ヤバい! これは避けられるか!?

 土の壁を作り直撃を防ぐ。しかし、土の壁に直撃した途端、割れはじめる。土の壁が崩壊する前に逃げ、事無きを得たが、直撃すれば紙みたいに薄くなりそうだ。


 奴隷売買の店の前まで追い込まれてしまった。

「ばぁん!」

 はぁ!!?? 後ろから!!??

 驚いてアカツキから視線を離し、後ろを向いてしまった。

「この子で最後だよっ。」

 ヴェロニカが角の生えた少女と手を繋いでいる。その子で最後か、それは一安心だ。

「ユウ! 後ろ!」

 しまった! ヴェロニカからでは状況が見えてなかったか! アカツキが拳が飛んできている。避ければ二人に当たるかもしれない。ヴェロニカ達の前に土の壁を作り、アカツキの拳を腕で防ごうと試みる。

 メキッ! 腕に当たった瞬間、嫌な音が聞こえた。そのまま土の壁に叩き付けられる。土の壁と拳に挟まれ内臓を圧迫される。

「ぐぅはぁっ……」

 視界が歪む。気を失うわけにはいかない。ウンディーネをアカツキの後方に呼び、水を槍のようにしてアカツキへと飛ばす。

「ぐっ!」

 命中し水の槍がアカツキに刺さり怯む。その隙に壁と拳の間から抜け出す。直後、壁が崩れ落ちた。

「ユウ! 大丈夫!?」

 ヴェロニカと角の生えた女の子が心配しながら駆け寄ろうとする。

「来るな! もう助ける余裕はない!」

 口の中が血の味で満たされ続け、息が整わない。

「行くよ! ユウ! 後で! 絶対にくたばるな!」

 ヴェロニカは少女を抱き上げ離脱する。あのふざけた口調は演技か。

 アカツキも体から血を流し、息が荒いがしっかりと自分を睨み付けている。まだ、やる気はありそうだな。


「そこまでだ! 馬鹿ども! いい加減にしろよ! てめぇら!」

 怒号に周囲の人だかりが道を開ける。あれは、ネクサスさんと一緒に居たジュンだったかな。

「これ以上やるつもりなら、しょっ引く。お互いに手を引け。」

 ジュンは割って入り諭すように自分たちに説得をする。

「その男は私の店から商品を奪っていったんだ! はやく捕まえろ!」

 気絶していた貴族の男が復活していた。

「話は後で聞いてやる。さっさと解散しろ!」

 ジュンは貴族にまともに取り合わず周囲の人を解散させようとする。

「何をしている! カミール様に言いつけるぞ!」

 遂にジュンに掴みかかったが、ジュンは振り払った。

「騎士団は貴族どもとは、管轄が違う。ふざけたこと言ってんじゃねぇよ」

 貴族の男は尻餅を着き、ジュンを睨み付ける。

「そこのてめぇもだ。さっさと失せろ」

 自分を指さして言っているようだ。ありがたい、早く逃げよう。この場所から離れようと歩き始めた。

「待て! まだ勝負は終わっていない!」

 ……アカツキ、何故そこまで。

「言ったはずだ、いい加減にしろと」

 ジュンは静かに言い放った。

『あっ』

 シルフ?

「ぐっ! あががががが!」

 アカツキがもがき苦しみ始めた。シルフが耳打ちをする。

『ジュンという人から毒が出てました。空気に混ぜて吸わせたようです』

 毒? 毒の力を持っているということか?

「てめぇらもこうなりたくなかったらさっさと失せろ」

 ジュンは自分を睨んでいた。お言葉に甘えて、すぐ逃げよう。精霊達の肩を借りこの場から離脱した。

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