20話 土の恋慕
悲惨だ。やり過ぎたのだ。連日、ビーチバレーをし、大会に出た、ほとんど動かず応援していた自分とノーム以外は筋肉痛で動けなくなった。優勝して手に入れたトロフィーが悲しくテーブルの上に放置されている。
「今日は前夜祭でしょ? 行くの?」
建国祭の前夜祭がある。前夜祭でも花火に出し物もあり、暑くも無いから、みんな行きたがっていた。
返事がない。まあ、見事に全滅している。あっぱれ、と言ってもいいくらいに。これでは、行くことは出来ないな。
『お姉ちゃんと一緒に行こう! ユウくん!』
ウンディーネがノームを睨み付ける。
「い、行くのなら、この可愛い浴衣を……バタッ」
何でヒメヒメさんまで筋肉痛で倒れているのだろうか。いや、記録したいとか言って試合中飛び回っていたような。うん、覚えていないし、思い出したくもない。
『わあぁ。この浴衣可愛い、ありがとうございます。お姉ちゃん、着替えてくるねっ! ユウくん!』
ルンルンとスキップしながら着替えに行った。何も言ってないんだけど、まあ、いいか。
『どうかな? どうかな? ユウくん!』
ふわりと一回転する。おっぱいがぶるんって、でも、太ももがチラッと覗くのもいい!
「可愛い! 最高!」
『もう! そんなに褒めたって何も出ないよ? でも、嬉しいよ、お姉ちゃん!』
ぴょんぴょんしながら喜んでいる。
『お姉ちゃんが手をつないであげる! 行こう!』
手を繋ぎ祭りへ繰り出す。
人が多いな。でも、道がそれ以上に広く人混みと言う程でも無いことが救いだ。道端に露店が多く並んでいる。あまりの露店の多さに端まで見えない。
『凄い露店の量だね。ユウくんの行きたいところがあったら言ってね』
自分の行きたいところか。人に合わせてばかりだから行きたいところと言われても見つからない。
「ノームの行きたいところでいいよ。と言うかそっちの方が嬉しいかな」
ぱあっと笑顔になった。
『いいの!? お姉ちゃん、あれ食べたいな』
指差した先にはクレープの露店がある。
「行こうか」
『うん!』
露店の前の列に並ぶ。数多くのクレープの種類があるな、本格的なクレープ店が露店を出しているのか。
「どれを食べる? 自分の分もノームが選んで欲しい」
目をキラキラさせながら顔を近づけてくる。
『いいの!? やったー! 優しいユウくんには、お姉ちゃんがナデナデしてあげるね!』
強引に頭を抱きしめられナデナデされる。ノームからいい匂いがする……安心する匂いだ……やっぱり、柔らかい。
『ユウくん。順番まわってきたよ! どれも美味しそう!』
「いらっしゃいませ! 注文をお伺いします!」
『はい、これとこれとこれとあれもください。』
4つ!?
