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21話 願いの正体

 ノームを背負って帰った翌日。みんな復活し、全員でお祭りに行った。色とりどりの浴衣、どれも綺麗だ。まあ、全員暴走するけど。


 そして、遂に帰る日が来た。名残惜しいが帰らなければ。

「およよ。もう帰られるのですか。それは、寂しいですね」

「寂しいですが、仕事を放り投げてまで遊ぶことは出来ません。これでも立場有る人間ですので」

 王国で師匠を待っている人も多いだろう。それに比べて自分たちは無職と無職の付き人と無職に使われる勇者か。何とも言えない気持ちだ。

「お土産はお持ちしましたか? また、来年皆様で来てくださいね」

「ええ、ぜひ、来年もみんなで来たいものです」

 旅館の前に馬車が止まっている。行きに乗せてくれた業者の人が帰りも乗せてくれることになっている。

「お待たせしました。乗ってください。リーベルまで行きますよ」

 師匠はヒメヒメさんにお辞儀をして荷台に乗り込んだ。師匠にアメジスト達も続く。次は自分が乗る番だ。

「少し、よろしいですか?」

 ヒメヒメさんに呼び止められた。どうしたのだろう?

「僭越ながら一つ助言を。リーベルでは、先日、国王が奴隷を容認しました。私達の世界には無いことです。どうか、早まったことはなさらないでください。勇者の力があると言えど、人間一人の力なんてたかが知れています」

 奴隷……そんなものが何で。

「では、また会うときまでお元気で」

 ヒメヒメさんにお辞儀をして荷台に乗り込んだ。リーベル王国、嫌な予感しかしない。


 何事も無くリーベルまで帰ることが出来た。王国の様子が少しおかしい。人々の表情が暗い。奴隷の話は本当だったということか。

 荷台から降りると騎士団の人が寄ってきた。

「勇者様! 久しぶりです! 団長から伝言があります」

 ネクサスさんからか、何だろう? 思い当たる節は無い。

「では、伝えます。『アレイスターが君のことを呼んでいるよ。ぜひ顔を出してあげて欲しいんだ。場所も伝えてあるから、教えてもらってね。』 だ、そうです」

 伝言の伝言。アレイスターが呼んでいるのか。場所を教えてもらい向かおう。

「私は聖堂に戻りますので、ここでお別れですね。また会いましょう」

 師匠とは分かれアレイスターが居るという住所の場所まで着いた。

「私とサフィは、あのカフェに居るわ。終わったら呼んでね」

 精霊達も姿を消し、一人で言われた部屋の前に着いた。古いアパートの一室のようだ。まず、ノックをしてみる。

「どうぞ」

 返事が返ってきたので、ドアを開ける。

 えっ!? 明らかに外から見た部屋の大きさと違う。広い。書斎のような部屋に応接用のソファーがある。そして、入り口以外にもドアがある。

 綺麗な整頓された部屋だが一部だけ本が高く積まれ、書類が散乱していた。

「えーっと、君は……ユウくん、かな?」

 書斎の机に居た初老の男性に声をかけられる。顔は……ヴァルが人間に戻ったときの顔と一緒だ。彼がアレイスターか。

「初めまして。ユウです」

 挨拶をして、部屋に入る。

「おっと、申し訳ない。挨拶がまだだったね。私はアレイスター、本名はヴァルだ。どうぞ、座って欲しい」

 言われた通りソファーに座る。

「えっと、お茶と茶菓子を……茶菓子が無いな」

 ヴァルは奥の部屋に入り、何かを探していたが戻ってくる。そして、乱雑に置かれた本や書類に近寄った。

「すまない。アヤネくん。ちょっとお茶菓子を買ってきてくれないか」

 え?? 見えないが誰かいるのか?

「ふぁーあ、おはよー、ヴァル、何か言った?」

 書類が宙を舞い寝ていた女性が姿を見せる。本と書類で隠れて見えなかった。

「申し訳ないが、お茶菓子を買ってきて欲しい」

 少しボーっとした後、周りを見渡し、こちらを見る。年齢は近く見える。

「お客? そいえばヴァルが居ない間にお茶菓子全部食べたんだった。買ってくる」

 ふらふらしながら部屋を出て行った。

「はぁ、申し訳ない。彼女はアヤネ。私が呼んだ勇者だ。魔法や魔術に興味があるようで、ずっとあの調子で研究をしている。とても優秀だ。うん」

 歯切れが悪い。研究熱心過ぎてという奴か。

「さて、本題に入ろう」

 ヴァルが対面に座る。

「君にはとても感謝している」

 次の言葉が、が、なら逃げようか。

「そこで私としては、君の力になりたいと思っている」

 よかった。しかし、力になるとはどういうことだろう?

「君がどんな時でも助けになろう。もちろん、言葉だけでは何とでも言える」

 そう言いながら紙を目の前のテーブルの上に置く。

「契約の魔術だ。これは契約を遂行しなければ死ぬ、という魔術がかけてある」

 物騒なことを言ってくれるな!?

「待った! そこまでしなくていいです。気持ちだけで充分です」

「いや、それでは、この恩を返すことは出来ない。いざという時は私の命を使ってくれてかまわない」

 何を言っているんだこの人は!?

「ただいまー、大したもの無いね。ん?」

 帰ってきたアマネが契約の魔術の紙を手に持った。

「なるほど。はい」

 紙を渡された。

「好きにしてもらおう。ヴァル。無理矢理やったところで恩を返すことにはならないから」

 紙をテーブルの上でバラバラにする。

「こんなもの必要ないです」

「そうか、だが、君が困っているときはいつでも駆け付けよう」

「ありがとうございます。では、自分は行きますね」

「ああ、こちらこそありがとう」

 感謝の言葉を聞いた後、部屋を出てアメジスト達の下に向かった。


 アメジストは言った通りカフェに居た。

「遅かったわね。もういいの?」

「ああ、もう大丈夫」

 カフェをで少し休み、そして、大通りに出た。大通りの一か所に人だかりが出来ている。何か物凄く嫌な予感がする。アメジストとサファイアは人だかりに近づいていく。二人が足を止めた。何かを見て声にならない悲鳴を上げたように口を押えている。

「くっ! 殺せっ!」

 人だかりの先から聞こえた。普段ならギャグにしか聞こえないのに、切羽詰まった悲痛な叫びにしか聞こえなかった。人だかり先を見る。首輪を着けられ拘束されたダークエルフが地面に組み伏せられ、男に頭を踏みつけられている。

 そこにゴリラも居た。目をそらし、見ないようにしながら人だかりと向き合って、その男の護衛をしていた。

 そこは、店になっていた。奴隷を売る店だ。角が生えていたりダークエルフやエルフの女子供が首輪を着けられ檻に入れられている。

「ゴリラ! お前!」

 怒りに身を任せ怒鳴っていた。ゴリラが自分を見る。

「ユウ……すまない。俺は……」

 ゴリラはやるせない顔で謝っている。掴みかかろうとしたところ、急に肩を掴まれ後ろに引っ張られる。

「やっほー、お怒りのところごめんね。怪盗ヴェロニカ様参上だよー」

 少し頭が冷えた。ヴェロニカ、前に偽物の指輪で大惨事を引き起こすことになった原因の女だ。

「私さ、奴隷として捕まっている人達を助けたいんだー。まあ、真面目に言うと、君、囮になってくれない?」

 冷静に意味を理解するまで時間がかかった。

「囮?」

「そう、あの護衛を引き付けて欲しいわけなんだよねー」

「いや、その、仲間に相談しないと」

 勝手にやってアメジスト達に迷惑をかけられない。

「いいわよ。ユウ」

 アメジストとサファイアが来ていた。

「あそこにはエルフもいたわ。たぶん、元国民の……これでも姫なの。国民を守りたいの」

 涙を流しながら話す。姫なら国民は家族のように大事なのだろう。

「分かった。囮になろう」

「さあ、思いっ切り暴れてねー。ふっふっふっ」

 ヴェロニカは笑いながら人混みに紛れていった。

 そう言えばヒメヒメさんに助言を貰ったばかりだった。でも、覚悟は決まった。精霊達が次々と姿を現す。

『行こう! ダーリン! かっこいい勇者としての役割を果たすときだね』

 サラマンダーの励ましに他の3人も頷く。

「ああ、行こう! あのバカゴリラに一言でも言ってやらないと気が済まないからな」

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