「はい、かしこまりました」
代金を払い、クレープが出来上がるのを待つ。二人で4つも食べれるかな。
「お待たせしました。どうぞ!」
『ありがとうございます。わーい! ユウくん、食べよう!』
クレープを両手にもちながら喜んでいる。どれもフルーツ系のクリームたっぷりの甘いクレープか。胃が……
『はい、ユウくん、お姉ちゃんがたべさせてあげる! あーん!』
ノームのクレープを二つ持ち、近くのベンチに座った。
「あ、あーん」
何度もやっているが慣れない。口いっぱいにクリームの甘さと果物の甘酸っぱさが広がる。
「気にせずに食べて、ノーム」
ぱぁっと表情が明るくなった。
『いいの? お姉ちゃんもいただきまーす』
パクパクとクレープを食べていく。
『美味しいね。ユウくん』
「あ、ああ」
1つ2つとノームの口の中にクレープが消えていく……3つ食べ切った。
『ユウくん。手が止まってるよ? 美味しくなかった?』
「いや、そういうわけではないけど、ノーム、これも食べる?」
『いいの? ユウくん、全然食べてないよ?』
「大丈夫、食べて」
『分かった。貰うね?』
ほぼ4つをペロリと食べ切った。
それから色々買い食いをしながら社まで歩いた。
『ウカノミタマの護国の神様を祀っているんだって』
精霊も似たようなものではないかな。
『人も少なくて涼しいね。神様に挨拶してから、あそこのおみくじを引かない? ユウくん』
「おみくじか……まあ」
吉より上を引いたことが無いんだけどな。まずは、お参りだ。
『むむむ』
何故かうなされ始めたノーム。
「大丈夫? ノーム?」
『えっ? 大丈夫! 今神様にお願いしてたの』
「お願い?」
『うん。みんなで幸せになれますようにって。えへへ。お姉ちゃん、欲張りだったかな?』
申し訳なさそうな顔で話してくれた。
「良いと思う」
できる限りの笑顔で答える。その願い叶うといいな。
『ありがとう。お姉ちゃん、嬉しい! さあっ! おみくじ引こうっ!』
問題のおみくじだ。まず、ノームから引く。
『……』
何も言わない。まさか、大凶……?
『ユウくん。大吉だよっ! やったーっ!』
溢れんばかりの笑顔で喜んでいる、次は自分だ。
「大凶」
いつもの。何も言うまい。
『ユウくんは……お姉ちゃんの運を分けてあげるからね! だから、大丈夫だよ!』
ギューッと抱きしめられ頭を優しく撫でられる。相変わらず大きい胸の圧が凄い、埋もれて息が出来なくなる。
「あはは、ありがとう。でも、いつものことなんだ」
ノームは再びおみくじを読み始めた。詳しく見てなかったのだろう。自分はもう見たくも無いけど。
『えーっと、恋愛。今です。今が好機です。ガンガンいきなさい。ええ!? い、いいの? お姉ちゃん、いっていいの?』
顔が真っ赤になってもじもじしている。
そろそろ花火の時間だ。社からでは、花火は見えそうにない。
「ノーム? そろそろ行かない?」
『え!? ええ!? い、行くって?』
真っ赤な顔を手で隠している。
「花火が見えるところに」
顔からぷしゅーっと音がしそうなくらい更に赤くなり、地面が少し割れた。
ノームはついて来てといい先を行く。この道の先には灯台があるが、祭りの間は閉鎖されているはずだ。灯台には警備兵が居る。
『お疲れ様です! ヒメヒメさんの紹介で来ました!』
ヒメヒメさんの紹介か。灯台の敷地からなら花火も良く見える。
「えーっと、合言葉をお願いします」
『はい、ぜろななにいちです!』
はぁ!?
「あ、分かりました。どうぞ。灯台には登らないようお願いします」
分かる自分もあれだが、その合言葉は酷すぎる。それでいいのか、警備の人。
『ユウくん。ここに座ってみよう?』
そう言われ、ベンチに肩を寄せ合い座る。花火までまだ時間がある。
『ユウくん。今日はありがとね。こんなに楽しませてくれて』
「別に、自分も楽しかったよ。こっちこそありがとう。ノーム」
『私達、精霊はね。本当はただの自然の一部で、力なんて使えないの』
何て声をかければいいか分からない。
『でもね、ユウくんが居るから。私達はこうやって色々なことが出来るの。力を使ってみんなを守ることが出来るの。大好きなユウくんを』
ノームは一回話を区切って息を大きく吸い込んだ。花火が打ちあがったがノームの顔から視線を離せない。
『大好きだよっ! ユウくん!』
花火に負けないくらいの大きな声で叫んだ。
「自分も好きだ。ノーム。」
『えへへ。ありがとう。ユウく……く、くしゅんっ!』
クレープ以外にもかき氷にアイスにジュースと冷たいものを食べ過ぎたのかな。そのままクラクラしてしまった。
「あ、ノーム? 大丈夫!?」
『ご、ごめんねー。ユウくん……すー』
力を使い果たして寝てしまった。背負って帰ろう。




